タイガー・ジェット・シン”狂気”旭日双光章Eclipse有楽町プラネタリウム

■ コニカミノルタプラネタリウム ピンク・フロイド – The Dark Side of The Moon
5月9日まで 2600円
会場:プラネタリアTOKIO 東京都千代田区有楽町2丁目5-1

触るもの、見るもの、味わい感じるもの総てが調和:裏側は暗闇の事実

画像提供:コニカミノルタプラネタリウム株式会社/ピンク・フロイド

 ニッポンのゴールデン・ウィーク、過ごし方は人それぞれに違いない。5月4日、西の大阪エディオン・アリーナでは「リングガールのマントがヒラリすれば美尻が拝めた!」ボクシング世界戦が話題を集め、東の両国国技館ではノアの清宮海斗がシャイニング・ウィザードをイホ・デ・ドクトル・ワグナーjr.に叩きこんで至宝GHCヘビー級王座を奪回した。
 しかし、関西から上京した筆者は『ピンク・フロイド – The Dark Side of The Moon』のプラネタリウムを体験するため、有楽町のプラネタリアTOKIOに向かった。週刊ファイト5月9日号にて、タダシ☆タナカが映画BIG FISH(誰も信じないホラ話)=タイガー・ジェット・シン論を展開している。ならば、シン『狂気』論ありだろう。

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 筆者がピンク・フロイドを選んだは、希代の悪役シンが最後は日本政府から表彰されるという栄誉が強烈だったから。サイクルが一周して、太陽と月が重なるEclipse(日食)の大団円を真っ先に思い浮かべたのだ。1973年に発表されたピンク・フロイド8作目のスタジオ・アルバム『狂気』発売から51年後、シン様が選出ニュースのBGMにロジャー・ウォーターズの唄声everything under the Sun is in tuneが聴こえた気がした。最後の真理に辿り着いた時、プロレス者は再び暗黒の底なし沼へと突き落とされたことになる。
 そうか、そういうことだったのか。著作権の切れる100年後に『狂気』はクラシック・ジャンルに移行する。アントニオ猪木とタイガー・ジェット・シンは宇宙を彩る夜空の輝ける星に昇華した。

クレジットカード予約しか席確保ない盛況!銀座のマリオン阪急百貨店

 それにしても有楽町の阪急百貨店ビルにあるプラネタリウム、その盛況ぶりには驚くほかない。なにしろクレジットカード持ってなければ予約出来ないし、実際満員だったのだ。帰り際には、なんとかチケットないのかと受付に詰め寄っているお客も目撃した。ビルボードのチャートに記録的に長い間ずっと100位圏内に入っていたことでも知られる『狂気』、ここ日本でも51年たとうがあきらかに古典の必修作になっている。もはや知らない、聞いたことがないと言おうものなら、ロックの踏み絵試験に落とされてしまうのだろうか。

 なんでもピンク・フロイドに正規に公認された「世界初」のイベントなんだそうだ。ニューヨークのセントラルパークにある天文台でも、その他、世界各国の都市でも80年代はしょっちゅうやっていて、それじゃあれは公認ではなかったのか? まぁ場内アナウンス再三の警告にも関わらず、結局は紫の煙が臭ってくるのが海外での上演であり、そこは日本と違うから「世界初のドラッグフリー」での上演実現なのかも(苦笑)。

 ただまぁ、コニカミノルタさんのレーザー映写技術とか、5.1サラウンド・サウンド音響なりは、きっと「日本版のが一番凄かった」とかなのかもだが、やはり絵図の違いなんじゃなかろうか。
 マンハッタン版に通っていた者に聞くと、当時はゴールデンスターの色彩の強弱はあっても、今のような極彩色のカラーではなかったと証言する。

 ただまぁ、ピンク・フロイド音響の「宇宙を飛んでる」ような錯覚は、「プラネタリウムにしたら面白い」という発想は、1973年の発表から今に至るまで続いているということ。モーリス・ベジャールがバレエにしたこともあったし、45分くらいだから映画というよりショート・フィルムなのかもだが、映像版だけでも筆者の知る限り3種類は存在している。ブート屋さんに行けばそれら全部をBlu-rayにしたCrazyなコレクターズ・アイテムも存在している。

 もっとも、タイガー・ジェット・シンがいかに初期の新日本プロレスにとって救世主であり、その出現がエポック・メイキングだったかを思い出すなら、あとから様々な形で焼き直されたり、プラネタリウムも進化となろうが、最初のインパクトがすべてだとは思う。

星空のドライブ彼方、呼べよ嵐・狂える虎 春の叙勲にマット界から栄誉

 海外での『ピンク・フロイド・レーザーショー』は、45分ではエンタメ・イベントとして短すぎるから、日本ではアブドゥーラ・ザ・ブッチャーの入場曲として知られる♪吹けよ風、呼べよ嵐One of These Days(アルバム『Meddle(邦題:おせっかい)』より)他、いわゆるヒット曲(笑)から始まり、シド・バレット時代の♪星空のドライブなど、サイケデリック・ロックの選曲が軸に。後半が『狂気』という構成が一般的である。ピンク・フロイドの歴史回顧映像には大概ほんの一部だけクリップが紹介されるモーリス・ベジャールのバレエにせよ、不気味なダブル・ベースが呻りを上げる箇所となるのが定番だが、『狂気』だけに絞った日本版は確かに「世界初」だろう。
 それにしても衰退一途の国内マット界市況に、シンの受賞は春風だったのではなかろうか。

虚空のスキャット太陽・猪木と月シン軌道:底なし沼先もまた暗黒なのか

 ピンク・フロイドの初来日は1971年、8月6日と7日の二日間開催された箱根アフロディーテであった。『原子心母』からのセットリストであり、♪Echoes~神秘で終えている。ただ、この頃からすでに『狂気』収録曲の部分原型は演奏されていた。それにしても『ウッドストック』の成功が世界に広まったとはいえ、1971年にロック・フェスティバルが日本で開催されていて、内田裕也とか成毛茂など日本のアーティストのあと、ピンク・フロイドがトリを務めた事実は凄いことだ。もっとも、サビた缶に入った8mmの映像が見つかったと、それをマニア向けの高額商品にして販売する商魂は、日本だけではなかろうか。

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Sバレット捧ぐSee you on the dark side of the moon鼓動鳴りやまず

 ブートといえば、まだCDもない時代、なにしろ『狂気』はレコーディングが長期間に及んだため、ラフミックス段階の音源が流出してレコードになっていたものだ。単にLIVE公演をこっそり録音したのとは違うから、マニアは必死で集めたものである。そこからもわかるが、最後のEclipse(狂気日食)クライマックスへと繋がる箇所は、最後の最期にロジャー・ウォーターズが書き足したものである。
 本人は、「あなたに直接繋がることができる一つの方法は、そのような悪い感情を時には抱くことがあるという事実を共有することである。『月の裏側で会おう(’I’ll see you on the dark side of the moon’)』という言葉でそのことを示している」と説明していた。

 週刊ファイトによる1979年暮れに発売された「シン特集号」は、選手1名に焦点を当てた別冊の元祖であり、井上譲二記者がトロント郊外の自宅にまで押しかけて取材されたものだった。

 ピンク・フロイドの『狂気』もまた、本当の意味でのLP1枚がコンセプト・アルバムであることや、キャッシュ・レジスターの音など様々な音源のミックスといい、いかにパイオニア中のパイオニア、オリジナル中のオリジナルだったことか。このレコーディング中に、あちら側の世界に渡ってしまったシド・バレットがスタジオに顔を出して、しかし、最初は兄弟であるメンバーも誰だかわからなかったエピソードもある。なぜにEclipse(狂気日食)に辿り着いたかおわかりだろう。

 レコードの最後は、冒頭と同じ心臓の「鼓動」である。最初の衝撃から50年過ぎて、鳴りやまぬ鼓動はすでに100周年に向かっている。作者たちは全員亡くなっているだろうし、筆者も墓の中になるが、レガシーは残るのだ。
 アントニオ猪木とタイガー・ジェット・シンの太陽と月が重なるEclipse(狂気日食)は、暗黒の底なし沼を突き抜けて、輝ける星に昇華したのである。

取材&撮影:大島慶山 構成・文:タダシ☆タナカ


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