[週刊ファイト06月04日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼林下詩美スターダム帰還! 上谷沙弥因縁=約2年間の答え合わせ?
photo & text by 鈴木太郎
・マリゴ退団キッカケは授賞式だった詩美
・詩美と上谷の邂逅は、この2年間の変化を映し出す鏡
・新団体エース格も深刻不調続いた詩美マリーゴールド苦悩2年間
・かつてのスターダム元エースも、存在感薄まる大不振
・マリーゴールド不振は技失敗ではなく、詩美の不調が原因?
・「何しに来たの?」が覆せない2年間
・ロッシー小川イメージ払底! スターダム苦境乗り越えた上谷の2年間
・全方位外交転換の旗頭だった上谷沙弥
・上谷-詩美邂逅は話題の一つにすぎない? “重要度が低い”事の凄み
・2年で業界内序列入れ替わる残酷さ
・今のスターダムでは、帰還もストーリーの1つに過ぎない
・伊藤麻希でさえ、特別扱いナシの凄さ
・因縁の過程でも、若手を絡ませて底上げさせるスターダム
・上谷タイトル再挑戦まで、時間も話題も確保できる帰還劇
・観客から詩美にブーイングが起きなかったのは何故か?
・今のスターダムでは、詩美の活躍や立場は全く保証されていない。
2026・5・26スターダム後楽園ホール大会において、マリーゴールドを退団したばかりの林下詩美が古巣マットに電撃来場を果たした。5・23名古屋ビッグマッチを終えたばかりのスターダムは、6月に国立代々木競技場第2体育館大会、夏からは『5☆STAR GP』開幕や、両国国技館での優勝決定戦も控えている。今大会が当日に全試合YouTube無料配信となったのは、詩美の来場というビッグニュースを告知する意味合いも大いに含まれている事だろう。
スターダム時代に使用していた旧入場曲『Crusade』の調べと共に現れた詩美がリング上で対峙した相手は、今や押しも押される女子プロレス界のスター選手・上谷沙弥であった。林下詩美と上谷沙弥は、かつてスターダムで隆盛を誇っていた人気ユニットQueen’s Questに属しており、タッグパートナーとしても『AphroditE(アフロディーテ)』で2度のゴッデス・オブ・スターダム王座戴冠を果たす密接な関係性にあった。
2023年には試合中の誤爆から両者が対立する場面も訪れたが、同年の国立代々木競技場第2体育館大会における大江戸隊との「敗者強制ユニット脱退ケージマッチ」で両者は感動的な和解を果たし、ユニットの絆を深めた光景は今でも記憶に新しいところだ。

しかし、2024年3月末を以て林下詩美はスターダムを退団。その後、スターダムを契約解除で追われるように去ったロッシー小川の元へ合流すると、2024年5月にはマリーゴールドの団体旗揚げに参加。2026・5・23大田区総合体育館大会でのビッグマッチを最後に退団するまでの2年間を経て、再び古巣へと戻ってきた格好だ。
詩美本人が語っている退団理由は、2025年末に行われた団体内の授賞式だったという。年始にSareeeからマリーゴールド・ワールド王座を奪取して以降、同年10月に青野未来から王座を奪われるまで最高峰王座を護ってきた詩美だったが、MVPの座を射止めたのは青野の方であった(詩美は敢闘賞を授賞)。マリーゴールド内では後輩を成長させることに重きを置いてきたという詩美が、MVPを獲れなかった事で感じたという悔しさは、「もっと上に行きたい」という彼女の思いを強くする契機となり、今回のマリーゴールド退団に至ったという。
しかし、注目されていたのはマリーゴールド退団後の動向だ。Sareeeのようにフリーランスとして各団体を股に掛けて活躍するか? 或いは海外マットに挑戦するか? それとも、国内団体に所属して活動するか?考え得る3つの選択肢のうち、フリーランスや海外参戦の可能性に関しては、詩美本人が退団発表後に応じたインタビューの中で、性格や言語を理由に消極的な反応を示していた。何より、本人が退団後のオファーも既に多く寄せられている現状を明かした事からも、早々に国内拠点で活動する方向性は定まっていた。その中で、スターダムやマリーゴールド時代の同僚で現在はみちのくプロレス所属として活躍しているMIRAIから熱いラブコールも寄せられたものの、最終的には古巣のスターダムを選択する形となった。
「上谷、ずっと見ていたよ。ずっと見ていたから、上谷の活躍が凄い嬉しかった。でも、それ以上に、上谷に負けたくないって思った。だから、今日ここに来るしかないって思った。」
そんな古巣へのカムバックを果たした詩美に対して、元パートナーである上谷の反応は冷ややかなものだった。
「このスターダムのリングでプロレスがしたいってこと? お前さあ、一体これまで何していたの? ガッカリだわ。」
マイクをリング上に叩き付け、詩美を突き放した上谷は、バックステージで更なる怒りを滲ませた。
「アイツさあ、何しに来たんだろうね。他所で結果一つ残せないような奴が、今のスターダムで這い上がろうなんて甘いんだよ。何していたの? この約2年間。甘いわ、全てが甘い。」
林下詩美と上谷沙弥の邂逅は、この2年間で訪れた両者の環境や序列、所属団体の状況などの様々な変化を、生々しく映し出す鏡のようなものである。虚実入り交じるマット界において、時に残酷なまでの現実を内包している今回の詩美のカムバック劇は、プロレスが絶対も筋書きもないドラマであることを如実に表していると言えよう。
新団体エース格も深刻不調続いた詩美マリーゴールド苦悩2年間
2024年に旗揚げしたマリーゴールドは、元スターダムや元アクトレスガールズの面々を中心に構成されていた。その中でも、スターダム時代に実力も実績も十分に築き上げてきた詩美は、ジュリアと共にエース格としてマリーゴールドを牽引する存在になるかと思われた。
だが、ここで大きな誤算が生じてしまう。スターダムでトップを走ってきた林下詩美の調子が、マリーゴールドの旗揚げ以降、一向に上がる気配が見られないのである。旗揚げ直後の6月に組まれた高橋奈七永とのスペシャルシングルマッチには勝利したものの、引退を見据えて入ってきた高橋のベテランらしからぬ溌剌とした動きとは対照的に、詩美は高橋を打ち崩す説得力に乏しく、精細を欠く場面が目立った。
同年のシングルリーグ戦では、スターダム時代からの同僚であるMIRAIに結果・内容共に辛酸を舐めるなど、古傷を抱えているようにも、ましてやスランプムーヴにも見えない深刻な不調は、マリーゴールド時代の詩美には常に付いて回った。