[ファイトクラブ]スターダム横アリ決戦’26で感じた『カワイイだけじゃだめですね』女子総括

[週刊ファイト5月21日期間] [ファイトクラブ]公開中


▼スターダム横アリ決戦’26で感じた『カワイイだけじゃだめですね』女子総括
 photo & text by 鈴木太郎
・スター誕生推進も気にならない試合内容の良さ
・女子プロレスはスターダムを見ておけば充分?
・女子プロレス界の転換点だった2025年 鷹の爪+東スポMVP上谷沙弥
・男子選手と並んで評価された『プロレス大賞』の革新性
・「女子選手だから」という言い訳が出来なくなった。
・令和の女子プロレスは『かわいいだけじゃだめですね』。
・プロレス会場に女性と子供を増やした上谷人気
・目先のアイドル人気を取りに行くあまり、試合内容が落ちた団体の前例
・大手資本あっても苦戦する女子プロレス興行の難しさ
・大手資本が無くとも試合内容+αで人気拡大した仙女&Marvelous
・優秀なスタッフの存在が、集客増に寄与する。


 2026・4・26に横浜アリーナで行われた女子プロレス団体・スターダムの年間最大ビッグマッチは、観衆8,000人超えを記録する盛況に終わった。

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 今回のビッグマッチでメインイベントを飾ったのは、『上谷沙弥vs.玖麗さやか』のワールド・オブ・スターダム王座戦だ。
2025年に行われた『上谷沙弥vs.中野たむ』の敗者引退マッチから約1年。近代日本プロレス史に名前が刻まれたであろう伝説が生まれた横浜アリーナにおいて、前年を超える話題性を提示することは容易ではない。その中でスターダムは、中野たむと上谷の因縁関係に加え、上谷がデビュー戦を務めた相手でもある玖麗さやかに団体の将来を託す構図を選択した。
 ただ、中野たむ引退直後の2025年5月に後楽園ホール大会で上谷に挑戦して退けられた経験や、2025年大会からの連覇を狙った『シンデレラトーナメント2026』での敗退、更には上谷が絶対王者として主力選手達を薙ぎ倒してきた実力などから、玖麗の横浜アリーナ大会メインイベンター起用に対する不安がファンの中で漏れ聞こえていたのも確かである。

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 そんな年間最大ビッグマッチで慣行した大博打に、スターダムは見事勝利した。玖麗という新たなスター選手の誕生を推し進める画作りも垣間見えるカードではあったものの、キャリアの浅さや実力差、大舞台での戴冠に値する試合内容など、玖麗は背負った数々のタスクをクリアした。
 その象徴的な場面となったのが、フィニッシュシーンのファイヤーバードスプラッシュである。スピアーやドライバー系の技をフィニッシャーに用いていた玖麗が、大舞台で見せた飛び技は観衆のどよめきを大きなものに変えて、一気に支持を集めることになった。これは、前年の敗者引退マッチとは別軸の伝説をスターダムが樹立した瞬間でもあった。

 今回の横浜アリーナビッグマッチは、ダークマッチ3試合+本戦9試合とボリュームのある内容だったのだが、前回の横浜アリーナ大会で参戦したセンダイガールズプロレスリングなどの他団体参戦は無く、基本的に自前の戦力+レギュラー参戦組だけでカードを編成出来ていた。
 若手の試合もダークマッチから内容が安定しており、中でも大会の先陣を切った『さくらあやvs.古沢稀杏』のシングルマッチは、キャリア間もない古沢が現NEW BLOODタッグ王者のさくらを度々追い詰めるなど、会場の熱量に一気に火をつけた。

 大会後半のタイトルマッチに関しては、先の玖麗に加え、ゴッデス・オブ・スターダム王座を戴冠したAZM&天咲光由組、ワンダー・オブ・スターダム王座を戴冠した羽南と、戦前から団体側が売り出していきたい選手の挑戦⇒戴冠を予測できてしまうカード編成ではあったものの、いずれも内容面で充実が見られ、「挑戦者が戴冠した」という事実だけで終わる内容ではなかった。
 プロレスにおいて、団体側の主導で描かれていく未来予想図というものは、往々にしてプロレスファンからの支持を集めにくいジレンマが存在する。そうした団体側の政治や方針を跳ね退けるためには、「この選手が王者だ」と周囲に認めさせるだけの納得感が欠かせない。この難題をクリアしたことは非常に大きいと言えよう。

 そんな横浜アリーナ大会が終わり、満足感を胸に帰路に就いた筆者は、ふと、こんなことを考えてしまった。

 「もう、女子プロレスはスターダムを観ておけば充分なのではないか?」と。

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女子プロレス界の転換点だった2025年 鷹の爪+東スポMVP上谷沙弥

 2025年は、スターダムにとっても、女子プロレス界にとっても大躍進の1年になった。
 そのキッカケとなったのは、同年2月に放送されたフジテレビ系列のバラエティ番組『千鳥の鬼レンチャン』だろう。同番組で行われた10名以上の参加者による300m走企画に出場した上谷沙弥は、【最後に残った4名で決勝を行うまで、最下位1名が脱落するレースが続行する】という過酷なレースを勝ち抜き、見事決勝に進出。
 最後は優勝を逃したものの、ヒールレスラーでありながら「女子プロレスを盛り上げたい」と涙ながらに語る姿が多くの視聴者の胸を打ったのである。
 この300m走企画からメディア露出が増加した上谷は、同年5月にTBS系列の情報番組『ラヴィット』の単発ゲストを掴み取る。ここでもチャンスをモノにした上谷は、同番組で3ヶ月限定の曜日レギュラーに抜擢されると、レギュラー出演最終回では約22年ぶりとなる【地上波での女子プロレス生中継】を実現させた。

 上谷が女子プロレスを世間に拡げた活躍は大きく、2025年度の東京スポーツ制定『プロレス大賞』において、アジャコングや神取忍などのレジェンドでも成し遂げられなかったMVPの座を、女子プロレスラーで初めて射止めたのである。プロレスリング・ノアで話題を提供し続けたOZAWAや、『G1 CLIMAX』優勝&IWGP世界ヘビー級王座戴冠を果たしたKONOSUKE TAKESHITAがMVPの対抗馬だったことも、上谷の歴史的偉業を象徴している。

 同年の『プロレス大賞』ではSareeeも敢闘賞を受賞。長らくの間、女子プロレスラー達は『プロレス大賞』で設けられている『女子プロレス大賞』部門の一枠を争う状況が半ば慣例化していた中で、男子選手が選出される部門に女子選手が複数名選出された2025年の『プロレス大賞』は、女子プロレス界にとってガラスの天井が破られた歴史的瞬間だった。
 それは即ち、上谷やSareeeが男子選手と並び立ち、男子と別物として区切られていた女子選手が男子選手と対等に評価される土壌が出来た事で、「女子選手だから~」という言い訳が出来なくなったという事でもある。容姿の可愛さと激しい試合内容のギャップで人気を掴んでいる選手達は、試合内容が純粋に評価されている事も大きい。令和の人気アイドル・CUTIE STREETは『かわいいだけじゃだめですか?』という代表曲で人気を博したが、令和の女子プロレスは『かわいいだけじゃだめですね』というフェイズに突入しているのかもしれない。

 2025年1月、スターダムの母体にあたるブシロードの新春発表会の場で、木谷正明会長が登壇した女子プロレスラーのコスチュームを「水着」と称した事が批判を浴び、新日本プロレスの棚橋弘至社長やスターダムの岡田太郎社長が謝罪するなど大炎上に発展した。「女子プロレスに性的な目線を求めるのは間違っている」との意見も複数聞かれた一方で、大会後に別の会場を借りてサイン会を実施するという男子団体では凡そ考えられない独自対応などの点において女子プロレスそのものが性的目線と切り離せないところまでコミットしているジレンマも抱えていたことは明らかである。

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