[ファイトクラブ]岡田体制STARDOM第1章終焉! 『上谷沙弥-中野たむ』敗者引退戦

[週刊ファイト5月8日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼岡田体制STARDOM第1章終焉! 『上谷沙弥-中野たむ』敗者引退戦
 photo & text by 鈴木太郎
・引退マッチまで煙幕張り続けた約2ヶ月
・プロモーション実る女性客&子供の増加
・残り1ヶ月の動向で見えてしまった中野たむ引退
・引退から逆算した大勝負
・上谷も中野も失いたくはないスターダム
・全方位外交&ファン視点サービスで排除したロッシー色
・スターダム嫌いのWAVEとの急接近
・スターダムの全方位外交の象徴だった上谷
・2024年ベストブッカー賞第3位・岡田社長生み出す大胆ファイト
・就任1年でトリプルHとトニー・カーンに次ぐ快挙
・虚実入り混じるリング上の大胆さ
・岡田体制の象徴は上谷と中野たむ
・リーグ戦全敗⇒ワールド王座戴冠の中野
・1人『QueensQuest』⇒衝撃ヒールターンの上谷
・堂々と【敗者引退マッチ】を掲げて勝負出来た横アリ決戦
・問題は5選手離脱・欠場後の今
・2023年組赤白ベルト挑戦で先見据える
・年末両国まで力を溜める時期


※今週の女子プロレス詳細版:月額999円ファイトクラブで読む(クレジットカード、銀行振込対応)
▼両国ウナギ・サヤカ自主興行 ウナギ流テーマパーク・プロレス!

[ファイトクラブ]両国ウナギ・サヤカ自主興行 ウナギ流テーマパーク・プロレス!

▼今週の肝GW前半ウナギ・サヤカ両国-スターダム横アリ中野たむ引退

[ファイトクラブ]今週の肝GW前半ウナギ・サヤカ両国-スターダム横アリ中野たむ引退

▼中野たむ引退岩谷麻優退団テクラ解雇‼スターダム史上最高の観客数

[ファイトクラブ]中野たむ引退岩谷麻優退団テクラ解雇‼スターダム史上最高の観客数

’25年05月08日期間ウナギ・サヤカ両国 横アリ中野たむ岩谷麻優 追悼・新間寿 DEEP浜松


■ スターダム『カードファイト!! ヴァンガード Divinez presents ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025』
日時:2025年4月27日(日) 15:00本戦開始
会場:神奈川・横浜アリーナ
観衆:7,503人

 スターダムにとって2年ぶりの開催となった2025・4・27横浜アリーナビッグマッチ。前回の横浜アリーナ大会で記録した5,539人を約2,000人も上回る観衆7,503人は、スターダム史上過去最多動員だったのだという。そんな今大会の目玉となったのは、メインイベントで行われたワールド・オブ・スターダム王座戦『上谷沙弥vs.中野たむ』による【敗者引退マッチ】だろう。両選手の合意により、王座だけでなく引退も賭けられることになった一戦は、中野たむが敗れた事で約9年のキャリアに幕を閉じた。

 上谷沙弥と中野たむの因縁が深まったのは、2024・12・29両国国技館大会のことだ。同大会のメインイベントで上谷が中野たむに勝利し、ワールド・オブ・スターダム王座初戴冠を果たすも、上谷のいるヒールユニット『H.A.T.E.』の介入行為もあり、中野は悔しさと怒りを試合後のバックステージで隠すことなくぶちまけた。
 その後、年が変わった2025・2・2後楽園ホール大会で上谷が鈴季すずから王座初防衛を果たした直後、上谷の目の前に中野たむが現れ、再戦を要求したのである。上谷が指定した2・24宇都宮大会でのタッグマッチを経て、2025・3・3後楽園ホール大会のメインイベントで『上谷沙弥vs.中野たむ』の【敗者スターダム退団マッチ】が決定する。同大会は前売でチケットが完売し、急遽スターダム公式YouTubeチャンネルでメインイベントのみ生配信が決まるなど大きな話題を生んだ一戦となったが、上谷が勝利したことで中野たむのスターダム退団が決定。リング上を去っていく中野たむに対し、勝った上谷は「本当に辞めるのか?」と問いかけると、中野はリング上に戻って上谷に再々戦を直訴。「次は何を賭ける?」と上谷が煽ると、中野は自身のキャリアを賭ける形でワールド・オブ・スターダム王座に挑戦表明した。
 客席もザワつき始める中、上谷も中野に呼応するようにして、ベルトだけでなく自らのキャリアも賭けることに同意。これにより、今回の【敗者引退マッチ】が決まったのである。

 2024年末からワールド・オブ・スターダム王座を巡って上谷と中野たむが繰り広げてきた抗争劇の最終決戦の舞台となった横浜アリーナは、シングルマッチで上谷が2連勝中という状況で迎えたものの、中野も2021年の日本武道館大会で行われたワンダー・オブ・スターダム王座戦においてジュリアに連敗を喫した状況から、自らの髪も賭けてまで臨んだ”3度目の正直”に見事勝利した実績があった。上谷の3タテか? それとも中野による”3度目の正直”が再び訪れるか?

 【敗者引退マッチ】が決定して以降、本番当日までの約2ヶ月間にわたり、スターダムはあらゆる形でプロレスファンや団体の外に向けて煙幕を張ってきた。どちらか一方の引退が決まった状態から、分かりきったまま本番を迎えるのは興が冷める。そうならない為に、数々の伏線と煙幕を張る事で当日まで期待値を高めていったのである。
 【敗者引退マッチ】が正式に決まった記者会見では、スターダム退団となった中野たむに対して「フリーとして都度オファーを出していく」方針を言及したのは岡田太郎社長だ。普通なら契約の事を会見で大っぴらに明かす必要も無いため、わざわざ言及していくのも野暮ったい話にと思えてしまうが、裏返せば、細部のディテールも疎かにしないという岡田スターダムの姿勢に他ならない。
 横浜アリーナ大会まで残り1ヶ月を切った2025年4月には、スターダムの所属選手達が新日本プロレス社長の棚橋弘至と共にバラエティ番組『しゃべくり007』に出演したのだが、ここに上谷沙弥と中野たむも出演させたことは、プロモーションと同時に引退マッチに向けた煙幕を電波を通じて張ったことの現れでは無いだろうか?
 番組では、ゲストとしてスターダムの選手達と共演した女子プロレス界のレジェンドレスラー・ダンプ松本、ベビーフェイスとヒールレスラーが同じ場所で一緒に笑顔を見せる構図に苦言を呈する一幕もあったのだが、これに関しては「時代が変わった」としか言いようが無い。当たり前のようにプロレスが中継されていた昔とは違い、今は「多くの娯楽の中から、どうにかしてプロレスを選んでもらえるようにする」時代である。新日本プロレスを冬の時代からV字回復させた立役者とされる棚橋弘至ですら、主力であった時期も地方へのプロモーション活動を欠かさず行っていたのだ。そんな第一人者が社長としてダンプの前に立ち、彼女の指摘を否定したシーンは象徴的だった。

 同時期に、スターダムがYouTubeチャンネルでスタートした新番組でもその姿勢は徹底されており、女性芸人によるお笑い賞レース『THE W』の2024年ファイナリストであるお笑いコンビ『エルフ』をMCに迎えた選手とのトーク番組は、第1回ゲストに上谷沙弥、2回目に中野たむを呼び、引退マッチ当日までに動画を投稿し終えたことで、最後まで当日の勝敗を隠しつつプロモーション活動に繋げて見せた。こうしたプロモーション活動の成果が現れたのか、試合中は女子プロレスの会場では珍しく、女性や子供の歓声も多く聞こえる状況が生まれたのである。

 とはいえ、決戦まで残り1ヶ月を切った3月下旬頃から、徐々に敗者引退が誰なのか、朧気ながら見えてしまった事は否定できない。3月の【敗者退団マッチ】に勝利した上谷沙弥は、所属選手としてラジオ番組などに出演しプロモーション活動を精力的にこなす一方、スターダム所属契約を解除されてフリーとなった中野たむは、上谷との前哨戦と並行する形で自身のユニット『COSMIC ANGELS』のメンバーと対角に立つカードが組まれていった。
 3・15大田区総合体育館大会では『中野たむ&安納サオリvs.水森由菜&さくらあや』の同門対決が組まれると、4・2後楽園ホール大会では安納サオリとの一騎打ちが実現。中野が勝利した試合後には、ファンなどから中野たむの引退ムードが囁かれている事に安納が言及した上で、「中野たむ舐めんな」と周囲に向けて牽制する一幕もあった。4・6安城大会では、AEWへの移籍が決まり、この日がスターダム日本大会ラストとなった『COSMIC ANGELS』オリジナルメンバー・白川未奈と急遽3分1本勝負が組まれ、メインでは同じくオリジナルメンバーのウナギ・サヤカとタッグも結成。白川やウナギとの再会を約束し合ったものの、上谷にそのような同門対決や引退ロードを想起させるカードは1つも組まれなかった。

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン