[ファイトクラブ]期待と憎悪渦巻く旗揚げ前展望 Marigold女子団体第3勢力への道筋

[週刊ファイト5月23日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

 2024・5・20、ロッシー小川による新団体『マリーゴールド』が後楽園ホールで旗揚げする。スターダムの創始者でありながら、2024年1月にスターダムから引き抜き行為を理由に契約解除されたロッシー小川は、新団体旗揚げに向けて水面下で行動を進めていき、スターダムからジュリアや林下詩美ら5選手を軸にプロレス人生最後の大勝負に出た。「昭和を終わらせない」と豪語するロッシー小川は、合宿や決起集会、海岸トレーニングとメディア経由で話題を振りまくものの、そこに至るまでの契約やモラルの無さという何でもアリの状況に、スターダムで関わった木谷高明ブシロード代表取締役も呆れる有様だ。そんな賛否渦巻くマリーゴールドは旗揚げ戦が速攻で全席完売で、6月に控える地方巡業でも完売が出るなどプロレスファンの期待感は凄まじいものがある。女子プロレスの二強に君臨しているスターダム、東京女子プロレスに次ぐ第3勢力の座を各団体が奪えぬままでいた中、マリーゴールドがその座を易々と手に入れようとしているのだから・・・。


▼期待と憎悪渦巻く旗揚げ前展望 Marigold女子団体第3勢力への道筋
 photo & text by 鈴木太郎
・引き抜き、無秩序、何でもありの旗揚げ前
・4大王座創設も隠せぬスターダム感
・“引き抜き行為”疑惑も自衛疎かアクトレスガールズ不覚顛末その事情
・何度も繰り返されるアクトレスの契約書問題
・予兆あった風香派と舞台派アクトレス分裂
・退団沙汰防ぐには契約書しかない
・マリーゴールド 大所帯で駒揃うも不安抱える試合内容と実力差の課題
・批判異常に際立つ期待値の高さ
・懸念はトップとその他の実力差
・アクトレスタイムでも示せていない実力面
・試合内容はブシロード以降に伸びたスターダム
・岡田太郎新STARDOM社長全方位外交転換も不安山積 AEW業務提携
・WWEとの代理戦争? 安納サオリ専属契約から動く新体制
・鎖国体制⇒全方位外交へシフト?
・WAVE、アジャ、アイスリボンと絡む2024年春
・ロッシー小川という禁断の扉
・今後数年抱える【離脱⇒Marigold】の不安
・女子プロレス第3勢力早々射止めたMarigoldと国内Joshi皮肉現状
・各団体が獲得苦戦の女子プロレス団体第3勢力
・ファンは義理人情より面白さ重視の生き物
・”個別推し”に支えられる今の女子プロ業界
・30代主体で不安抱える元アクトレス勢


 2024年春、元スターダムのロッシー小川率いる新団体・マリーゴールドの旗揚げが発表された。団体名を聞いた時には、同名の曲を出している歌手・あいみょんの名前を想起せずにはいられなかったが、ロッシー本人があいみょんのファンで、そのまま曲名を団体に名付けたのだそうだ。

 そんなマリーゴールドの花言葉には、『真心』、『健康』、『愛情』といったポジティブな意味合いが含まれており、団体名も「しばしば太陽の力強い強さと結びつき、人の内面に宿る力、強さ、光を表す」という意味が込められたのだという。
 その反面、『嫉妬』、『絶望』というネガティブな花言葉もマリーゴールドという言葉は背負っている。皮肉にも、花言葉に導かれるようにして旗揚げ当初から『愛情』と『嫉妬』で入り乱れるという話題性の大きさ。周囲から注がれる期待と不安を背負いながらも、ロッシー小川のラストスパートに向けて舟は出港した。

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“引き抜き行為”疑惑も自衛疎かアクトレスガールズ不覚

 2024年3月、予てより噂されていたスターダムの選手離脱は、ジュリア、林下詩美を始めとした計5選手の離脱で一応の決着を見た。2024年1月、スターダム創業者であり、ブシロード傘下となって以降はエグゼクティブプロデューサーの役職に就いていたロッシー小川が突如電撃解任となる。その理由は、「多数のスターダム所属選手・スタッフに対する引抜き行為があったことを覚知した」という衝撃的な内容であり、スターダムの公式発表によってロッシー小川の新団体構想が露見するや否や、ファン周辺は「退団者は誰なのか?」という話題が約2ヶ月もの間先行していた。度々海外進出が取り沙汰されていたジュリアや、2024年3月にシンデレラトーナメント三連覇が絶たれたMIRAIが退団を仄めかすコメントを残していたものの、タッグ王者(当時)にして団体の看板選手である林下詩美、貴婦人キャラでブレイクの兆しを見せた桜井まい(現:桜井麻衣)、デビュー5ヶ月でスターダムの新人王を獲得した弓月(現:ビクトリア弓月)の離脱は驚きだったと言えよう。

 ほどなくして、今春には専門媒体にてロッシー小川によるコラム連載『女子プロレスのつくりかた』が発表されると、4月には新団体の詳細が発表。翌5月に旗揚げ戦の日程が明らかとなり、その後は静岡、京都、名古屋などの地方巡業のスケジュールまで発表。今夏にはビッグマッチ開催の構想も明かされている。この間には専門誌の表紙まで飾り、DDTプロレスリングやプロレスリング・ノアの大会も扱う有料動画サービスWRESTLE UNIVERSEでの配信も決定するなど、ロッシー小川は周囲への根回しを進めながら水面下で事を動かしてきた。

 団体内の王座創設に向けても動いており、「マリーゴールド・ワールド王座」、「マリーゴールド・ユナイテッド・ナショナル(UN)王座」のシングルベルト、タッグベルトとなる「マリーゴールド・ツインスター王座」、体重55kg以下の選手のみ挑戦できる「マリーゴールド・スーパーフライ級王座」の4大王座が制定。ワールド王座は赤色、UN王座は白色と全日本女子プロレスを踏襲していると謳うものの、シングル2大王座のカラーリングはスターダムが管理しているワールド・オブ・スターダム王座やワンダー・オブ・スターダム王座と酷似しており、軽量級のベルトもスピーディーな選手が巻いてきたハイスピード王座のコンセプトと被る。スターダムを追われた後でも世界観構築にスターダムらしさは欠かせないという皮肉か・・・。

 そして、4・15のマリーゴールド旗揚げ会見では、スターダムを退団した5選手に加え、スターダム旗揚げメンバーの1人である高橋奈七永、元アイスリボンの石川奈青のフリーランスレスラーの加入も発表。当初は7選手+レギュラー参戦で構成されると思いきや、会見中に現れたアクトレスガールズ所属の6選手と元スターダムGMの風香も入団を直訴。旗揚げ会見の直前、アクトレスガールズ公式から所属中にも関わらずアクションを起こした選手達に批判の声が飛び交ったものの、最終的には元アクトレスガールズ勢は全員が入団。アクトレスガールズとの”和解”も発表された。

 ここまで来ると、ロッシー小川を始めとしたマリーゴールドに関わる人間のやりたい放題に見えてしまうが、アクトレスガールズの件に限って言えば、このような退団の顛末は初めてではない。万喜なつみ(現:なつぽい)がアクトレスガールズから東京女子プロレスに移った2018年末の退団も、2020年夏に団体側から「期限付き契約書を交わしているわけではないので退団する事は問題ありませんが、時機の問題です。」という珍リリースが飛び出した川畑梨湖の退団も、団体が退団理由と要望を受理しなかった2021年夏の桜井まい退団も、今回のマリーゴールドの件も、全て”解雇”ないし同等の内容でアクトレスガールズが選手を一方的に非難する内容であった。しかし、いずれも御気持ち表明で相手を悪と断罪することで、アクトレス側が泣き寝入りを余儀なくされたのは、契約書の有無ではないだろうか?

 最初の万喜の時でさえ、アクトレスガールズ側は”解雇”を強調していたものの、その後行われた東京女子プロレス側の会見で顧問弁護士も同席の下「契約書の存在はなかった」と明言されてしまって以降、アクトレス側の主張は一気にトーンダウン。それ以降も同様のパターンで退団が続きながら、アクトレスガールズが契約書に基づいた法的措置を一向に取れないのは、そもそも契約書自体交わしていないという御粗末な状況を放置し続けてきたからではないだろうか? だから、”解雇”を主張したところで論理性の無い、周囲の御気持ちや性善説に訴える事しか出来ないのである。契約が言った・言わないになる事態を防ぐ為の契約書が機能していないようでは、このような引き抜き劇は今後も何度だって起こり得る。契約満了に伴う退団を発表できる団体は、契約書を書面でしっかり結んでいる団体と言えるのかもしれない。

 また、アクトレスガールズ内で派閥が複数に割れていたという話も、2022年~2023年時点で既に噂されていた。2021年を持ってプロレス団体としての活動を終了し、自分達をプロレスではないと標榜しているアクトレスガールズであったが、体制刷新以降にプロデューサーとして風香が入ってからは、団体やプロデューサーの生む方針のブレに戸惑い、舞台に重きを置く者と、風香に就く者などで派閥が分かれていたのだという。また、2022年の体制刷新以降は従来の女子プロレスファンが離れてしまったこともあり、刷新前にプロレスのリングに上がっていた一部選手の人気も低下。プロレスに回帰したいという願望が強くなっていたとの話も聞かれた。そして、今回マリーゴールドに移った皇希に関しては、度々スターダムが狙っているとの話も漏れ聞こえるなど、プロレス団体の食指が確実に動いていた。
 契約書の有無、方針のブレ、求められたステージなどは、最終的に一部選手のマリーゴールド加入を後押しする明確な動機に繋がったとは言えないだろうか? 離脱の第2弾があるとの噂も飛び交うアクトレスガールズなだけに、今後の動きも気になるところだが、間違いなく言えるのは、そういう退団沙汰を防ぎたい場合は契約書を結ぶことが肝要ということだろう。特に、ロッシー小川の目が黒いうちは・・・。
(編集部注:契約書作らない選択がエンタメ産業の場合得策との考察は本誌別記事に詳細済み)

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