[ファイトクラブ]仙女、進化止まらず!”女子プロ”枠超える圧倒的格差見せた新宿FACE

 仙女は最早、【女子プロレス】でカテゴライズ出来ない領域まで進化を遂げていた。
 2023・6・11センダイガールズプロレスリング新宿FACE大会は、仙女でしか見せる事の出来ないような、他団体を圧倒する内容を客前に見せつけていた。里村明衣子や橋本千紘の印象が強いものの、他の選手も負けてはいない。寧ろ、若手選手が放つ技や動きのキレっぷりに、仙女が他の追随を許さぬ一端を垣間見たのである。


[週刊ファイト6月22日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼仙女、進化止まらず!”女子プロ”枠超える圧倒的格差見せた新宿FACE
 photo & text by 鈴木太郎
・里村も自負した「タイトルマッチのレベルの高さ」
・仙女は【女子プロレス】でカテゴライズ出来ない
・『仙女=里村、橋本』ではない凄み!他を圧倒する所属選手の試合内容
・抜きん出ていた所属選手の動き
・ロープワークと乱れぬドロップキックで圧倒した岡優里佳
・試合終盤でも休まぬ愛海の無尽蔵な体力
・ハイレベル故に陥るベルト戦線のワンパターン化
・仙女の更なる進化のカギは、橋本一強時代のストップにあり
・タッグ岡優里佳、敗戦も試合制圧で見せたウナギ・サヤカとの格の違い
・水波綾-細川ゆかりに見る他団体で外れたGLEAT女子の足枷とは?
・川畑梨瑚、キャリア差埋める猛攻及ばず松本浩代ロックドロップに沈む
・岩田美香&高瀬みゆき『赫覚醒』王座猛接近も橋本千紘オブライトでV2
・愛海ワールド15分王座初挑戦緩急攻め躍動も朱崇花ムーンサルトV2
・勝利者トロフィー踏みつけも拍手起こる、朱崇花の愛嬌と強さ


■センダイガールズプロレスリング 『新宿FACE大会』
■日時:2023年6月11日(日) 18:00開始
■会場:東京・新宿FACE
■観衆:未発表

 「ご来場いただきありがとうございました。タイトルマッチのレベルの高さ。我々の日々の訓練がなぜ厳しいか? 今日の仙女の試合を見てわかっていただけたのではないでしょうか」。

 上記の発言は、2023・6・11センダイガールズプロレスリング新宿FACE大会終了後、団体創設者の里村明衣子がTwitterで発したコメントである。
 この日のメインイベントは、『朱崇花vs.愛海』のセンダイガールズワールド王座戦。同王座に初めて挑戦した愛海は、今回が初挑戦とは思えない程の熱戦を展開した。
 しかし、この日凄かったのは愛海だけではない。センダイガールズプロレスリング(以下:仙女)所属選手の動きが軒並素晴らしく、客席から見ていても圧倒されてしまったのである。里村の発言と自負には明確な裏付けがあり、説得力が備わっていた。いわば、仙女は【女子プロレス】でカテゴライズ出来ない領域まで進化を遂げていたのである。

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『仙女=里村、橋本』ではない凄み!他を圧倒する所属選手の試合内容

 「仙女はスゴい」

 前々から筆者が仙女に対して抱いていた印象である。団体創始者の里村明衣子だけではなく、創設メンバーのDASH・チサコ、2015年デビューの橋本千紘を筆頭に展開されるアスリート的な試合は、国内女子プロレス団体の中でもストイック性と内容の信頼感を携えていた。他団体に出ても、そのスゴさが対比となってハッキリ分かる。

 筆者がスターダムや東京女子プロレスといった他の女子プロレス団体を様々見てきた中で、この日、1年以上振りに仙女を見た。正直なところ、ただただ、度肝を抜かれた。所属選手の動きが他を圧倒する程抜きん出ていたのである。
 創始者の里村は、現在海外を拠点に活動している事もあり不在。7・16後楽園ホール大会での復帰が発表されたDASH・チサコも、欠場中の為カードに組まれていない。所属選手も少ない故に、この日組まれた5試合中、中盤のシングル2試合に所属選手の名前はなかった。それでも、試合のクオリティが落ちることは無かった。レギュラー参戦組の良さも光っていたが、所属という核が無ければ、このような感想には至らなかったと思う。それも、団体の看板選手である橋本千紘だけで成している評価ではない。

 印象的だったのは岡優里佳である。オープニングマッチに登場した彼女は、ロープワークの速さと何発出しても乱れないドロップキックのクオリティだけで、他の3選手を制圧してしまった。敗れはしたものの、基本技だけで印象をかっさらう選手もそうはいないし、このクオリティを出せる選手だって、若手はおろか中堅・ベテランでも多くはない。岡の姿は、今の仙女の凄みを体現していた。

 メインに登場した愛海も素晴らしい試合を見せた。ワールド王座初挑戦にして、対角に立つのは朱崇花という強敵。それでも怯むことなく場外乱闘でも積極的な姿勢を見せてきたし、グラウンド卍固めも強烈そのものだった。何より、試合終盤に休むことなく連続攻撃に移行できる、愛海の体力に圧倒された。
 プロレスのタイトルマッチやタイトル相当の試合でも、終盤戦は中々フォールで相手をカバーする動きに進めなかったり、ダウンカウントのギリギリまで休んだりする光景をよく目にする。だが、多くの選手なら休んでもおかしくないタイミングで、彼女は序盤戦のような早い攻撃パターンを繰り出す事が出来ていた。派手な技に頼ることなく凄みを体現できる領域には、一朝一夕で到達できるものではないだろう。

 一方で、団体の課題が見えた事も確かだ。団体内の実力のベースが高い分、ベルトを獲れる説得力や実力もハイレベルが求められる。故に、ベルト戦線がワンパターン化に陥ってしまう一端も垣間見た。
 今大会のメインイベントでワールド王座を防衛した朱崇花だが、2022年12月に橋本千紘を下して同王座を獲得し、2023年1月に岩田美香、今大会で愛海を下したことで、早くも次期挑戦者候補の手札が限られてしまった。それでも、次回王座防衛戦は7・16後楽園ホールで決定している。

 欠場から復帰するDASH・チサコや、セミファイナルでタッグ王座防衛に成功した前ワールド王者・橋本、ウルトラC案で里村、他には有力フリーランスと、候補者は探せばいるだろうが、良くも悪くも「橋本で取り返す」構図が脳裏を過る。何故ならば、シングル王座創設以降、第2代王座を橋本が獲得してからは外敵に獲られては獲り返す歴史が築かれてきたからだ。

 その証拠に、シングル王座の偶数代は現在まで橋本のみで、現11代王者の朱崇花がいる奇数代の王者は、初代の里村を除いて他団体ないしフリーランス。年間で王座戦が組まれる回数は多くないとはいえ、ここまで傾向がハッキリ分かれる王座遍歴も中々無いだろう。とはいえ、橋本クラスの選手はそうそう生まれるものでもない。この不文律を他の所属選手が変えていけるかどうか? 絶対的な橋本の一強時代に誰が終止符を打てるのか? 一朝一夕で出来るものでは無いが、それを成し得た時に、仙女は更に進化するのだと思う。

タッグ岡優里佳、敗戦も試合制圧で見せたウナギ・サヤカとの格の違い

<第1試合 タッグマッチ 15分1本勝負>
●岡優里佳 ななみ
(9分3秒 ポテリング)
○安納サオリ ウナギ・サヤカ

 安納サオリとウナギ・サヤカがタッグを組み、ななみと岡の10代タッグと対戦したオープニングマッチ。前述したように、岡がオーソドックスな技で試合の印象を搔っ攫っていった事で、一気に主役へと躍り出たのである。
 試合後、真っ先にウナギが岡に対してメンチを切ったものの、勝利という結果も含めて試合に多く関与していたのは安納だったし、何より岡に内容で惨敗していた事実は消しがたい。試合外のアピールでは埋められない差が、そこにはあった。

水波綾-細川ゆかりに見る他団体で外れたGLEAT女子の足枷とは?

<第2試合 シングルマッチ 15分1本勝負>
○水波綾
(10分39秒 イチジク)
●細川ゆかり

 GLEATの女子部門を担う細川ゆかりが、”みんなのアニキ”水波綾に挑んだ一戦。所属外同士によるシングルだったが、試合は双方へ声援が飛ぶなど盛り上がりを見せた。

 発足当初から突き抜けきれぬ状態が続くGLEAT女子部門であるが、女子部門という枠に囚われたりジャッジされたりしない仙女マットで、水波と当たるイキイキした細川の姿を見ていて考えさせられるものがあった。勿論それは、水波綾という安定して良い試合を生み出すベストバウトマシーンの存在も大きいのだが、今のGLEAT女子部門に必要なものは、こういう他団体参戦によって、所属選手に付けられた手枷足枷を外してやることではないだろうか?

 そして、その解放に貢献できる選手の一人が水波綾ではないかと筆者は確信した。彼女の熱さは、よく言えばクール、悪く言えば感情を載せづらいGLEAT女子部門を変える起爆剤となるのではないか? 仙女マットは、他団体の空気感をも変える可能性に満ちている。

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