[週刊ファイト10月30日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼全日プロ旗揚げ記念 三冠戦激闘!健斗コール 潮崎コール熱い抱擁
photo by テキサスロングホーン(前座公式) 編集部編
・全日本プロレス後楽園ホール大会!激闘の記録
・宮原健斗対潮崎豪─10年越しの決着、三冠戦に込めた意地と覚悟
・MUSASHI&吉岡世起が激戦を制しアジアタッグ初防衛
・全日本の未来を担う“同期対決”、真っ向勝負の果てに交わされた覚悟
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全日本プロレス後楽園ホール大会!激闘の記録

■ 全日本プロレス 旗揚げ記念シリーズ2025
日時:10月22日
会場:後楽園ホール 観衆1322人(主催者発表)
<第7試合 三冠ヘビー級選手権試合 60分1本勝負>
[王者]○宮原健斗
22分56秒 シャットダウン・スープレックス・ホールド
[挑戦者]●潮﨑豪
※第76代王者が初防衛に成功
<第6試合 アジアタッグ選手権試合 60分1本勝負>
[王者組] ○MUSASHI 吉岡世起
16分15秒 二天一流⇒体固め
[挑戦者組] 青柳亮生 ●ライジングHAYATO
※第127代王者組・MUSASHI&吉岡世起が初防衛に成功。
<第5試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
○安齊勇馬
12分12秒 ギムレット⇒片エビ固め
●井上凌
<第4試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
○綾部蓮 タロース
10分55秒 デスルーレット⇒片エビ固め
●本田竜輝 野村直矢
<第3試合 HAVOC vs バカの時代 6人タッグマッチ 30分1本勝負>
ザイオン ○オデッセイ 芦野祥太郎
7分18秒 ダイビングボディプレス⇒片エビ固め
鈴木秀樹 真霜拳號 ●阿部史典
<第2試合 10人タッグマッチ 20分1本勝負>
○大森北斗 羆嵐 黒潮TOKYOジャパン 他花師 立花誠吾
10分50秒 無想一閃⇒片エビ固め
斉藤ジュン “ミスター斉藤”土井成樹 ●田村男児 宮本裕向 佐藤光留
<第1試合 シングルマッチ 15分1本勝負>
○青柳優馬
9分33秒 ダイビングエルボードロップ⇒片エビ固め
●小藤将太
宮原健斗対潮崎豪─10年越しの決着、三冠戦に込めた意地と覚悟

2025年10月22日、全日本プロレスが開催した「旗揚げ記念シリーズ2025」後楽園ホール大会。そのメインイベントで実現したのは、三冠ヘビー級選手権試合、第76代王者・宮原健斗と挑戦者・潮崎豪による激突であった。両者の因縁は2015年まで遡る。当時、世界タッグ王座をともに保持していた両者は、潮崎の全日本退団によって王座を返上せざるを得ず、ユニット「Xceed」は解体。潮崎は全日本を去り、他団体での活動を経て2025年にHAVOCの新メンバーとして電撃的に全日本マットに復帰した。
試合開始前、宮原は三冠王者の象徴ともいえる3本のベルト──インターナショナル、PWF、UNの各王座ベルトを腰に巻き堂々と登場し、対する潮崎は黒のロングタイツで精悍な姿を見せる。リングサイドからは潮崎に一部ブーイングが飛ぶものの、その空気を吹き飛ばすように、試合開始のゴングと同時に両者は一歩も引かぬ真っ向勝負を繰り広げた。

序盤は宮原が場外での頭突き、ビンタ、フロントハイキックで主導権を握ると、エプロンからのパイルドライバーで潮崎をリングアウト寸前まで追い込む。しかし、潮崎も引かず、場外から生還すると雪崩式旋回ブレーンバスターで形勢を逆転させ、互いに豪快な打撃を打ち合う展開へ。逆水平チョップ、垂直落下式ブレーンバスター、そして豪腕ラリアットと、潮崎は全身全霊で王者に迫った。
特筆すべきは終盤の攻防である。潮崎の必殺技・ゴーフラッシャーやリミットブレイクを受けても宮原は3カウントを許さず、豪腕ラリアットに対してはブラックアウトで応戦。フィニッシュは、まさに一瞬のスキを突いたカウンターのブラックアウトからのシャットダウン・スープレックス・ホールド。潮崎をリングに沈めたこの一撃により、宮原は22分56秒で初防衛を達成し、場内は割れんばかりの歓声に包まれた。

勝利を収めた宮原はマイクを手に、「出たり入ったり、ベルト返上したり、ユニットを野放しにしてもいいじゃねえか!誰がそんな小さいことを言ってるヤツがいるんだ?俺はそんな小さい人間になりたくないね」と会見での自身の発言をあえて自嘲し、会場の空気を一気に掌握した。そして、「全日本プロレスは誰のものでもない。強くて、かっこよくて、デカいヘビー級が集まるリング。それが全日本プロレスだ」と高らかに宣言し、潮崎に向けて「なかなかお似合いじゃねえか」と称賛した上で、リング上で固く抱擁。10年越しの恩讐を越えた一瞬の和解を見せた。
しかし、感動の余韻も束の間、背後から現れたのは大森北斗だった。宮原に原爆固めを見舞い、「お前が三冠を獲ってから、プロレスが楽しくねえ」と告げると、「11月3日、札幌で挑戦させろ」と次なる挑戦を直訴。宮原は「北海道の大都会・札幌で、お前の最後の思い出作りに付き合ってやるよ。せいぜい地元で俺に負けるところを、皆様に見てもらえ」と受諾し、次期防衛戦が札幌大会で行われることが決定的となった。
試合後のバックステージでの宮原は、あらためて「出たり入ったり?ベルト返上?10年前の話なんて忘れてたよ。小さいこと言ってるプロレスラーの顔が見てみたいね」と語り、続けて「全日本プロレスは誰のものでもない。プロレスファンのものだ」と語った。そして潮崎に対しては、「デカくて強くてカッコいい。まさにこのリングに似合ってる」と、プロレスファンの思いを代弁するように賞賛を送った。
潮崎もまた、「負けてしまったが、俺には仲間がいる。HAVOCで必ず三冠を奪ってみせる。終わらない、潮崎豪は終わらない」と力強く語り、再起を誓った。

かつての仲間が敵としてぶつかり合い、そしてリング上で交わされた一瞬の抱擁。その裏に秘められた10年の歴史と、それぞれが背負ってきた道のり。それを体現したこの一戦は、単なるタイトルマッチではなく、全日本プロレスが掲げる“強くて、かっこよくて、デカい”ヘビー級プロレスの真髄を見せつける戦いであったと言っていいだろう。
11月3日、札幌で待ち受けるのは新たな挑戦者・大森北斗。次なる戦いに向け、宮原健斗の歩みは止まらない。
MUSASHI&吉岡世起が激戦を制しアジアタッグ初防衛

全日本プロレス「旗揚げ記念シリーズ2025」が行われた10月22日の後楽園ホール大会、第6試合ではアジアタッグ選手権試合が組まれ、第127代王者組・MUSASHI&吉岡世起が、挑戦者組の青柳亮生&ライジングHAYATO、いわゆる“アツハヤ”を迎え撃った。両チームはこれまでにも何度か交錯してきたが、アツハヤがアジアタッグ王座に挑むのはこれで3度目、3年4ヵ月ぶりの挑戦となった。
挑戦者組は試合開始早々からプランチャを同時に繰り出すなど、かつてのタッグパートナーとしての連携を思い出させるスピーディーかつ連動性の高い動きで試合を掌握する。青柳亮生は王者としての自信を漂わせながら盤石の動きを見せ、場内から「亮生」コールが巻き起こる。HAYATOもまた、かつて長尾一大心から受け継いだ変型スイング式DDTでMUSASHIを足止めするなど、かつての全日本ジュニア戦線を席巻した二人の復活を印象づける攻勢が続いた。

しかし、終盤にかけて試合の流れが一変する。吉岡がエプロンからジャンピングハイキックを放ち、MUSASHIが背後からの同型攻撃でサンドイッチ攻撃をHAYATOに叩き込むと、むーちゃんせーちゃんのコンビネーションが発動。雪崩式フランケンシュタイナー、エストレージャフトゥーロと立て続けに技を決め、逆転に成功する。ここでHAYATOも人でなしドライバーで意地を見せ、丸め込みを連発する粘りを見せるが、MUSASHIの後頭部へのトラースキック、そしてダメ押しのエストレージャフトゥーロ2連発からのフィニッシュは、変型エメラルド・フロウジョン「二天一流」。これで3カウントを奪い、試合時間19分47秒で初防衛に成功した。

試合後、MUSASHIが「勝ったぞー!」と絶叫すると、そこに姿を現したのは小藤将太だった。「ゼンニチジュニアによるこんな熱い試合を見せられたら、いてもたってもいられなくて出てきちゃいました。次、そのアジアタッグのベルト、僕に挑戦させてください」と挑戦表明。MUSASHIは「いいじゃん、いいじゃん。何?今の気持ちいい挑戦表明。やろうやろう」と一度は快諾するものの、「これタッグのベルトだからさ、1人で来られても無理じゃん。パートナーは?」と確認を促した。
そこで登場したのは、予想外の大物、ヘビー級ファイターの鈴木秀樹だった。ジュニア選手とのタッグを想定していたMUSASHIは「違うじゃん。ジュニアの選手だと思ったじゃん。メチャクチャヘビーの選手じゃん」と困惑の表情を見せるも、吉岡が「一回やるって言っちゃったし、この空気をどうにかするためにも受けよう」と判断し、挑戦受諾が決定。ここに「アグレッシブキャッツ」なる異色タッグチームが次期挑戦者として浮上した。
バックステージでも、MUSASHIと吉岡の掛け合いは独特のテンポで展開され、MUSASHIが「信は力なり!」と繰り返せば、吉岡は「どういうこと?」と追求するが、結局は意味不明のまま「泣かせてください、思いっきり泣かしてください!勝ったぞー!!」とMUSASHIが叫び去っていく様子は、むーちゃんせーちゃんならではのユーモアと熱を感じさせた。
対するHAYATOと亮生の“アツハヤ”は、これが3度目の挑戦にもかかわらず結果に結びつけることはできなかった。だが、かつてのジュニア戦線を支えたコンビが全力を尽くしたこの一戦は、試合後もファンの間で語り継がれるほどの熱戦となった。再びベルトを狙う機会が訪れるのか、それともこのままタッグとしての活動は一旦幕を下ろすのか、その去就にも注目が集まる。
いずれにせよ、アジアタッグ戦線は新たな展開を迎えつつあり、“むーちゃんせーちゃん”が迎え撃つ次なる相手「アグレッシブキャッツ」との対決は、話題性・実力ともに十分な一戦となりそうだ。