AEW ALL OUTマット・ハーディ危機一髪!志田光サンダー・ロサ-FTR戴冠-MOX流血葬MJF

(c) AEW

■ AEW ALL OUT
日時:9月5日(現地時間)
会場:米フロリダ州ジャクソンビル デイリーズプレイス

 テレビ番組Dynamiteは二週続けてイマイチだった感のあるAEWだが、レスリング的にはさすがに中身のあるPPV大会をプロデュースしてきた。豊富な写真を使った各試合の詳細は週刊ファイト9月17日号に譲るが、全体でやや長すぎたことに加え、日本で活躍したマット・サイダルのAEW登場があったものの、フロリダは湿気ムンムンの暑い夏だったようで、最初のシューティング・スタープレスをすべって失敗という不運も。ただ、そこからはなんとか格好つけていたから胸をなでおろしたものだ。


 しかし、大会最大のニュースはよくも悪くもマット・ハーディが危機一髪だったこと。AEWは公式写真の到着が遅いのでネット検索もしてみたが、やはりこの話題が軸なのは仕方あるまい。本誌はサミー・ゲバラとマットの殺戮流血戦が続いていることに懸念を活字を残し、なんかやばいことになるリスクを指摘していたが、残念なことに恐れていたことが起きてしまったことになる。
 元は誰が悪いわけでもなくアクシデントでサミーの投げたイスがマットの顔面を直撃。目に当たっていたら失明になっていたが、マットはガチの大流血に。それは仕方なかったにせよ、そこから遺恨の抗争ということになり、今度は両者流血でサミー君も側頭部をざっくり切ってしまい、AEWは流血容認とはいえ、殺戮戦エスカレートが続くとガチの事故になりかねないと心配した矢先のこと。それがPPV中継で現実になってしまったのだ。

 前回PPVのフットボールスタジアムを使った映画仕様の「スタジアム・スタンピード」では、サミーが命からがら走って逃げまくる場面が良くも悪くも大笑いだった好評もあり、試合はデイリーズ・プレイスに隣接するスタジアムでスタート。今度はサミーがゴルフカートに乗ってマットを追いかける場面から始まり、そこまでは上々の滑り出しだったものの、マットを隣接会場と繋がっているコンクリートの通路に組み立てられたテーブルにフォークリフトの上から落とす場面、無事にテーブルは背中というより下半身で割れたのだがマットの頭がコンクリートに突っ込んだように見えて「うん?」と。女子レフェリーのオーブリー・エドワーズが頭を起こして大丈夫かと聞いているのは読唇術というか明らかなんだが、その後ドクターがかけよってもプロレス流の大げさにやる演出なのかどうかパソコンの小さな画面では判然としない。

 なにしろ今回のPPV、本当に完全LIVE中継なのかよくわからないところがあり、一部をカットしたんじゃないかとも思いながら、なんかうやむやのまま試合再開というか、二人がデイリーズ・プレイスの方に行き、そのまま予定フィニッシュに向かうのだ。恐らくっもっと尺は貰っていて攻防も予定されたであろうが、そこはもう、あぁ早く終わりにするなと大人のファンは気が付くのである。照明を組む鉄材を登ったところからサミーがギミック台に落とされて肩を壊したようなセールをして10カウントで立ち上がれず、マットの勝利、AEWを去らずに済むという結末はちゃんとみせるんだが・・・。全試合が終わったあとネットを見ると、マットの奥さんレビーさんも直ちにツイートしていて、「ビルの全員ふざけるな!」と告発! 試合はあそこで止めるべきだったということ。ああ、やっぱりガチだったんだと納得という経緯である。

 だいたい、会場キャパの1割程度ながら有観客大会であり、「売り出して5分で売り切れた」とAEWは自慢していたんだが、クリス・ジェリコの入場で、例によって♪Judasの歌詞を合掌する時まではカメラがなぜか観客を映さない。どうやらPPV効果もあってリングに近いところには客を入れず、遠く上の方だけにしたようなのだが、やはりいくら試合自体は熱戦かつ良い内容でも、お客さんの興奮なりが画面から伝わってない課題はあった。まして、ブリット・ベイカーの歯科医院での試合はいわゆる映画仕様の事前収録スキットなんだが、最初の発表ではプリショーになるAEW表記ではBUY-INとなるはずが、本戦第1試合に繰り上げに。そして問題のマット・ハーディの試合も、試合の始まりはスタジアムの方だから、カネを払って会場に来たお客さんはスクリーンを見せられたのだとは思うが、どうなんだろうか。
 恐らく基本はLIVE進行で実際のPPV中継より早く始めたハズで、マット・ハーディの中断場面は部分的にカットしたと思われるが、それにしてもヒヤッとさせられた危ないspotになってしまった。

【試合結果】
<第1試合 Tooth and Nailマッチ>
●ブリット・ベイカー
 全行程は10分尺 試合らしきコントは約6分 
○ビッグ・スウォール
 本誌は他媒体のレポートなんか読まずに記事を書く原則があるが、写真到着を待つ手前とマット・ハーディのアクシデントがあるからいくつか見たけど、「良かった」とかあって「冗談だろ?」としか思えない。メイクアップ係にして個人アシスタントのレバも絡む歯科医院という設定のどこかのスタジオで撮影したスキット。歯医者先生が麻酔注射を対戦相手にぶちこもうとして自分に打ってしまう憐れなフィニッシュ。本誌ははっきり断言する。こんなコントはナンセンスである。以上。

<第2試合 タッグマッチ>
○ヤングバックス
 14分50秒
ジュラシック・エクスプレス(●ジャングルボーイ&ルチャザウルス)

<第3試合 21人参加カジノ・バトルロイヤル>
優勝 ランス・アーチャー
 22分15秒
最後に残ってたのはエディ・キングストン

 グループごとに時間差で出てくる形式でWWEのとは違う。だったら最後に出てくる組が圧倒的に有利という気もするが、マット・サイダルの初登場もあれば、ソニー・キスが大男のジェイク・ヘイガーを場外に落とすのは良かった。それにしても最初に出てくるベストフレンズはややお笑い要員になっているかも。あと、ここでも極めて危険なスタントをやったのがダービー・アレンだ。画鋲の詰まった死体袋に入れられて、無造作に投げられるんだが、恐らく本人がやると言ったにせよ、ガチで大怪我になりかねない。いや、画鋲よりも袋のまま投げられること。極めてやばい。あれじゃ受け身取れない。最後に残った4人はアーチャー、サイダル、ブッチャー、キングストンだった。
 勝ち残ったアーチャーは、ジョン・モクスリーの世界王者挑戦者に。新日プロのUS王座戦再現である。

<第4試合 ブロークン・ルールズマッチ>
○マット・ハーディ
 放送されたのは約9分 落とされたサミーが10カウント立ち上がれず。
●サミー・ゲバラ
※マットは退職を免れる

 いわゆるラストマン・スタンディング戦なのだが、試合の叩き文句通りで本当に”ブロークン”になったら、それはもうプロレスではない。

<第5試合 AEW世界女子王座戦>
[王者]○志田光
 17分00秒 魂のスリーカウント
[挑戦者]●サンダー・ロサ
※志田が王座防衛

 AEWの女子部門、まともな試合もじっくり見せますということで尺も確保されてロサのいいところを全部出すというデザインに。一進一退どころか、ロサの攻撃の方が割合大きくとってあり、貸し出してくれたビリー・コーガン(Smashing Pumpkins)率いるNWAに最大限の敬意を表したことになろう。志田がバッチリだったのは当然か。
実況は結構日本事情に詳しいエクスカリバーがいるが、技名カンパーナは知らないようで・・・。鐘をコーナーパッドに打ち付ける見せ場も。花道階段のある側に志田がメテオラをやる場面は、サーシャ・バンクスの前日のSmackDownと違い、「AEWのCIMA直伝であり・・・」とはやってた。但し、ロサの頭が危うく階段に当たるところでマット・ハーディの事故があったのでヒヤッとした。

<第6試合 8人タッグマッチ>
ナチュラル・ナイトメア(○ダスティン・ローデス、QTマーシャル)+ マット・カラドーナ&スコーピオ・スカイ
 15分10秒 フォール
ダークオーダー(Mr.ブロディ・リー、●コルト・カバナ、Evilウノ、スチュ・グレイソン)

 試合後、ブロディ総裁がカバナにブチ切れしていたが、カバナはG1に行くのか? そもそも間に合うのか? ダスティンはブロディのTNT王座挑戦があとで発表された。

<第7試合 AEW世界タッグ王座戦>
[王者]ケニー・オメガ&●ハングマン・ペイジ
 29分40秒 オメガのVトリガー誤爆からマインドブレーカー
[挑戦者]○FTR
※FTRが新王者

 ケツは誰もがわかっていたことだが、試合は当然ハイレベル。ただ、やや長すぎたかも。実質は観客ナシのようなモンだから、そういう場合いくらもの凄い内容でも沸いているように見えない嫌いは残った。あと、終わってからオメガがテーブルを持ち出して、しくじったペイジを叩くような・・・となってそれだけは止めてくれと思ったのは本誌だけではないだろう。ちょうど前日のSmackDownでベイリーが裏切りでサーシャ・バンクスに暴行するのと同じ展開になってしまうからだ。

 さすがAEW、「WWEと同じことやっている」と批判されるのは避けて、オメガが思いとどまったのは良し。但し、リング上にペイジを残してオメガは一人で帰ってしまい、追いかけるカメラはバックステージで待つヤングバックスも映すが、「俺はもう帰る、お前らも来るか」と裸のまま車に乗るオメガだが、ヤングバックスは見送るだけで車は会場外に消えていった。エリート軍の亀裂はオメガのヒールターンということになろう。

<第8試合 ミモザ・メイヘムマッチ>
●クリス・ジェリコ
 15分15秒 ドボン
○オレンジ・キャシディ

 三度目の対決、しかしこれもジェリコ先生が若手次世代をoverさせるんだろうなぁと・・・。日曜のブランチに出てくるシャンペンをオレンジジュースで割ったのがミモザであり、リングサイドの左右二ヶ所にミニプールが設置され、落とされた方が負けという趣向だ。ジェリコ大先生が落とされるんだが、こんなモンじゃないでしょうか。

<第9試合 AEW世界王座戦>
[王者]○ジョン・モクスリー
 23分40秒 パラダイムシフト
[挑戦者]●MJF

 極めて古典的なレスリングであり、若いMJFはしゃべり能力だけでなくもの凄い。MOXは新日を通過したことで21世紀のテリー・ファンクになっている。肩を痛めつけられて自由に動けないというセールを軸に、ベビーフェイスが最後は勝利する大団円。ただ、AEWはまたMJFの大流血を容認というか、古典をやるとなるとこうなるのか。あとそもそも長時間のPPVになっておりその最後の試合。やはり23分40秒は長く感じた面はあったように思う。しかしながら、世界王座戦にふさわしいしっかりした内容は褒める必要があろう。


※月額999円ファイトクラブで読む(クレジットカード、銀行振込対応)
▼課題残したAEW All Out女子最低と最高試合-脳震盪-王座移動-4時間

[ファイトクラブ]課題残したAEW All Out女子最低と最高試合-脳震盪-王座移動-4時間

※500円電子書籍e-bookで読む(カード決済ダウンロード即刻、銀行振込対応)
’20年09月17日号AEW事故AllOut UWF鈴木健 横浜文化 FベイラーNXT戴冠 RISE 青木真也