金曜夜8時にプロレスが帰って来る!

 BS朝日は4月から『ワールドプロレスリング リターンズ』を、20:00~20:54分の時間帯で放送を開始すると発表した。1986年9月以来34年ぶりにプロレスが『金曜夜8時』に帰って来る。
 現在『ワールドプロレスリング』を放送しているのは地上波のテレビ朝日系の深夜枠、そしてBS朝日では23:30~0:00の30分番組だ。それが地上波ではないとはいえ、無料放送でのゴールデン・タイム1時間番組となる。
 筆者は本誌で「地上波でなくても、無料BSでいいからゴールデン・タイム放送の復活を」と訴えて続けていたが、こんなに早く『金曜夜8時』が実現するとは思わなかった。

 金曜夜8時といえば、昭和プロレス・ファンならお馴染みの言わずと知れた『プロレス・タイム』。裏番組には『太陽にほえろ!(日本テレビ系)』や『3年B組金八先生(TBS系)』といった強力なライン・ナップが揃っていたのだが、プロレス・ファンは目もくれず10チャンネル(筆者は関西在住だったのでABCテレビの6チャンネル)に合わせていたものだ。金曜日になると夜8時になるのが待ち遠しくて、早めにテレビを点けるため前番組『宇宙刑事ギャバン』のエンディングまで覚えてしまったほどである。

 そもそも日テレ系で『太陽にほえろ!』を放送する前は、日本プロレスを中継していた。しかしジャイアント馬場の日プロ離脱に伴い、日テレは日プロ中継を打ち切って人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の放送を開始したのである。
 当時、月曜夜8時から日プロを中継していたNET(現:テレビ朝日)が、空いた金曜夜8時にちゃっかり乗っかり、『金曜夜8時はプロレス・タイム』の看板を日テレから奪い取った。日プロが崩壊してからも、テレ朝は金曜夜8時に新日本プロレスを放送し続けたのだ。

 しかし1986年10月から『ワールドプロレスリング』は月曜夜8時に放送時間を変更、さらに1988年4月から土曜午後4時の放送となった。1988年4月といえば、日テレの『全日本プロレス中継』も土曜夜7時の放送から撤退、プロレス中継がゴールデン・タイムの茶の間から消えたのである。

▼アントニオ猪木とジャイアント馬場は、日本テレビの『金曜夜8時』に登場していた

▼2020年に向けて、プロレス界を盛り上げていくために

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▼日本のテレビと日本のプロレス(1)

[ファイトクラブ]日本のテレビと日本のプロレス(1)

ブームは突然やって来ない

 近年の新日本プロレスはV字回復した、プロレス・ブーム到来と言われていたが、ブーム感がなかったのは事実だ。プロレス・ファンは増えたものの、一般的な認知度はまだまだ低いと言わざるを得ないからである。
 しかし、ブームというのは突然にはやって来ない。ブームを起こすためには、いかに下準備をしているのかが大事なのだ。それがなければ、仮にブームが来ても一過性で終わる。

 たとえば昨年、ラグビー・ブームが訪れたが、これだって突然やって来たわけではない。その4年前のワールドカップで、日本代表が優勝候補の南アフリカ代表(スプリングボクス)から大金星を挙げたことが下地になっている。
 それから4年、ラグビー協会はW杯の自国開催に向けてPR活動を行ってきた。その活動は目立たなかったが、去年のW杯では日本戦以外でも満員の観衆を集めたのは地道な努力の賜物だ。

 それ以外のスポーツでも、現在では卓球をゴールデン・タイムで地上波中継するのは当たり前になったが、以前の卓球は『暗いスポーツ』の代名詞だった。しかし卓球協会も人気獲得に尽力し、『愛ちゃん』こと福原愛の人気もあって徐々に認知度もアップ、それが日本代表の強化にも繋がって、今やスポーツ・ニュースで卓球を見ない日はなくなったほどだ。
 フィギュア・スケートも以前は不人気スポーツだったが、今では女性を中心に大人気である。『好きなスポーツ選手』のアンケートでは、羽生結弦がトップに立つほどになった。

 国民的スポーツとなったサッカーも、1993年にJリーグが開始してから突然ブームがやって来たように思われているが、実はそうではない。それ以前から、子供たちの間では遊びといえば野球よりもサッカーをやるようになっていたのだ。
 そのため、当時からプロ野球関係者は危惧を抱いていた。そのうちサッカー・ブームが来て、プロ野球は大打撃を受ける、と。そしてJリーグが発足し、その危惧は現実のものとなった。

 現在、最も注目を集めているスポーツ選手といえばバスケットボールの八村塁だが、彼がNBA入りしてから突然バスケが注目されたわけではないだろう。2016年に開始したプロ・バスケットボール・リーグのBリーグが人気の発端となっている。Jリーグのように地域密着を目指したBリーグは、全国各地で観客を集め、今や人気スポーツの一つとなった。
 しかし、その道程は決して平坦ではなかったのだ。2005年、日本バスケ初のプロ・リーグであるbjリーグが発足したが、早急なプロ化に反対した企業チームは参加せず、従来の日本リーグの流れを汲むNBL(旧JBL)とbjリーグの2組織が対立するようになった。ただ、レベルではプロのbjリーグよりも、プロとアマが混在するNBLの方が上だったのである。
 しかし、FIBA(国際バスケットボール連盟)が「これ以上、1国に2組織の状態が続くなら、東京オリンピックに日本代表を参加させないことも検討する」と通告したため、bjリーグとNBLが統合してBリーグが誕生した。
 レベルは低かったbjリーグだが、プロとしての運営や集客に関してはNBLよりも一日の長があったのである。その時のノウハウが、Bリーグでも活かされた。

▼レベルが低かったbjリーグも、地域密着を目指しファン・サービスには余念がなかった

ファイト・スタイルを変えないのか、一般視聴者に合わせるのか

 2月9日の新日本プロレス大阪城ホール大会は、地上波や無料BSでの生中継はなかったにもかかわらず、Twitterでは『#njpw』がトレンド1位を獲得した。同時刻にはフジテレビがフィギュア・スケートを地上波中継していたが、Twitter上ではプロレスがそれを押しのけたのである。
 これはプロレス界にとって朗報であり、真の意味でのブーム到来の下地は出来上がったと見ていい。そこへ、BS朝日での金曜夜8時からの放送が決まった。まさしく絶好のチャンスである。

▼大合唱で晴れてロスインゴがビギニング! KENTAを破って2冠防衛の内藤哲也が高橋ヒロムとの師弟対決に合意

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 とはいえ、問題がないわけではない。大阪城ホールでのメイン・エベント、内藤哲也vs. KENTAでは、試合開始早々にKENTAはリング下をうろつくばかりで、5分間も両者が組み合うことはなかった。
 これはもちろん、1月5日の東京ドームでKENTAが内藤を突然襲ったことが伏線になっているのだが、プロレス・ファンはそのことをちゃんと理解している。現在のように会場での生観戦か、有料放送でしか試合を見ることができないのであれば、これでもいいわけだ。

 ところが、もし仮に地上波や無料BSの生中継があったとしたらどうなるのか。5分も片方のレスラーがリング下をウロウロしているだけでは、プロレスを知らない一般視聴者はすぐにチャンネルを変えてしまうだろう。今はリモコンで簡単にチャンネル切り替えができるのだから。
 地上波や無料BSでも、録画中継ならリング下をうろつくシーンはカットすることもできる。しかし、そうすると今度はプロレス・ファンがせっかくの心理戦を見られない、と怒り出すかも知れない。地上波や無料BSのゴールデン・タイム放送が始まったおかげで、プロレスの醍醐味が薄れてしまったとプロレス・ファンが嘆くことも考えられる。

 地上波ゴールデン・タイム中継をしていた頃は、1試合の時間がだいたい決められていたものだ。生中継だと放送時間内に試合を終わらせる必要があるし(たまに終わらないときもあったが、それもリアリティ感を出すために必要だった)、録画中継でも極力カットは避けていたのである。
 しかしプロレス中継が深夜帯に追いやられ、会場での生観戦や有料放送が主流になると、試合時間は延びていった。レスラーたちはこれでもか、これでもかと技を出し合い、簡単には試合を終わらせなくなったのだ。『カウント2.9の攻防』が当たり前になったのも、プロレス中継がゴールデン・タイムから撤退した後である。

 おかげでプロレス・ファンは心行くまでプロレスを堪能できるようになったが、プロレスを知らない一般人は『まだ試合が終わらないの?』と、じれったくなるだろう。プロレス・ファンにとっては熱戦でも、一般人にはただの『くどい試合』にしか見えないわけだ。

 今回、決定したBS朝日のゴールデン・タイム中継は、新日本プロレスのみならずプロレス界にとって、今までプロレスを知らなかった層を取り込むビッグ・チャンスである。しかし、一般視聴者に合わせるため、ファイト・スタイルを変えれば今までのプロレス・ファンから「以前の方が良かった」と言われかねない。

 従来のプロレス・ファンを手放さずに、いかに『一見さん』のファンを取り込んでいくのか、無料BSでのゴールデン・タイム放送が始まってからの課題であろう。

▼KENTAのヒールぶりは、ゴールデン・タイムのお茶の間にも浸透するか!?


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