新婚初夜、夫はハネムーン用の旅行かばんからゴソゴソと太いゴムチューブを取り出した。
それを見た新婦はこれから何が起きるのか、ベッドの中で震えていた。
そのまま、新郎、山本勝はチューブを腕に巻きつけ黙々とトレーニングを始めた。
新婚旅行中も肉体を鍛えつづけた勝の職業はプロレスラー。リングネームは山本小鉄である。
かつて日本プロレスのワールド・リーグでは、本命優勝者のゴリラ・モンスーンに思い切りのいいフライング・ボディプレスでフォール勝ちして大金星を上げたこともある。
当時、日本プロレスは馬場、猪木、大木、吉村に次ぐスターを模索中であり、若手ナンバー1の高千穂や、海外で活躍する上田馬之介、小鹿雷三などとともに“和製ブルーザー”の呼び名で小鉄を売り出そうとしていた。
ブルーザーと言ってもブロディではない。
修業時代の力道山を震え上がらせ、生涯ジャイアント馬場を小僧扱いした伝説の“生傷男”ディック・ザ・ブルーザーである。
ズングリと筋肉に埋まったタフな肉体、ダミ声で相手を挑発し、殴られても殴られても平気の平左でぶつかって行く向こう意気の強さ。技らしい技はないもののパンチとキックを繰り出し、最後はアトミックボムズ・アウェーというコーナーポストから踏みつけてKOするだけというケレン味のないファイト…
あの頃、最もプロレスラーらしいプロレスラーと言えばブルーザーだった。
得意技などなくてもオーラだけで闘えるレスラーなど、そう出て来るものではない。
「日本のブルーザーになってくれ!」
タフな体と向こう意気のある小気味良いファイトで小鉄は会社の要求に応えた。
ヤマハ・ブラザースとして組んだ相棒、星野勘太郎の目標もやはりブルーザーだった。
このコンビが国際プロレスに乗り込み、IWA世界タッグ王者に挑戦した試合を、ぼくは今も忘れない。
「国際の世界チャンピオンなど、うちの中堅どころ相手で十分」といった新日本プロレスの両者を舐めたような姿勢が鼻持ちならない気もしたが、双方のレスラー達のファイトは立派だった。
勝敗よりも試合内容で負けてなるものかという意識、敵地のタイトルに挑戦するチャレンジャーの意地、当時昇り調子だった新日のレスラーを受けて立つチャンピオンの意地が真っ向からぶつかり、片時も目を離せない勝負であった。
ヤマハのタッチワークは見事だったが、よく見ると時々「?」となる交代シーンがあったものの、観客もレフリーもそのまま試合を続けることに異論を持たなかった。
これが“オーラで闘う”レスリングなのだ。
グレート草津、アニマル浜口の王者コンビも、クレームをつけて見せながら試合を中断させる野暮はせずにチャンピオンらしい風格で涙をのむことになる。1979年1月21日当時の国際プロレスの台所事情から察すればタイトルを手放すこともいたし方なかったのかも知れないが、政治的な思惑はどうあれ気持ちの良いタイトル移動劇としてファンの目に映ったのは山本小鉄・星野勘太郎の労を惜しまぬファイトぶりによるものであるのは間違いないだろう。
この時“大きくないレスラーの鮮やかなファイト”が呼んだ感動が、後の新日本プロレス初代タイガーマスクの革命的な登場の布石になっていたと言えるかも知れない。
2008年12月18日、ヤマハブラザース再結成! この時点では元気そのものだったが…
あのIWAタッグ戦がプロレスラー山本小鉄の最後の大きな輝きであった。
その後、TV解説者として、豪放磊落なブルーザーとは比べ物にならない生真面目な素顔を見せた小鉄さんは、鬼コーチとしてブルーザーとはやはり比べ物にならないくらい若手から恐れられていた。
ブルーザーのアトミックボムズ・アウェー並の必殺技であった小鉄さんのダイビング・ボディプレスは「ガメラ式」と称されている。
大空に飛び立つ大怪獣のように、小鉄さんも小気味よく飛んで行ってしまったのかも知れない。
でも、ファンとしては急な訃報に一言いわせて欲しい。
「山本小鉄さん、ちょっと待ってください!」
と。
実録!ゾンビ役者
みぶ真也とは?
振り返ればいつも負け役
リストラ俳優
<みぶ真也ひとり芝居のページ>
小鉄&星野のヤマハ・ブラザーズ、17年ぶりの再結成! 衰えを知らぬ小鉄のストロング金言にビッシビシ震えよ!?
週刊マット界舞台裏’10年09月09日号~山本小鉄追悼
ヤマモさんからの情報によると、3日告別式の列席者は以下の通り(敬称略・順不同)
新日本プロレス所属選手(ヒール系一部選手を除く)
坂口征二
武藤敬司
佐山聡
高田延彦
佐々木健介
高山善廣
鈴木みのる
船木誠勝
AKIRA
浅井嘉浩(ウルティモ・ドラゴン)
稔
吉江豊
リッキーフジ
GENTARO
高木三四郎
飯伏幸太
男色ディーノ
永田克彦
尾崎魔弓
コマンドボリショイ
神取忍
立野紀代
ハーレー斉藤
上林愛貴
市来貴代子
日向あずみ
元気美佐江
キューティー鈴木
風間ルミ
紅夜叉
キャロル緑
大沢ゆかり
橋本大地
古館伊知郎
辻よしなり
鍵野威史(J-SPORTS・ESPN 新日本プロレスSXW・実況アナウンサー)
三田佐代子
櫻井康雄(東京スポーツ・取締役)
デイリースポーツ・宮本記者
木戸修
山崎一夫
垣原賢人
三沢威
新倉史裕
保永昇男
レッドシューズ海野レフェリー
新日本プロレス・尾崎リングアナウンサー
健介オフィス・川畑レフェリー
和田良覚レフェリー
リアルジャパンプロレス・平井代表
DDT・松井レフェリー
TV朝日新日本プロレス中継・海谷ディレクター
春一番
川田広樹(ガレッジセール)
大塚直樹
また 多数の弔電が寄せられました
朗読・紹介されたのは
新崎人生・みちのくエンターテイメント代表
獣神サンダーライガー(メキシコ遠征中)
里村明衣子(仙台ガールズプロレスリング)
WOWOWスポーツ部・崎山部長(旧・JWP女子プロレス中継担当)
他