リストラ俳優

「リストラされたからプロの俳優になろうか!」
【四十歳でひとり芝居役者になった普通のお父さん・みぶ真也の自伝】
 プロレス・ファン、演劇ファン、さらには同世代の人たち全てに贈る勇気と希望のメッセージ!
 プロレスに学んだ打たれ強さで演劇界・芸能界へ挑んだ著者が、精魂込めて練り上げたノンフィクション小説の傑作。

「…日本のすべてのお父さんに声をかけてみたい。年功序列も定期昇給もなくなった時代にこそ、諦めたつもりだった夢を叶えるチャンスがあると思う」

処女作『振り返ればいつも負け役』で感動の嵐を呼んだ著者:みぶ真也
57年生まれ。学生プロレス出身。97年よりSF系サスペンス独り芝居の自作自演を始める。

【抜粋】
 一九七〇年当時、日本プロレス界には世界最強のタッグチームがいた。
ジャイアント馬場とアントニオ猪木の通称BI砲だ。

 前年のワールドリーグでクリス・マルコフを破り初優勝した猪木がエースの馬場に挑戦を表明してから、特にこのチームは「互いに喰ってやろう」という意識が見え隠れして見る者に緊張感を伝えたものだ。

 頼れるのは自分一人…
 馬場・猪木共そんな思いでリングに立っている悲壮感を漂わせていた。

 期待と不安を持って中学に入学したばかりのぼくにはBI砲の持つ「これから何かが起きそうな」オーラほど魅力的で共感出来るものはなかった。

 リングに上がった馬場さんは、サンマルチノを、ブラジルを、エリックを、ブルーザーを、デストロイヤーを倒した全盛期そのままだった。自分がプロレスに親しんだ頃、誰よりも強かった馬場さんが帰って来たのだ。

 試合結果はハンセンと互角の引分防衛だったが、内容は馬場さんの圧勝だった。
馬場さんはあの頃を取り戻した。

 じゃ、ぼくもあの頃、マーロン・ブランドに憧れた頃を取り戻せるのでは…
 青春の夢が幻想なのではなく、今の生活が幻想なのではないだろうか。
 ぼくは自分の表現の場を探した。

 ぼくが手本にしたのは、アメリカ国内をサーキットする世界チャンピオンの試合ぶりだ。ハーリー・レイスにしろニック・ボックウィンクルにしろ、地元のヒーローに花を持たせ最後には反則防衛でタイトルを守る。「今度来たら必ず…」とファンに思わせながら。

 地元の劇団、役者さんの魅力を引き出しながら、みぶ真也の芝居が来たらまた観てみたいと思わせて去るというチャンピオンの駆け引きを覚えたのもこの時があったからだ。

 ミュージシャンやダンサーなど、異なる表現者と同じステージに招かれたのもいい経験だった。初期の頃は東京のAja(アヤ)さん、宮入恭平さん、愛知の杜田龍神さん達とコラボしたものだ。

 演劇と音楽、言わば異種格闘技戦だ。

リストラ俳優

商品コード mibushinya002

価格 315 円

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