今週の「マット界舞台裏」は、テレ朝とは違う猪木VSアリの舞台裏に迫る!

09.02.12BUTAIURA.jpg 多くのプロレスファンが見たであろう7日にテレビ朝日で放映された『テレビ朝日が伝えた伝説のスポーツ名勝負~いま明かされる舞台裏の真実~』。
 この番組の中で、1976年6月26日に日本武道館で行われた“格闘技世界一決定戦”アントニオ猪木VSモハメド・アリの世紀の一戦が、33年ぶりに全ラウンド放映されたのだ。ダイジェストとはいえ、この一戦が15ラウンドフルで放映されるのは希なこと。
 しかも番組タイトルには「いま明かされる舞台裏の真実」というサブタイトルがつけられ、猪木をはじめとする関係者へのインタビューも放映されるということだったので、ワクワクして放映を待っていたファンも多いだろう。
 ところで、昨年話題になった『1976年のアントニオ猪木』(柳澤健・著/文藝春秋刊)という本も、多くのプロレスファンが読んでいると思う。
 この本の中で、猪木VSアリにかんしていろいろと取材をした結果、猪木が主張している「私にとってがんじがらめのルールだった」という事実はないと書かれている。
 さらに当時猪木のマネジャーとして、アリ戦実現に奔走した“過激な仕掛け人”新間寿氏も、著書などで「がんじがらめルールのことは東スポに書かせただけで、実はそんなことはなかった」というようなことを書いているし、同じようなことを“シュート活字”で知られるタダシ☆タナカ氏が、ずいぶんと前から様々な媒体で書いている。
 つまり、当初猪木VSアリの“舞台裏の真実”は、猪木の公開練習を見たアリ側が「プロレス技禁止」「立った状態での蹴りの禁止」を要求し、「このルールを飲まない場合は、試合をキャンセルして帰国する」と言われた猪木側はがんじがらめルールを飲むしかなかったが、試合当日そのことは観客はもちろん、実況アナウンサーにも知らされていなかったと言われてきたが・・・
 実はがんじがらめルールというのは、“猪木側だけ”が言っていることで、結局のところ猪木とアリがお互いに絶対に負けられない状況の中、真剣勝負をした結果、観客や視聴者が期待するような派手な展開にならなかっただけの話・・・という結論に落ち着いていた。
 ところが7日に放映されたテレビ朝日の特別番組は、ひと昔前に“舞台裏の真実”と言われていた「がんじがらめルール」のほうを採用してそのまま放映! 驚いたことに「がんじがらめルールなんてなかった」と言った張本人である新間氏までもが、番組のインタビューに応じ、さもがんじがらめルールがあったような発言をしていたのだ。
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 こうなってしまっては、一体どっちが真実なのかは分からない。新間氏はコロコロ発言を変えるし、猪木はがんじがらめルールだったことを主張し続け、アリは決して何も言わない。あとは読者諸君が各々文献などを参考にして判断するのが一番だろう。
 そこで1つの参考文献になると思われるのが、今週の『マット界舞台裏』だ。著者の井上譲二記者は当時、『週刊ファイト』の準スタッフとして現場で取材をしている。その取材の中で、すでにアリ戦の“2カ月前”から猪木が寝っ転がって蹴り(俗に言うアリキック)の練習している姿を目撃していたり、新間氏が試合前日の“囲み会見”の中で、「猪木はアリ側の要求するルールでがんじがらめ」と主張していた様子を取材している。
 そういった独自の取材のもと、実際に会場で試合を見た井上記者は猪木VSアリ戦をどう見たのか・・・その辺はぜひ今週号をご覧いただきたい。
 また、ファイト!ミルホンネットでは、猪木VSアリについて書かれた作品がほかにもあるので、合わせてご購読いただければと思う。
週刊マット界舞台裏'09年2月12日号
タダシ☆タナカ:76年猪木対アリ異種格闘技戦の真相『マット界の黙示録☆真正文化史』②
栗山満男: プロレスファンを熱狂させた異種格闘技戦の真実:『ワー・プロを創った男』④
闘竜 会報 第183号「柳澤健への挑戦状」
栗山満男: 世紀の一戦モハメッド・アリ戦の裏で 「ワー・プロ」を創った男③