『美城丈二の“80’S・プロレス黄金狂時代 ~時代の風が男達を濡らしていた頃”』

 Act⑨【書評・猪木と馬場の“確執”】
 *栗山満男氏の著作を読ませていただいて
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  ⇒『ドキュメント 馬場・猪木 シングル対決への道㊤』
  ⇒『ドキュメント 馬場・猪木 シングル対決への道㊦』
 G・馬場、A・猪木。このふたりのライバルとしての“闘争”は往年のプロレスファンの誰ひとり、預かり知らぬ“闘争”では無いであろう。日本プロレス時代から連綿と続くかと思われたライバル“闘争”も馬場氏が鬼籍のひととなり、猪木氏がリングから引退して久しい今、既に語りつくされた感もある。
 だが、未だに多くの識者によってそう、語りつくされた感のあるふたりの“闘争”劇も実際にこの両名に直接、身近に接せられた方の語り口ともなると迫真性は急激に“真相”に近づく。
 
 以前、氏の著作を紐解かせていただいた記憶があるが、今回、改めてミルホン・ネット版の氏の著作をダウンロードし、読ませていただいた。
 
 氏はテレビ朝日(旧・NET)の『ワールドプロレスリング』のプロデューサーを勤められ、長年に渡り、多くのリング絵巻に携われてこられた。
 そんな氏が、馬場・猪木、8年振りのB・Iタッグ結成に時のファンが固唾を飲んだ『79’夢のオールスター戦』直後からのB・Iシングル対決に向け、奔走なされた経緯を事細かに述べられた記述物がこの『ドキュメント 馬場・猪木 シングル対決への道㊤㊦』巻である。
 猪木氏が栗山氏に提示した馬場氏に対する、条件。馬場氏が了承するうえにおいて“逆提示”した、条件。僭越なる物言いとは思うが、事細かに書かれた筆文からはこの手の記述物にありがちな“虚飾”が感じられず、流石に往年の両名に「栗さん」と慕われた方の記述物には先を争って読ませるだけの信憑性、その“横溢感”が感じられた。
 ところどころで登場する人物たちが訥々と語られておられる、「猪木は信用ならない」という一語にはかつて猪木信者を自負して止まなかった筆者においては改めて考えさせられるものがあるが、猪木氏とて当時のプロレスファンのまさに“夢”を具現化しようとし躍起になった、その姿勢にはやはり未だに敬意を称すべきものがある、とも感じた次第。
 時代はいまや平成も20年を経て、時の馬場・猪木“闘争”も回顧の域に入ってしまったが、めくりめくプロレス格闘浪漫を思うとき、この両名の水面下における駆け引きを記述物として納められた氏の著作には“資料性”という観点からも価値が高いと思う。
 「歴史がひとを語るのでは無く、ひとが歴史を語る」時、この一文は誠に“輝石の一文”であろうとも考えられる。筆者、一読お勧めの“一冊”です。
 美城丈二・ミルホンネット「書評の頁」
  ⇒井上義啓『猪木は死ぬか!Digital Remaster版について』
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