[週刊ファイト12月18日期間] [ファイトクラブ]公開中
▼UFC323:王者交代の大波乱とともに平良達郎がモレノを完封TKO
photo:© Zuffa LLC/UFC by 野村友梨乃
・UFC323で歴史が動く:フライ級の支配構造が一夜で崩壊
・無敵王者メラブ陥落:ヤン、3年越しのリベンジで再び頂点へ
・パントージャの牙城、予期せぬ形で決壊:ヴァンが玉座を強奪
・ギブミータイトルショット!平良が堂々TKO勝利でタイトル戦確定圏へ
・勢い止まらぬUFCフライ級日本人勢:タイトル戦線支配開始
▼UFCドーハ熱狂:堀口恭司、9年ぶり復帰で絞殺決着の帰還劇
UFC323で歴史が動く:フライ級の支配構造が一夜で崩壊
2025年12月6日(日本時間7日)、アメリカ・ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで『UFC 323: Dvalishvili vs. Yan 2』が開催された。わずか2週間前のカタール大会に続き、UFCは完全に“名勝負乱発モード”。アーリープレリムから既にKO・TKOが飛び交い、ラスベガスの夜は冒頭から熱狂のボルテージが振り切れていた。
そしてこの夜、全世界の視線を最も集めていたのが――同級5位・平良達郎とブランドン・モレノの一戦だ。元王者で現2位、フライ級の絶対的トップ層に君臨するモレノを相手に、平良は“真価を問われる最初の大勝負”へ挑んだ。その答えは、想像を遥かに超える形で叩きつけられた。平良達郎、2RパウンドアウトでモレノをTKO。
元王者を正面からねじ伏せたこの勝利は、フライ級戦線の構図を一撃で書き換える衝撃だった。会場は瞬時に爆発し、平良の名は“次期タイトル挑戦最有力”として一気に全世界へ鳴り響いた。
だが、この夜のフライ級に待っていたのは、それだけでは終わらない“さらなる衝撃”だった。続くフライ級王座戦――王者アレッシャンドレ・パントージャ vs ジョシュア・ヴァン。これがまさかの、ジョシュア・ヴァンによる負傷TKO勝利。新王者誕生。
T-モバイル・アリーナは騒然。パントージャの牙城が思わぬ形で崩れ、フライ級の玉座は一夜にして混迷と新時代の予兆を帯びてしまった。
“2位攻略”を果たした平良達郎。そして“王座奪取”を成し遂げたジョシュア・ヴァン。この2つの結果が重なったことで、フライ級は完全に新章へ突入した。ただひとつだけ確かなのは、平良達郎のタイトル挑戦は避けられない現実として到来したということだ。
UFC323は、“倒し合いの嵐”と“王座交代の衝撃”が交錯した、2025年フライ級最大級のターニングポイントになった。

▼覇権争奪の血闘、UFC322新王者誕生、王者防衛、新星覚醒の三重奏
無敵王者メラブ陥落:ヤン、3年越しのリベンジで再び頂点へ
【メインイベント】
UFC世界バンタムタイトルマッチ 5分5R
●メラブ・ドバリシビリ(ジョージア)王者 21勝5敗(UFC14勝3敗)
[判定0-3]
〇ピョートル・ヤン(ロシア)挑戦者 20勝5敗(UFC12勝4敗)
バンタム級タイトルマッチは、UFCが誇るトップ中のトップ──王者メラブ・ドバリシビリと元王者ピョートル・ヤンの、約3年ぶりとなる宿命の再戦。ドバリシビリは14連勝中、1年間で4度のタイトル戦に勝利するという“人間離れしたモンスター王者”。一方のヤンはスターリング戦の反則失格から転落し、3連敗まで経験したものの、そこから3連勝で再びタイトル戦へ戻ってきた。両者の物語が真っ向からぶつかり合った一戦だった。

試合は序盤からメラブがいつも通り果敢に前に出て圧をかけ、打撃と組みを織り交ぜながらペースを握ろうとする。しかし今回は、ヤンの対応がこれまでとは別次元だった。フットワークで角度を変えながらジャブとミドルで迎撃し、組まれてもすぐに正対して“倒され続ける地獄”を完全に拒否。反撃のタイミングも正確で、打撃の質と判断の速さでメラブを上回っていく。
メラブの前進は相変わらず止まらなかったが、ヤンは丁寧に迎撃し、試合の流れはラウンドごとにヤンへ傾いていった。鉄人のメラブでさえ、ヤンのボディとミドルで動きが鈍る場面が見え始め、組みでも優位を作れず、王者として積み上げてきた“絶対的な強さ”がわずかに崩れていく。手数と気迫はメラブが勝っていたが、精度・有効打・試合支配率は明確にヤン。最後まで激しく攻め合ったが、試合全体の印象は挑戦者ヤンが握り続けた。

結果は0-3の判定でピョートル・ヤンの勝利。長い下り坂を経験し、そこから再び頂点に返り咲くという物語は、UFCでもそう簡単に生まれない大逆転劇だった。スターリング戦から迷走し、倒れ、迷い、そこから立ち上がったヤンの帰還は、まさに“本物の王者”の証明だった。
試合後、ヤンはベルトを巻いたまま静かに語った。「ラスベガスありがとう。ベルトを巻いてここに立ててうれしいよ。ファンのみんなに感謝したい。このための自分の人生だ。ダナ、UFCありがとう。UFCは自分の人生を変えたんだ。」
一方、敗れたメラブも爽やかに前を向く。「おもしろい試合をしようと思ったんだ。でも負けた。ヤンおめでとう。でもすぐリマッチしたい。レスリングだけでつまらない試合にはしたくなかったから、あえて打撃で勝負した。今回はヤンのほうがすばらしかった。まだまだこれからだ。」
二人の再戦は、ヤンの再戴冠という最高のドラマで幕を閉じた。バンタム級はさらに混戦へ突入し、この階級の2026年はますます見逃せないものになるだろう。

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▼格ヲタ似顔絵師 ケーシーの四コマ漫画劇場:UFC世界フライ級5位!平良達郎
パントージャの牙城、予期せぬ形で決壊:ヴァンが玉座を強奪
【コメインイベント】
UFC世界フライ級タイトルマッチ 5分5R
●アレシャンドレ・ パントージャ(ブラジル)王者 30勝5敗(UFC14勝3敗)
[1R 0分26秒 TKO]
〇ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)挑戦者 15勝2敗(UFC8勝1敗)

フライ級を4度防衛し、“絶対王者”として階級の頂点に君臨してきたアレシャンドレ・パントージャ。対するは、24歳にしてUFC5連勝中、爆発的な勢いでトップ戦線へ駆け上がってきたジョシュア・ヴァン。技術、経験、完成度で勝る王者と、怖いもの知らずの若き挑戦者──フライ級の未来を左右する一戦になるはずだった。

だが、試合は誰も想像しなかった形で幕を下ろす。1R開始直後、パントージャが距離を詰めて右ローを放ち、組みに入りながら右ハイへ繋げた瞬間、その蹴り脚をヴァンが肩口で受け止め、そのまま前に崩すように倒した。その際、マットに着いたパントージャの左ヒジが不自然に曲がり、激痛で即座に「続行不可能」の合図。ヴァンも追撃を止め、レフェリーが即座にストップをかけた。
公式記録は1R 26秒、ジョシュア・ヴァンのTKO勝利。T-モバイルアリーナは静寂に包まれ、リプレイが映し出されると会場全体がざわつく。直前の試合で勝利した平良達郎も驚きを隠せない表情だった。誰もが衝撃を受けた“王者の負傷決着”だった。
試合後、ヴァンは淡々と語る。「神に感謝したい。ミャンマーのみんな、世界のみんなに自分の存在を示すことができた。パントージャがケガした瞬間は気づかなかった。パウンドに行くつもりだったけど、レフリーが止めに入ったんだ。誰が相手でも構わない。次も勝ちに行く。」
この夜ばかりは、勝者ヴァンよりも、王者パントージャの無念が胸に突き刺さった。実際のところ、パントージャは技術でも経験でも一枚も二枚も上。多くのファンや識者が今回も王者の勝利を予想していた。だが、タイトルマッチも結局は“真剣勝負”。わずか一瞬の着地、運動の流れ、相手の重心──そこに不運が重なればチャンピオンですら抗えない。今回の勝敗は事実として受け止めるしかない。だが、“実力の決着”でなかったこともまた、紛れもない現実だ。
もしアクシデントがなければ。もし5Rフルで戦っていれば。誰もがそんな想像をしてしまうほど、あまりに突然で残酷な決着だった。パントージャのヒジが完治したなら、同じカードを“正当な形”で見たいと思うのは自然なことだろう。王者として失ったものを取り返すためにも、挑戦者ヴァンが本物であることを証明するためにも、再戦は必ず実現すべきカードだ。フライ級の歴史が予期せぬ形で動いた夜。だが、この物語はまだ終わらない。

▼海外情報局.846 UFCベガス111ONE二大会欧州MMA-TNA-CMLL