[週刊ファイト6月12日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼急転直下の杉浦貴ヒールターン! NOAH25周年下期起爆剤なるか?
photo & text by 鈴木太郎
・やや落ちたノアの勢い立て直す大会
・55歳一兵卒の杉浦ヒールターン
・『鈴木軍』時代とは異なる立ち位置
・ユニット抗争のジョーカーになれるか?
・小峠篤司デビュー20周年スペル・デルフィン撃破で華飾る
・主役でもデルフィン立てた小峠の良さ
・稲葉大樹&征矢学GHCタッグ王座戴冠! 拳王まさかの敗戦
・内容面で課題アリも、稲葉は王座獲得で復調なるか?
・YO-HEY宮脇撃破で連敗ストップ! GHC Jrヘビー王座V2
・小川引退後のテクニック重視からの転換象徴したノアJr一戦
・サバイバル3WAYが舞台装置だったGHCヘビー級王座戦
・序盤の予想一気に覆した杉浦の謀反
・Tシャツ変わらずで拭えなかったブラフも・・・
・周囲から飽きられない事が何よりも必要になってくるノア
■プロレスリング・ノア『STAR NAVIGATION 2025』
日時:2025年6月3日(火) 18:30開始
会場:東京・後楽園ホール
観衆:1,233人
旗揚げ25周年イヤーが早くも折り返し地点に差し掛かったプロレスリング・ノア。現GHCヘビー級王者のOZAWAがノアの中心を統べる流れは今後も続きそうな一方で、元日からノアに味方した最大風速の追い風が徐々に弱まりつつあることも筆者は実感している。5・31新宿FACE大会からスタートした、ノアの関東圏内4連戦の最終日に行われた今回の後楽園ホール大会は、当日の雨にもかかわらず約1,300人が来場した。
2024年までのノアでは考えられなかった動員数であるが、2025年に限れば、完売が続出していたノア後楽園ホール大会において、現時点で最も少ない観衆となった。勿論、今回は平日開催で、前述のように連戦が立て込んでいた事情も考慮する必要はあるだろう。ただ、遠藤哲哉と杉浦貴がOZAWAに挑戦したGHCヘビー級王座戦など、後楽園ホールで3大GHC王座戦を並べてきた陣容を加味すれば「勢いはやや落ちた」という不安は否めない。
▼別ブランド興行でも勢いホンモノ! ノア『MONDAY MAGIC』新期初回
しかし、今大会は2025年下半期に向けて勢いを戻す内容になったと筆者は感じている。
その最たる事案が、杉浦貴の『TEAM 2000X』加入だろう。杉浦にとっては2016年12月以来、実に9年振りのヒールターンとなった。
前回のヒールターンは、鈴木みのる率いる『鈴木軍』がノアマットを侵攻していた時期と重なる。2015年12月のノア大田区総合体育館大会において、鈴木みのるからGHCヘビー級王座を奪還することに成功した丸藤正道。その丸藤の至宝奪還を祝福に訪れた盟友・杉浦貴が、突如丸藤を急襲すると、鈴木みのると肩を組んで衝撃の『鈴木軍』入りを果たした。
翌2016年1月のノア横浜文化体育館大会で、丸藤の持つGHCヘビー級王座に挑戦した杉浦は、この一戦に勝利した事でベルトを一発で戴冠。5月の大阪大会で潮崎豪に敗れたことにより、約2ヶ月間無冠だった時期こそあるものの、『鈴木軍』シーズン2を最前線で牽引していった。その後、同年10月末に中嶋勝彦に敗れてGHCヘビー級王座から陥落すると、12月には鈴木みのるを裏切る形で『鈴木軍』から離脱。程なくして『鈴木軍』もノアから撤退したのであった・・・。
『鈴木軍』離脱後は清宮海斗や拳王と共闘するも、心臓手術により長期欠場を経験。翌2018年に復活のGHCヘビー級王座戴冠を果たすと、翌2019年3月に『杉浦軍』を結成。活動休止となった2023年4月までの約4年間をユニットの頭領として過ごし、その後はユニットに属さずノア本隊で活動していた。
ノアでは丸藤正道と共に、旗揚げから25年間一度も団体を離脱していないオリジナルメンバーによる電撃ヒールターンだったが、『鈴木軍』時代と明確に異なるのは、杉浦の立ち位置だろう。杉浦が『鈴木軍』にいた1年間は、鈴木みのるという絶対的なボスがいたものの、みのるが一歩退く形で杉浦がノア侵攻2年目の中心に立っていた。
一方、今回のヒールターンは、『TEAM 2000X』で今のノアの動員増に大きく寄与しているOZAWAがトップに君臨しており、杉浦は”ゴットファーザー”の異名をOZAWAから受けたものの、あくまでも同ユニットにおけるメンバーの一員でしかない。長期欠場となった2017年を除き、毎年のようにGHC王座を保持してきた杉浦だが、年齢を感じさせないファイトを見せる杉浦でも、流石に以前より衰えが見られてきた事も確かだ。だからこそ、5・31に55歳を迎えたばかりの杉浦が、一兵卒としてヒールターンを果たした事実は非常に刺激的なものとして筆者には映る。
この日、『TEAM 2000X』と抗争を展開してきた征矢学やYO-HEYが属している、『情熱ラーテルズ』の征矢学と稲葉大樹がGHCタッグ王座を獲得した。今後防衛ロードを歩む中で、『TEAM 2000X』の存在を無視することは出来ないだろう。また、杉浦が過去に2度戴冠を果たしたGHCナショナル王座も、これまた『TEAM 2000X』と敵対関係にある『ALL REBELLION』のガレノが現在保持している状況だ。杉浦が王座戦線に絡む可能性は十分にあり得るだろう。
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毎年恒例で優勝者がGHCヘビー級王座に挑戦するシングルリーグ戦『N-1 VICTORY』も、2025年は例年の8月開幕から9月開幕へと後ろ倒しになったことから、リーグ戦までの約2~3ヶ月で誰が挑戦者に名乗りを挙げるのか読めない状況だ。
恐らく、7月の後楽園ホール大会2連戦や、8月のカルッツかわさき大会で防衛戦は行われるのだろうが、ここで何かしらの仕掛けや刺激は欲しかった。だからこそ、杉浦のヒールターン劇はノア25周年イヤー下半期の起爆剤であり、嚆矢なのかもしれない。
小峠篤司デビュー20周年スペル・デルフィン撃破で華飾る
<第4試合 小峠篤司デビュー20周年記念試合 シングルマッチ>
○小峠篤司
9分53秒 キルスイッチ⇒エビ固め
●スペル・デルフィン
2025年にデビュー20周年を迎えた小峠篤司が、スペル・デルフィンとの一騎打ちに臨んだ。試合後にデルフィン本人も「俺も久しぶりのシングルマッチやってん。まだまだ動けるっていうデルフィンを後楽園の皆さんに見てほしかった」と語っていたが、周年の主役ながら、小峠が動きの部分で先輩をアシストしていた印象が強い。
それでも、最後は小峠がニーアッパー⇒片山ジャーマンスープレックスホールドと盟友・原田大輔のコンボ技を放つと、仕上げのキルスイッチで3カウント。試合後にはデルフィンから直接デルフィンマスクを手渡されると、童心に帰ったかのようにマスクを被ってプレス向けの記念撮影に応じていた。師匠からの激励に小峠は「もう一回テッペン獲りにいきます」と目標を掲げたのである。