[週刊ファイト1月2日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼「猪木対マサ斎藤」巌流島での死闘とその象徴となった櫂が話題に!
編集部編
・巌流島決戦の舞台裏――猪木とマサ斎藤が交わした闘いの約束
・試合形式と独自ルール――プロレスの枠を超えた異次元の戦い
・闘いの記録――嵐の巌流島で繰り広げられた死闘
・櫂が語る物語――猪木が手にした伝説のアイテム
・プロレスの枠を超えたメッセージ――巌流島決戦が残したもの
▼A・猪木を中心に新日OBの間で“再会ラッシュ”も全員集合にはならず
by 井上譲二
▼井上譲二の『週刊ファイト』メモリアル第67回
▼猪木vs.バックランドWWF戦の怪!結末も記録も不透明過ぎる2連戦
▼アントニオ猪木を語り継ぐ意義!SPトーク・ヴァリューと猪木探しの旅へ
▼『アントニオ猪木』という人生~What’s Anton?
1987年、アントニオ猪木とマサ斎藤が巌流島で繰り広げた「巌流島決戦」は、プロレス史における最も伝説的な試合のひとつとして語り継がれている。この試合で猪木が持参した「櫂」は、試合の象徴ともいえるアイテムとして注目を集め、その後も長くファンの間で語られてきた。そして2024年12月3日、テレビ東京系列の「開運!なんでも鑑定団」で、この櫂が200万円の価値を持つことが明らかにされ、再び話題の中心となった。そこで、その巌流島決戦の背景や試合のドラマを振り返りたい。
巌流島決戦の舞台裏――猪木とマサ斎藤が交わした闘いの約束
プロレス界の伝説に刻まれた1987年の「巌流島決戦」は、アントニオ猪木とマサ斎藤という二人の戦士がそのキャリアを賭けて挑んだ壮絶な一戦であった。この試合は、巌流島という異例の舞台で行われた点だけでなく、背景にある両者のライバル関係と特異なストーリー性からも、プロレス史において特別な位置を占めている。
アントニオ猪木とマサ斎藤の関係は、単なるリング上の対戦相手にとどまらない。猪木は新日本プロレスを立ち上げたカリスマ的存在であり、数々の異種格闘技戦を通じてプロレスの可能性を広げてきた。一方のマサ斎藤は、アメリカで活躍した後、国内プロレス界でもその実力を証明した存在である。彼は猪木に対抗する選手として、新日本プロレス内で存在感を発揮し、時に団体内外で激しい抗争を繰り広げた。
両者が対峙するたび、試合はリング上の単なる技術の応酬ではなく、心理戦や人生そのものを賭けたドラマとなった。特に1987年、猪木が自身のキャリアにおけるさらなる挑戦を模索していた時期に、この巌流島決戦が設定された。
巌流島は、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘の地として日本史に名を刻む場所である。その象徴性を背景に、猪木はリングを飛び出し、戦いの新たな形を模索した。リングの枠に収まりきらない二人の闘志を表現するためには、異次元の舞台が必要だったのだ。
巌流島が選ばれた理由には、猪木の「リアルファイト」を追求する精神が大きく影響している。従来のリング上での戦いではなく、自然の中での闘いを通じて、真の強さを証明したいという彼の思いが込められていた。また、この試合は猪木にとって、プロレスの枠を超えた新たな挑戦の象徴でもあった。
この試合において、猪木とマサ斎藤は互いの全てを賭ける覚悟で臨んだ。リングという制約を取り払い、自然の中で素手で戦うという過酷な条件下で、試合形式はノーロープ、ノールール、時間無制限という極限のルールが設定された。ここには、二人が互いの強さと誇りをかけて戦い抜くという信念が表れている。
また、試合前の二人の発言や行動からは、ライバルとしての尊敬と戦士としての意地が感じられた。マサ斎藤はアメリカ仕込みのスタイルを活かし、猪木に真正面から挑む構えを見せた。一方、猪木はこの戦いを通じて、自身のプロレス哲学を証明しようとしていた。
巌流島決戦は、プロレスというジャンルを超えた壮大なイベントであり、その舞台裏には猪木とマサ斎藤が積み重ねてきた歴史と情熱が詰まっている。二人の戦士が巌流島という特別な舞台で織り成す物語は、プロレスファンだけでなく、多くの人々の記憶に刻まれ、今なお語り継がれている。
この試合は、単なる勝敗を超えた人間ドラマであり、スポーツエンターテインメントの新たな可能性を示した金字塔といえるだろう。
試合形式と独自ルール――プロレスの枠を超えた異次元の戦い
1987年に行われたアントニオ猪木とマサ斎藤の「巌流島決戦」は、プロレスの既存の枠組みを大きく超えた試みであった。その根底には、リングという限られた空間から飛び出し、より原初的でシンプルな闘いを追求するという意図があった。試合形式とルールの設定において、これまでのプロレスには見られなかった独自性が色濃く反映されている。
巌流島決戦の最大の特徴のひとつは、リングからロープが完全に取り払われた「ノーロープ」形式であった。ロープは通常、プロレスの戦略や試合運びの重要な要素であり、選手が攻防を展開する上で欠かせない存在だ。しかし、この試合ではロープを廃することで、選手があらゆる方向へ自由に動ける環境が用意された。
ノーロープ形式は、リング上での戦いという制約を超え、広大な自然環境そのものを試合の舞台とする狙いが込められていた。猪木と斎藤の闘いは、地面や砂浜といった自然の地形を活かした攻防が繰り広げられ、これまでのプロレス観を大きく覆すものだった。
この試合のもうひとつの特徴は「時間無制限」という設定であった。通常のプロレスでは試合時間に制約が設けられ、選手たちはその時間内で勝敗を決する必要がある。しかし、この試合では時間という制約すら取り払われ、両者が限界を超えるまで闘い続けるという極限のルールが採用された。
時間無制限という形式は、選手の体力や精神力を試すだけでなく、真の勝者を決定するための純粋な手段とされた。闘いが長時間に及ぶことで、観客は両者の覚悟と闘志をより深く感じ取ることができ、試合そのものがドラマティックな展開を生むこととなった。