12月14日、新日本プロレス他で活躍された木戸修さんが令和5年12月11日午後10時頃、神奈川県横須賀市の病院で、ご家族に見守られながらお亡くなりになったという一報が入った。
あまり表にも出てくる事が無く、この11月に東京で行われた“アントニオ猪木を語り継ぐ会”に当初はお名前があり、是非お話を聞きたかったが体調不良により欠席された矢先の事である。
忘れもせぬ1972年5月11日、大阪府立体育会館で行われた新日本プロレス旗揚げオープニング第二弾シリーズにおいて、ようやく大阪の地で新生“新日本プロレス”の興行を観戦することができた。
アントニオ猪木が前年末、日本プロレスを追放されて以来の関西初登場となる。
日本陣営は豊登、山本小鉄、魁勝司、柴田勝久、藤波辰巳、浜田広秋、そして木戸修がいた。
その日は新聞等の発表では5000人と発表されていたが、実際は水増し発表されていた上、テレビ放送も無く薄暗い館内ではあったが、新生団体の試合は１試合目から熱い試合が続いた。
昭和47年5月11日大阪府立体育会館至 対ティンガー・トッド戦
この日、第3試合30分1本勝負で木戸修はロンドン出身のティンカー・トッドと対戦、地味ながらもコツコツと努力を重ねたファイトぶりが光っていた記憶が蘇る。
プロレス入りのきっかけは日本プロレスに入門した兄である木戸時夫が小鹿選手と練習中、仕掛けたヘッドロックがすっぽ抜けて、脊髄と神経をやられてデビューすることなくプロレスを断念して引退。その意思を引き継ぐ為、日本プロレスに昭和43年10月10日入門。昭和44年4月21日、プロレスブーム最中の『第11回ワールド大リーグ戦』後楽園ホール、北沢幹之戦においてデビューを飾る。
5か月間、カール・ゴッチにガッチリしごかれてのデビュー。試合後ゴッチは“あの男はきっと大成する。デビュー戦で全くあがらなかったし、実にいいファイトをやってのけた。教えがいがあり素質のあるレスラー”だと絶賛した。
さらに昭和44年6月号の専門誌に面白いインタビュー記事を発見した。当時巡業に行かない若手選手は連日、東京はエムパイヤ・ジムの“ゴッチ道場”において、ゴッチとともに鬼軍曹こと大坪清隆の指導の元トレーニングを行っていた。
その大坪氏へのインタビューにおいて「これからのレスラーの体格は？」との質問に、「ミスター・ゴッチは割と小さいのが好きだ。柔道好きのゴッチは、ちいちゃい者がどでかい者をやっつける柔より剛を制すというのが好きで177センチ、90キロ級の木戸修なんかに力をいれている」との興味深い発言がある。
この当時から、カール・ゴッチと木戸修のレスリング師弟関係においての相思相愛が感じとれよう。
前座から中堅の試合を着実にこなし、昭和50年には藤波辰巳とヨーロッパ初遠征。西ドイツの国際トーナメントに参加するなどキャリアを積み重ねた後、本場アメリカに渡り、フロリダ州タンパにある最も尊敬するカール・ゴッチ道場に入門。それはその後の木戸の運命に大いなる影響を与える事になる。
凱旋帰国後も相変わらず地味ながら、喜びを表に表さず、黙々と練習を続け中堅戦線で活躍する。しかし師匠ゴッチの勧めで旧UWFに参戦したが会社が崩壊、新日本にUターン後は実績を積み重ねる毎に、時代の流れかそのファイトぶりがファンに認められ大活躍する事となる。
今回の突然の訃報を聞き、昭和のプロレスが終焉に向かっている現実を実感して深い悲しみの中にいる。心より木戸選手のご冥福をお祈りします。
近年では2020年2月28日、武藤敬司プロデュース PRO-WRESTLING MASTERの『燃える闘魂60周年メモリアルセレモニー』に姿を見せていた。
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