[ファイトクラブ]電流爆破+4大王座戦もビッグマッチ感皆無なDDT大田区総括

 『秋のビッグマッチ』と銘打たれた9・9DDTプロレスリング大田区総合体育館大会は、電流爆破に4大王座戦が並ぶカードとは対照的に、今一つビッグマッチの雰囲気に欠ける要素が感じられた。最高峰のKO-D無差別級王座戦線よりもEXTREME級王座や6人タッグ王座のカードが目立つ今だからこそ、9・24後楽園の無差別級王座戦『クリス・ブルックスvs.赤井沙希』は、会場支持の高いクリスと赤井引退ロードの勢いの融合で巻き返す事が出来るのだろうか? DDT大田区の全試合を総括する。


[週刊ファイト9月21日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼電流爆破+4大王座戦もビッグマッチ感皆無なDDT大田区総括
 photo & text by 鈴木太郎
・ビッグマッチの雰囲気削いだ、スクリーン無しの悲劇
・実験色と赤井引退ロード軸で探り入れた大田区
・『クリス・ブルックス-入江茂弘』 無差別級激闘も順当にKO-D王座防衛
・上野勇希37KAMINA残留、TAKESHITA海外続行も棚上げの処遇課題
・TAKESHITAの活躍カギはDDTの扱いにあり?
・藤田ミノル&KANON、Ω(火野裕士&大石真翔)撃破でタッグ王座戴冠!
・秋山準-大仁田厚電流爆破6人タッグ決戦4発爆破で大仁田組が制す
・3分間シングルで決着つかず勝利逃した秋山の不覚
・6人タッグ王座戦Eruption防衛も満足度削ぐ”技受けない”1選手
・女子選手の【技受ける・受けない】で付けた差
・難敵・土井成樹撃破!平田一喜11・12両国高橋ヒロムとシングル決定
・ヒロム対戦相手に平田ぶつけたDDTに筆者納得のワケ
・6人タッグの火花散るマッチアップ「樋口和貞-納谷幸男」相撲パワー戦
・副社長・彰人が飯野“セクシー”雄貴下す!人気フェロモンズ解散決定
・若手躍動Opening Matchもベテラン・高梨将弘が好連携で夢虹撃破!


■DDTプロレスリング 『DDT BIG BANG 2023』
■日時:2023年9月9日(土) 16:00開始
■会場:東京・大田区総合体育館
■観衆: 1,363人

 11月に行われる両国国技館大会前最後となった、大田区総合体育館でのDDTビッグマッチ。『秋のビッグマッチ』と銘打たれた今大会では、KO-D無差別級王座を含む4大王座戦に加え、電流爆破マッチで秋山準と大仁田厚の激突、先日AEWにてケニー・オメガから勝利を挙げた竹下幸之介が上野勇希やMAOと激突するタッグマッチなどが組まれたものの、大型スクリーンが今回は設置されず、全カード発表も兼ねた煽りVTRも無し。ビッグマッチ形式ながら、地方大会のような開始前にカードをリングアナが発表する形式だった事は、両国に比べて今大会の力の入れ方が弱い事を印象付けてしまった。

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 内容に関しても、関東圏のビッグマッチながら比較的挑戦の趣が強いものになっていた事も、通常のDDTビッグマッチとは明らかに異なる色合いを表していた。幾度となくユニット解散が賭けられながらも生き延びてきた人気ユニット・フェロモンズは遂に解散。DDTでは初となる【KO-D6人タッグ王座&全日本プロレス6人タッグ王座】のダブルタイトルマッチも、2022年よりレギュラー参戦中のKANONが自ら試合を決めて同王座初戴冠を果たしたKO-Dタッグ王座戦も、実験色や新たなるチャレンジを感じられるものだった。そんな中、最後を締めた『クリス・ブルックスvs.入江茂弘』によるKO-D無差別級王座戦は、互いの存在を小細工無しでぶつけ合う、メインに相応しい内容となった。

 とはいえ、11月に控える赤井沙希引退に向けた引退ロードが今のDDTの軸になっている事で、無差別級戦線が霞んでいる感は否めない。東京女子プロレスも旗揚げしたばかりの時期から10年以上にわたってDDTグループの女子戦線を支えてきた功労者である以上、この流れは当然で「致し方ない」と言ってしまえばそれまでなのだろう。だが、今の王座戦線やカードの組まれ方に関しては、最高峰の無差別級王座よりも、平田一喜の持つEXTREME王座や、赤井が保持する6人タッグ王座の方がカードの組み合わせでも話題を作っている現状は否めない。
 
 ファンの支持率を確固たるものにしつつある流れから、今年7月の両国国技館大会で無差別級王座を戴冠したクリス・ブルックスだが、真価を発揮するにもタイミングが悪かった感はある。だからこそ、王座防衛直後にクリス直々に赤井沙希を指名した事は興味深いものを感じた。2021年に行われた両者のEXTREME王座&アイアンマンへビーメタル級王座のダブルタイトルマッチが無観客形式だった経緯もあり、有観客で初めて実現するシングルの舞台が、クリスの防衛ロードと赤井の引退ロードを繋ぎ合わせる事になったからである。引退までに組まれるタイトルマッチは、得てして記念受験や思い出作りの域を出ない事が殆どだが、現在DDTと全日本プロレスの6人タッグ王座を保持する赤井に、そのような意見は全く当てはまらないだろう。何より、キャリア10年でアイアンマンヘビーメタル級王座以外のシングル王座を戴冠した事のない赤井にとって、9・24後楽園ホール大会の一戦はシングル王座戴冠のかかった最後のチャンスになるはずだ。

「私が引退するから、その思い出にとか記念に挑戦させてあげるって気持ちがあるんやったら、なめんなよ。そのベルトの防衛ロードの一部になるつもりは一切ないから。」

 引退前の赤井を挑戦者として指名したクリスに対して反駁した赤井の決意は、果たしてシングル王座戴冠という結果を以て実ることになるのだろうか?

『クリス・ブルックス-入江茂弘』 無差別級激闘も順当にKO-D王座防衛

<メインイベント 60分一本勝負 KO-D無差別級選手権試合>
【王者】○クリス・ブルックス
(27分36秒 プレイングマンティスボム⇒片エビ固め)
【挑戦者】●入江茂弘
※クリス・ブルックスが初防衛に成功。

 クリス・ブルックスの初防衛戦。入江茂弘との一戦は申し分ない内容ではあったものの、入江の持ち味である【機動力を織り混ぜたパワーファイト】や【強烈なエルボー】は影を潜めていた印象を受ける。何故なら、それらを塗り替えるようにして、クリスが机と椅子を用いたハードコアファイトと、強烈なチョップと蹴りで圧倒してきたからだ。
 過去に無差別級王座の最多防衛記録も保持していた入江を相手に、最後まで流れを渡さない初防衛成功は流石の一言か。クリスによる終盤のチョップやキックの出足の早さと強さは、入江を試合時間以上に内容で圧倒する要因となったからである。

上野勇希37KAMINA残留、TAKESHITA海外続行も棚上げの処遇課題

<セミファイナル 30分一本勝負 スペシャルタッグマッチ>
KONOSUKE TAKESHITA ●佐々木大輔
(23分9秒 BME⇒片エビ固め)
○上野勇希  MAO

 先日、AEWでケニー・オメガから勝利を奪うなど活躍がめざましいTAKESHITA(以下:竹下)であるが、AEWでの活躍を増していくにつれて、募るジレンマはDDTマット内での立ち位置か。
 AEWとのダブル所属で海外遠征中だった竹下はThe 37 KAMINA(サウナカミーナ)に属していたものの、7・23の両国大会では上野勇希とシングルで対戦し勝利。試合後にはDAMNATION T.A.の佐々木大輔と共闘すると、7・30後楽園ホール、今回の大田区総合体育館と、サウナカミーナの面々と対峙したのである。竹下はこの日の試合でも、対角に立った上野やMAOに実力差を見せつけていたが、その姿を見て「竹下はDDTでは持て余す存在である」事を改めて実感したのであった。
 試合は上野が勝利したものの、試合後に上野が竹下の勧誘を断ったシーンは、曖昧模糊としていた竹下のポジションと扱いに一つの区切りをつけるものに。竹下は海外で、The 37 KAMINAは本格的に竹下抜きでの活動となるが、新型コロナウイルス禍の状況を加味しても遅きに失する配置転換だった。『ALL OUT』解散後、『ALL OUT』と平行して活動していたサウナカミーナであったが、当時の上野、MAO、勝俣にユニットの頭領を任せるチャレンジは出来たにもかかわらず、一人立ちが出来る竹下も入れてしまった事で、ユニット内の序列で竹下が上に来るシチュエーションを変えなかったからである。筆者には、竹下やサウナカミーナのキャリアを停滞させてしまう愚策に映っただけに、「ようやくこの体制に移行できたのか」と感慨深さも一塩なのである。

 とはいえ、竹下がDDT所属のまま海外遠征というのも、現状で抱える問題の棚上げに感じられた。今後、竹下がプロレス界で活躍できるようにするには、彼の成長期に頑として外に出さなかったDDTが如何に竹下から手を離せるかにかかっているように筆者は考える。竹下がDDTで数多くの実績を積み重ね、最早団体内には敵無しという状況が既に2018~2019年頃には形成されていたにもかかわらず、2023年に入るまで竹下のポジションは微妙なものであったと言わざるを得ないからだ。
 竹下本人が他団体に活路やステップアップを求めるわけでもなく、団体も外に出す動きも親心も提示しない過保護ぶり。竹下も強さで図抜けているものの、強さだけがイコールではないDDTにあって、支持率も扱いも非常に難しいものになっていた印象を受ける。

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