[ファイトクラブ]主力海外遠征不在DDT横浜【イキの良い若手】と【レアカード】で大爆発

 3月末のアメリカ大会で超満員の観衆を集めたDDTプロレスリング。一方で、同時期に日本国内では、海外遠征に帯同しなかった居残り組を中心にDDTの通常興行が行われた。
 『37 KAMINA』(サウナカミーナ)、『DAMNATION T.A.』、『フェロモンズ』となどの人気ユニットや主力選手が不在という状況ではあったものの、今のDDTの強みでもある若手選手に加え、スポットが当てられた中堅選手の活躍もあり、大盛況のうちに終わった。大会名の通り、裏のハリウッドをブッ飛ばすような勢いに満ち溢れたDDT横浜大会を取り上げる。


[週刊ファイト4月13日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼主力海外遠征不在DDT横浜【イキの良い若手】と【レアカード】で大爆発
 photo & text by 鈴木太郎
・主力不在をカバーした【普段見られない組み合わせ】と【イキの良い若手】
・小嶋斗偉-高鹿佑也と巴戦:岡谷英樹連勝突破KO-Dトーナメント出場権
・あと一歩が届かぬ小嶋に見た、トーナメント1枠を奪う勝負の厳しさ
・火野-彰人に酒呑童子One Night Stand脇徹するキャリア10年の逆襲
・彰人には、討伐隊より策士の姿がよく似合う
・海外遠征での不在で実現した、『酒呑童子』再結成の奇跡
・プロレス観変える激闘!会場大歓喜の透明人間vs.平田一喜!
・選手 レフェリー セコンド リングアナ観客で成立 純度の高い世界観


■DDTプロレスリング『DDT goes YOKOHAMA!~ハリウッドをブッ飛ばせ!!~』
■日時:2023年4月1日(土) 17:30開始
■会場:神奈川・ラジアントホール
■観衆:196人(満員)

 2023・3・30(現地時間)にアメリカ・カリフォルニア州で行われたDDTプロレスリングの海外興行『DDT goes HOLLYWOOD!』。
 団体のトップ選手を中心にした選抜メンバーで、超満員札止めとなる観衆:750人をマークした大会から約2日後、日本では居残り組の選手により『DDT goes YOKOHAMA!~ハリウッドをブッ飛ばせ!!~』が開催された。

 アメリカ大会で主戦級の大半が不在の中で行われた横浜大会ということになる。
 しかし、会場はほぼ満員で、中には海外からのファンも多く見受けられた。日本から渡米して現地まで観戦したファンもいた中で、このような”逆転現象”が起きていたのは興味深い点である。

 今大会は『37 KAMINA』(サウナカミーナ)、『DAMNATION T.A.』、『フェロモンズ』といったDDTの人気ユニットが軒並不在という状況の中、シングルマッチを軸にした全8試合。ユニットの存在に囚われないカード編成は、通常のDDTでも多々見受けられるものの、この日の編成は趣を異なるものにしていた。
 団体内のユニットメンバーはほぼ渡米中の為、ユニット対決の利を活かすというよりも、【普段見られない組み合わせ】と【イキの良い若手】で勝負した格好だ。


 前半に組まれた『高尾蒼馬&鈴木鼓太郎vs.中村圭吾&石田有輝』では、中村と石田に外部参戦の鼓太郎を当てることで、DDTの若手が持っていない強みを体感させ、更なる成長を促しているように見えた。

 それでも、主力不在で質を落とすどころか、メインの若手選手による巴戦に代表された熱戦と、シングルで脚光を浴びる中堅選手の姿には、まさに「ハリウッドをブッ飛ばす」勢いを感じずにいられなかった。

編集部注:
2008年の映画『ラスベガスをぶっつぶせ』は以下に紹介されている。
▼ラスベガス映画2本と1985年『グーニーズ』の子役キー・ホイ・クァン

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 メインの「KING OF DDT 2023」出場権争奪巴戦に代表される若手の活躍が印象的だった。大会名に違わぬDDT国内組の勢いと、層の厚さを示してきたのである。

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小嶋斗偉-高鹿佑也と巴戦:岡谷英樹連勝突破KO-Dトーナメント出場権

 今大会のメインイベントでは、『KING OF DDT 2023』のトーナメント1枠を賭けて、岡谷英樹、小嶋斗偉、高鹿佑也の3選手が巴戦で激突した。

 1選手が連勝するまで試合が終わらない過酷なルールを、最後はストレートの2連勝で抜け出した岡谷だったものの、内容は決してイージーではなかった。
 小嶋の絶え間ない攻撃に、高鹿の執念深い腕攻め地獄は、岡谷を確実に苦しめた。1つの結果次第でどう転ぶか分からない緊迫感が、巴戦の2試合で生み出されていたからである。
 特に、再三岡谷から3カウントを奪う猛攻を見せながらも、あと一歩が届かなかった小嶋の姿に、巴戦ないしトーナメントの1枠を賭ける勝負の厳しさをまざまざと見せつけられたのである。


 この1枠を掴み取り、現タッグ王者の勝俣瞬馬とトーナメント1回戦で対戦することが決まった岡谷。ここで強敵を突破することが出来れば、今回の巴戦もより価値を増す事だろう。

 今の国内プロレス界において、DDTプロレスリングは優秀な若手を数多く輩出している団体の一つだ。順調に世代交代を進めており、若手の積極登用にも時期尚早といった無理が生じていない。

 若手選手限定のリーグ戦を制してアメリカ行きの切符を手にした正田壮史という逸材がいるものの、他の若手選手も負けていない。極端に技術や力量の劣る選手が、贔屓目抜きで皆無なのだ。今のDDTを形成しているのは、間違いなく若い力である。

火野-彰人に酒呑童子One Night Stand脇徹するキャリア10年の逆襲

 DDTの選手層の厚さを感じさせた今大会、世代交代もあって脇に徹する時間も増えつつある、キャリア10年以上の選手にスポットが当たる大会でもあった。

 最近では『フェロモンズ討伐隊長』の座を命じられ、コミカルマッチへの登用も増えてきた彰人は、第6試合で現KO-D無差別級王者・火野裕士とシングルマッチで対戦。
 敗れはしたものの、体格差のある相手から如何にして勝利を奪うかという策士の姿こそ、彰人にはよく似合っている。やはり、彰人の今の扱われ方には勿体なさを感じずにはいられない。彼がタイトル戦線に絡みだしていく姿を願って止まないのである。

 セミファイナルでは『HARASHIMA&佐藤光留vs.坂口征夫&高梨将弘』のタッグマッチが実現。
 2019年4月の『酒呑童子』無期限活動休止から約4年、別々の道を歩んでいた坂口征夫と高梨将弘がタッグを組み、セコンドには無期限休業中のKUDOが就く光景は、どこか懐かしさも感じられた。入場時もKUDOの入場曲を使用するなど、一夜限りの『酒吞童子』再結成が実現したのである。

 試合ではHARASHIMA&佐藤光留に敗れたものの、試合では坂口がKUDOの地獄の断頭台、高梨が赤井沙希のケツァルコアトルを繰り出し、メインはHARASHIMAのリクエストもあって、久しぶりに「酒盛りだ!」締めが行われるなど、ファンを喜ばせた。この再結成は、所属選手の大半が海外遠征で不在だったからこそ実現した、一つの奇跡だったのかもしれない。

プロレス観変える激闘!会場大歓喜の透明人間vs.平田一喜!

 この日、最も会場を盛り上げ、大きな話題と反響を生んだのが、第4試合で組まれた『平田一喜vs.透明人間』である。

 これまで、男色ディーノらとも対戦した経験を持つ透明人間だが、一言で現すなら、【見た者のプロレス観を変えてしまうような試合】だった。そのスゴさを、言葉数を増やして伝えようとすればするほど、陳腐になってしまいそうな怖さも感じられたほど、鮮烈な印象を刻み付けたのである。

 過去に何度か『名レスラーはホウキとも戦える』なんてフレーズを耳にしたことがあり、レスラーが主体となって試合を組み立てるものだと思っていたが、その考えは大きな誤りだと気付かされた。
 選手だけでなく、レフェリーの表情や動き、セコンドの動き、リングアナによるアナウンス、何より観客の反応。いずれか一つでも欠けてしまえば成立しないような、純度の高い世界観が構築されていたのである。
 中でも、透明人間の顔面ウォッシュや619を受け続けた平田の姿は、間違いなく透明人間の存在が可視化された瞬間であった。


 恐らく、映像で見ただけでは全てを汲み取れなかったかもしれない。現地で無いと分からない独特の空気感と共犯性は、刺激的な光景を生み出していたのである。今風に言うなら、【バズってほしい試合】だった。これは是非とも色んな方々に知られてほしい名勝負だ。

試合結果

<オープニングマッチ 30分一本勝負>
大鷲透 ●須見和馬
(6分14秒 逆エビ固め)
松永智充 ○岡田佑介

<第二試合 O-40選手権試合 60分一本勝負>
○[王者]大石真翔
(8分44秒 フジヤマ・ニーロック)
●[挑戦者]アントーニオ本多
※第4代王者が初防衛に成功。

<第三試合 30分一本勝負>
鈴木鼓太郎 ○高尾蒼馬
(11分24秒 公認エンドレスワルツ)
中村圭吾 ●石田有輝

<第四試合 スペシャルシングルマッチⅠ 30分一本勝負>
●平田一喜
(12分2秒 ドラマティックラナ)
○透明人間

<第五試合 スペシャルシングルマッチⅡ~ハードコアルール 30分一本勝負>
○竹田誠志
(12分15秒 リバースUクラッシュ改⇒片エビ固め)
●MJポー

<第六試合 スペシャルシングルマッチⅢ 30分一本勝負>
○火野裕士
(10分4秒 キングコングスリーパー)
●彰人

<セミファイナル スペシャルタッグマッチ 30分一本勝負>
○HARASHIMA 佐藤光留
(14分15秒 蒼魔刀⇒エビ固め)
坂口征夫 ○高梨将弘

<メインイベント 「KING OF DDT 2023」出場権争奪巴戦 時間無制限勝負>
[出場選手]岡谷英樹、小嶋斗偉、高鹿佑也

①時間無制限一本勝負
○岡谷英樹
(10分9秒 ダブルアーム・スープレックス⇒片エビ固め)
●小嶋斗偉

②時間無制限一本勝負
○岡谷英樹
(12分0秒 ダブルアーム・スープレックス⇒片エビ固め)
●高鹿佑也
※岡谷が「KING OF DDT 2023」出場権獲得。