[ファイトクラブ]DDT後楽園5時間スペシャルで感じた順調な世代交代と若手の底力

 【後楽園5時間スペシャル】と銘打たれた、DDTプロレスリングの旗揚げ26周年記念大会。
 満足度の高さが際立つ中、一番印象的だったのは若手中心の現世代が順調に育ち、違和感なく主力を担っていた点である。世代交代に苦労している団体も少なくない中、ここまで順調すぎる世代交代の仕方は国内でもトップクラスだろう。全20ページにて余すところなく大会の全容と詳細を報告する。


[週刊ファイト3月30日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼DDT後楽園5時間スペシャルで感じた順調な世代交代と若手の底力
 photo & text by 鈴木太郎
・イルシオンがエル・ユニコーン下してDDTeeen!!卒業試合制する
・若手世代躍動も一際印象に残った高鹿佑也の腕攻め
・令和『若手通信』躍動!ヨシヒコというフック活かした平田一喜13周年
・大石真翔O-40王座戴冠!ゴージャス松野下した熟練の味
・8人無効試合もインパクト絶大なフェロモンズ!討伐作戦またまた失敗
・ギャップ活かし男子に快勝 Maxジ・インペイラー&ハイディ・ハウイツァ
・赤井沙希デビュー10周年第1弾”男女差打ち破る”ケツァル・コアトル
・HARASHIMA坂口征夫蹴り合い割って入る伏兵・中村圭吾の強烈キック
・正田壮史が居合いパンチャー・町田光撃破でアメリカ遠征に弾み
・6人タッグ佐々木大輔・復帰戦勝利!手土産エル・デスペラード戦発表
・全日大田区の真裏で刻まれた秋山準-鈴木鼓太郎という名の”王道”
・情感詰める試合通じて竹下幸之介-高木三四郎が交わした2つの約束
・サムライ・デル・ソルの攻撃も難無く受け圧倒!上野勇希WR勝利計上
・遠藤哲哉戴冠【KO⇒王座返上】以来!土井成樹Burning Star Press葬
・エニウェアフォール醍醐味活かしたMAO勝俣瞬馬-樋口和貞・中津良太
・聖地爆発納谷コール!火野裕士-納谷幸男激闘KO-D無差別級王座戦


■DDTプロレスリング 『Judgement2023~後楽園史上最長5時間スペシャル~』
■日時:2023年3月21日(火・祝) 14:00開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:1,138人(満員)

 DDTプロレスリングの旗揚げ26周年記念大会・『Judgement2023~後楽園史上最長5時間スペシャル~』が行われた。
 大会名の通り、後楽園ホールを昼夜ブチ抜きで借りた上で、ビッグマッチ同様の試合数が組まれるという前代未聞の挑戦。
 5時間スペシャルと銘打たれた大会は、結果として本戦開始から約6時間後に終了したものの、ボリューム感がありながらもダレたり低調だったりした試合は皆無であった。
 テンポも比較的良い、メリハリのついた内容は、過去に大会場で行われていたDDTビッグマッチ恒例の5~6時間超え興行とは明らかに異なっていた。

 今大会はとにかくボリュームが多い故に語りどころも多かったのだが、一番印象に残ったのが、若手を中心とした現世代の台頭である。

 後半5試合にはキャリア10年前後の選手が必ず1人は配置されていたのだが、いずれも「団体が積極的に登用した」というよりは、「納得いく形で上がってきた選手たちが、そのポジションにいた」という自然さが感じられたのだ。
 多少の我慢で根気強く若手を使い、地位を高め、団体力を向上させていこうとしていく団体は多いかもしれないが、ここまで納得感ある形で世代交代を順調に進められているケースは少ないように思う。

 その象徴が、メインで組まれたKO-D無差別級王座戦・『火野裕士vs.納谷幸男』だった。
 2019年5月のDDT入団以降、自身初となる無差別級王座挑戦。恵まれた体格を持ちながら、トップ戦線に中々進めない時期も続いた納谷。しかし、2022年のKO-Dトーナメントでの樋口和貞戦や『D-王グランプリ』準優勝という活躍を経て、観衆の支持率を高めて挑んだ大舞台は、26周年大会に相応しい熱戦となった。

 納谷にとって火野はタッグパートナーであり、師匠格でもある存在だったが、臆することなく火野を煽る姿は、かつてのような弱さはもう無かった。
 最後は火野が勝利するも、納谷の退場時、会場から自然発生した納谷コールの声量は地鳴りのようでいて、納谷に対する最大級の賛辞が込められていたように感じた。

イルシオンがエル・ユニコーン下してDDTeeen!!卒業試合制する

<ダークマッチ イルシオン&エル・ユニコーンDDTeeen!!卒業試合>
○イルシオン 中村宗達
(8分14秒 RE:VISION1⇒片エビ固め)
●エル・ユニコーン 今井礼夢

 DDTの10代限定プロジェクト・『DDTeeen!!』。同プロジェクトからデビューしたイルシオンとエル・ユニコーンの卒業マッチとなった一戦は、イルシオンがユニコーンから勝利。

 試合後、高木三四郎が登場し、今後の2人はマスクを脱いで活動するのも、マスクを被って試合をするのも自由との旨が告げられた。エル・ユニコーンは前者、イルシオンは後者を取り、ライバルだった2人はここでも別の道を歩むこととなった。
 自らマスクを脱いだ瞬間、笑顔も見られたエル・ユニコーンの目に、果てしない将来の一端を感じずにはいられなかった。

若手世代躍動も一際印象に残った高鹿佑也の腕攻め

<第1試合 タッグマッチ>
○高鹿佑也 石田有輝
(9分2秒 変形トライアングルランサー)
小嶋斗偉 ●須見和馬

 若手4人によるタッグマッチ。

 今勢いのある4選手だが、頭一つ抜けていたのは高鹿か。
 腕攻めの入り方やパターンがDDTとは違う血筋だと、素人目でもハッキリと分かった。他所の選手にも負けない風格を感じさせてくれる、堂々たる試合運びであった。

令和『若手通信』躍動!ヨシヒコというフック活かした平田一喜13周年

<第2試合 平田一喜デビュー13周年記念試合>
●平田一喜 ヨシヒコ
(10分39秒 ランニング両腕極めドライバー⇒片エビ固め)
○石井慧介 高尾蒼馬

 平田一喜のデビュー13周年記念試合となったタッグマッチ。
 ヨシヒコと組んで、かつて『若手通信』で切磋琢磨した石井慧介&高尾蒼馬組に挑んだ一戦は、ヨシヒコという変幻自在のフックを活かした多彩な攻防が展開された。

 平田、石井、高尾の3選手は無差別級戴冠経験がないものの、そのポテンシャルの高さを目の当たりにして、「何故無差別級が獲れないのか」という思いに駆られた。それくらい、アンダーカードで充実度を感じさせてくれる内容だった。

大石真翔O-40王座戴冠!ゴージャス松野下した熟練の味

<第3試合 第4代O-40王座決定3WAYマッチ>
○大石真翔
(4分54秒 エビ固め)
●ゴージャス松野
※大石が第4代王者となる。もう1人は川松真一朗。

 40代以上の選手に挑戦資格が与えられるO-40王座。
 大鷲透の返上以降、空位のままであった王座戦は、大石真翔が元王者のゴージャス松野から勝利して新王者誕生となった。

 【大石に共闘を求められるゴージャスが再三にわたって大石に裏切られる】という絶対軸に、川松が入る構図が続いたが、ダレずに面白く纏めてきた所に熟練の味も感じられたのである。

8人無効試合もインパクト絶大なフェロモンズ!討伐作戦またまた失敗

<第4試合 フェロモンズvsフェロモンズ討伐軍全面対抗戦~ノータッチ&フェロモンズが脱いだら即反則負けルール>
飯野“セクシー”雄貴 男色“ダンディ”ディーノ 今成“ファンタスティック”夢人 竹田“シャイニングボール”光珠
(11分21秒 無効試合)
彰人 大鷲透 大和ヒロシ 岡田佑介

 長期間にわたって繰り広げられている、男色ディーノ率いるフェロモンズと、彰人率いるフェロモンズ討伐軍による抗争劇は、この日も討伐軍の”敗戦”に終わった。

 入場時から観客のハートを掴んで味方につけると、【脱いだら負け】というルールも、フェロモンズの前ではレフェリーを攻撃・排除することでたちまち無法地帯へと様変わり。

 結果的に無効試合となったものの、試合のインパクトではフェロモンズが圧勝。このユニットの強さは留まることを知らない・・・。

ギャップ活かし男子に快勝 Maxジ・インペイラー&ハイディ・ハウイツァ

<第5試合 スペシャルタッグマッチ>
マックス・ジ・インペイラー ○ハイディ・ハウイツァ
(7分46秒 マスターブラスター⇒体固め)
スーパー・ササダンゴ・マシン ●アントーニオ本多

 東京女子プロレスの前タッグ王者チームと、DDTのコミカルを担うタッグチームによるスペシャルタッグマッチ。

 コワモテの前王者チームを仲間割れさせることで勝利を狙うササダンゴ組の強かさは、おにぎりを頬張り、プラモデルの奪い合いという可愛さを見せたマックス・ジ・インペイラー&ハイディ・ハウイツァ組の前には通用しなかった。
 ただただ、圧倒的に強すぎたのである。強さと可愛さ、このギャップにやられてしまう。

赤井沙希デビュー10周年第1弾”男女差打ち破る”ケツァル・コアトル

<第6試合 赤井沙希デビュー10周年記念試合vol.1>
●高梨将弘
(9分19秒 ケツァル・コアトル)
○赤井沙希

 赤井沙希のデビュー10周年イヤー第1弾
 男子vs女子のシングルというシチュエーションに加え、相手がタイトルホルダーの高梨、試合も赤井が押される展開に。

 そうした劣勢や男女差という壁を、違和感なく撃ち破るケツァル・コアトル炸裂の衝撃たるや。一発で流れを変え、説得力を付与した赤井の勝利に巻き起こる拍手は、観衆の納得感を現していたように見える。

HARASHIMA坂口征夫蹴り合い割って入る伏兵・中村圭吾の強烈キック

<第7試合 タッグマッチ>
○HARASHIMA 中村圭吾
(12分26秒 蒼魔刀⇒体固め)
坂口征夫 ●岡谷英樹

 1度目の休憩明けに組まれたタッグマッチ。
 HARASHIMAと坂口の蹴り合い・組み合いに視線が集まる試合の中で、中村の動きが際立っていた印象。

 2020年の秋山準のコーチ就任→移籍以降、若手選手が無理矢理コミカルマッチに組まれる事が無くなり、若手同士のバトルに主眼が置かれるようになった中、それ以前のコミカルに多々組まれていた中村も、長期欠場からの復帰以降、強い蹴りと肉体改造で雰囲気が一気に変わった。

 飛び技も出来るポテンシャルに加え、今の若手同士のバチバチに違和感なく入れる点は素晴らしい。

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