AEWロチェスターBリー追悼Dオーダー内紛沈下SゲバラTNT新王者

(c) AEW

■ AEW Dynamite
日時:9月29日(現地時間)
会場:米ニューヨーク州ロチェスター ブルー・クロス・アリーナ


 番組はCMパンクの登場、今宵は実況席に就くところから。そしてアダム・コールである。なんたるスーパースターのオーラ満開なのだろう。お客さんの反応見ればWWEの「ちっこい奴は一般向きのSmackDownやRAWでは人気者になれない」がいかに間違っていたことか。もう時代が違うのだ。凄い試合をやるし、カリスマもある。それにしゃべれる。対戦相手はさらにちっこいジャングルボーイ。しかし、AEWはいずれは彼が天下を盗ると計画している。グローバルなマット界秋の陣の詳細分析は別項に譲るが、「ベイ、ベイ!」のリングイン合唱を目の当たりにすれば勝負は見えたかと。

 コールの必殺パナマ・サンライズが完璧に決まるのだが、なんとジャングルボーイはカウント2で肩を上げるのだ。写真が捉えた通りのアダムの「そんなバカな」のセール表情を見よ。これがプロレス芸術である。もはや打つ手がないとアダムはレフェリー、オゥブリー・エドワーズ女史に後ろから抱き付くようにして視界をさえぎり、後ろ足で急所蹴りを見舞う。そしてラストショットが決まるのだ。パーフェクトである。AEWはSmackDownやRAWと競争していると言うかもだが、新顔プッシュ基軸になったNXTの最新回、まだまだグリーンな新人二人に重要なオープニングマッチやらせて、なんとか軍勢の場外乱闘を挟んで試合の粗が目立たないようにはしていたが、わかってみているハードコア層には「なんじゃこれは」だったのと比べて、なんと大きな差がついてしまったことか。


 エリート軍とブライアン・ダニエルソンの対峙セグメントは、ケニー・オメガが「最高の試合だったとアチコチから賛辞をいただいたが、もうブライアンとは二度とやらない」と、試合直後からSNS発信していたことをあらためてマイク。ブライアンがお前は「NO BALLS(金玉ナシ)だ」とやって、お客さんも「玉ナシ」の大合唱になるのみならず、ケニー”NO BALLS”オメガの呼び方までも定着させたようで・・・。ちなみに中澤マイケルはアクセント役割で前に立たされただけで特に意味はありません(笑)。
 会場ではDynamite終了後に続けてRampageの収録になるのだが、本誌はネタばれはやりません。


 コディ・ローズがQTマーシャルのFACTORYからナイトメア・ファミリー入りになったリー・ジョンソンと組んで、マット・サイダルと売り出し中のダンテ・マーティンと闘うタッグ戦。最初から参謀アーン・アンダーソンがイライラやっていて、「先発はリーだ」と指示するも、コディが無視して始めるという展開に。

 解説員としてのCMパンクなんだが、ダンテ・マーティンの跳躍殺法を「タイガーマスクのようだ。人間技じゃない」と評していた。ふ~ん、そこに持っていくんだ。


 試合はリーがダンテをネックブリーカーで沈めるのだが、試合には勝ってもアンダーソン教官は納得していないという・・・。マイクを取って「マラカイ・ブラックに二度も負けやがって」と詰め寄るのはまだしも、「俺が車盗られたらそいつを銃でブチ殺してやる」と説教を始めた。単にマイクだと絵にならなかったからのか、ちょっとこれはヤバいと公式写真から省かれたのかは定かでないが、昔の南部プロレスではありでも、今はアメリカも日本もアウトだと思われる過激発言である。お客は試合中からコディにブーイングなのだった。


 ベア(熊)カントリーとアンソニー・グリーン(NXT解雇されたオーガスト・グレイ)に、ダービー・アレンw/スティングと、悪友コンビのジョン・モクスリー&エディ・キングストンという6人タッグも。アンソニーが悪友組の合体技に沈みます。


 2時間番組Dynamiteは最初と最後、そして真ん中にヤマのカードを持ってくる構成なのだが、なにしろ今宵は故ブロディ・リー追悼の地元ロチェスター大会である。ダークオーダー軍にオレンジ・キャシディを加えた8人と、マット・ハーディ狂人軍にプライベート・パーティの16人タッグって、そんなのメモ取っても名前もわからなくなるし・・・(笑)。
 お約束でマット・ハーディが「田舎のロチェスター」をバカにするブーイングのプロモからにせよ、ストリー展開はこのところ仕込んできた通りのダークオーダー軍の内紛である。そこに故リーの未亡人アマンダさんが出てきて「ちゃんとやれ!」と活を入れるという帰結になる。

 するともう、やや背が低いがキーマンのジョン・シルバーが急に百人力になってバタバタと敵軍を倒すのであった。メデタシ、メデタシ。
 ちなみに、いつも「もう辞める、引退する」とゴネるリオ・ラッシュなんだが、LBO(レバレッジ・バイ・アウト)にも関与する投資家なんだそうでAEWとの正式契約が発表されて映像出演。WWEとも揉めてしまったのだが試合は滅茶滅茶凄い選手です。


 MMA総本山ATTのダン・ランバート会長の機関銃ヒール・プロモはもはや名物になり、レギュラー出演の一員になったようで・・・(笑)。スコーピオ・スカイも「俺はAEWにDay 1からいて、最初の(タッグ)王座を戴冠したのも俺だ」とやれば、イーサン・ペイジもガチに黒帯なんで説得力がある。しゃべりはやっぱり重要なんです。


 先週からの続きで、今度はタッグでペネロピー・フォードとバニーに、アナ・ジェイ&タイ・コンティもあったんだけど、それはつまんないから公式写真あってもカット(笑)。それで、やっぱりしゃべりの天才と言えばMJFなんです。WWEが何十人もシナリオ班雇っているというのに、プロモ合戦の時間でもAEWの方が面白いって、どういうことなのか。
 AEWを成功に導いたのは昔の名前の実績のある大物たちではなく、「ジャングルボーイ、サミー・ゲバラ、ダービー・アレン、そしてこの俺様なんだ」と若手がいるから・・・は本当のシュート演説である。CMパンクもブライアンも来たから初めて見たというライト層もいるだろうが、自前の強力な若手陣がいるからこそオリジナルが確立出来た。そして「俺様こそAEW王座に挑戦すべき」とアジるのだ。
 そこへすでに王者になったダービーが来るのだが、そこからのMJFの話はシュートとワークの境界線が不明。「ダービーが禁欲主義になったのは、おじが飲酒運転で事故死したからだ。あの事故で死ぬべきだったのは同乗していたお前なんだ」と、ヤバい話を突いてきて記者は知らなかったのでビックリした。それにしてもMJFの毒舌が止まらない。


 番組トリがTNT王座戦である。毎週マメにフォローしている方なら、ここに持ってきたかぁとわかっているとは思うが、ミロも怪物モンスターぶりを発揮してまったく落ちなかった。また、その巨漢をリング中央でスパニッシュ・フライに回すサミー・ゲバラも凄いとしか評しようがない。

 最後にゲバラがGTH見舞ってミロを完全に寝かしたあと、トップコーナーからの630度回転が鮮やかに決まる。新TNT王者の誕生。故ブロディ・リーに捧げられたロチェスター大会は、最高のHappy Endingを迎えたのであった。


 数字データは重要な時とそうでない場合がある。別項にあるようにこの週末の大田区体育館で新日本プロレスとスターダムの集客がどうだったかは議論になる。一方、先週と比べてAEWもNXTも平均視聴者数が落ちるのは当然である。前者はなにしろニューヨーク本丸進行のGrand Slam特別番組であり、テレビ局の宣伝からして大掛かりであった。NXTにせよ新装開店を謳った初回、2回目くらいまではもの珍しさが先行して興味を煽るものだ。もっとも3度目となると、通常に戻るのは致し方ない。
 但し、問題は内容である。新顔プッシュが基軸になったNXTはもはやAEWと比較する対象でなくなったのに対して、AEWはロチェスター大会の質充実を持ち出しても、いよいよSmackDown-Raw追撃態勢を整えたことになる。米マット界は再び2強団体の幕が開いた。


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’21年10月07日号Stardom5★決勝 G1神戸 WWE-新日AEW新秩序 エナジャイズ 岡山ジム

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