青木真也、敗者に中指を立て「バ～カ！」これでいいのか格闘技フジTV地上波放送

　3日深夜、大晦日に開催された『INOKI BOM-BA-YE 2014』の中継が、地上波フジTVで放送された。格闘技マニアやMMA業界関係者の多くは『DEEP DREAM 2014』の方に足を運んだ方が多いと推定されるため、この放送でようやく両国国技館大会の方を確認できたのではなかろうか。

　とにかく不思議な番組だった。ずっとIGFを後援しているHEIWAがスポンサーなのは恒例だが、もう一つの『DVDプロレスの星　アステカイザー』の販売告知。これは1976-77年にテレビ朝日が放送していた特撮アクションで、新日本プロレスの協力でジョージ高野ら現役のレスラーが出演したことで今では伝説となっている番組だ。このDVDをフジTVが宣伝する違和感はともかく、いくら「猪木」とはいっても、わざわざ深夜の2時10分から番組を見る現在の格闘技ファンと、当時の新日をリアルタイムで見た層が重なるとは到底思えない。格闘技番組におカネ出してくれるスポンサー様に非はないが、これを見てニヤリとした視聴者など殆どいないだろう。

　さて、青木真也である。これもキャラということで前科（2009年12月31日の廣田瑞人戦）の延長でヒールを演じているのかも知れないが、格下選手の山本勇気をツイスターで秒殺。試合を引っ張る気配は全くなし。しかも、あろうことか中指を突き立て「バ～カ！」と罵る始末。果たしてこれを「プロ」格闘技と呼んでいいのか。強い弱いの問題ではない。お客さんに格闘技は素晴らしい、美しいと思わせるのがプロの仕事ではないのか。よりによって番組のオープンニングはこの問題の第9試合。

　例えば、当日とは順番を変えてオンエアされた、「38歳ベテラン」の國奥麟樹真と、ロシアのラマザン・エセンバエフとの試合。一発食らえば即KO必至の破壊屋相手に、ベテランが巧みに打撃をかわし、2-0判定で敗れたとはいえ制限時間を戦い抜いた。こちらは選手たちをよく知らない一見さんにも「よくがんばった」という感動を与えたことだろう。ところが青木真也は、格下の相手に楽勝して「バ～カ！」である。

　そもそも今回のカード編成。青木にラマザン・エセンバエフ、あるいは國奥麟樹真を充てる選択も検討された筈だが、メイン第11試合でエース石井慧がミルコ・クロコップに返り討ちに合うリスク、鈴川真一を含めたガチンコ戦が総崩れになるリスクの高さを憂慮、少なくとも青木は鉄板での勝利を確保しておきたかったから、山本勇気のマッチメイクで万全を期したと考えるべきだろう。つまり青木はハンディを与えられていたといってもいい。　
　同日開催の『DEEP DREAM』では、女子のしなしさとこが、格下選手とのカードで試合を上手に引っ張っていた。秒殺可能な実力差があったにもかかわらずだ。

　フジTVに「地上波でMMA復活」という目論見があるのは解る。だからこそ「秒殺」「暴言」と見た目のインパクトだけはあるあの試合を冒頭に持ってきたのだろう。しかし、編成局長クラスに良識があれば青木の態度は「下品」と斬って捨てられよう。「MMA地上波復活」にGOサインを出すとは思えない。

　また、大晦日の定番だったボブ・サップも大会に華を添えていたのに、地上波番組ではカットされた。もっともよくよく試合記録を見ると、「IGFルール」でもなければ「GENOMEルール」でもない。「エキシビションマッチって何だよ」と格闘技ファンから突っ込まれそうな試合形式である。仮に大幅なギャラダウンを突きつけたため地上波放送が許可されなかったのならば本末転倒である。相変わらず何をやりたいのか、どう見せたいのか理解に苦しむ猪木一座の大晦日イベントであった。