「真剣勝負ではないがガチンコ!」大鵬三世・納谷幸男、リベンジマッチは戦慄の秒殺! 岩石落とし葬!!

※画像増補詳細版は’17年12月14日号鷹の爪2ドン荒川追悼新間寿原点回帰馬場最強タッグJewelsポーゴ に掲載されました。

 新間寿プロデュース『原点回帰プロレス』が、後楽園ホールに満員の観衆を集めて行われた。
 全3試合にも関わらず、北側に席を設置する盛況ぶりは注目度の高さを表している。

 冒頭、新間会長、佐山総監の挨拶い次いで、昭和のプロレスを上映。

東京体育館の豊能 力道山組ロード・レイトン ボボ・ブラジル組

 そして昭和のレジェンドとして、リング上に新日本プロレス黄金期を支えたメンバーが登場。

 新日本プロレス初代リングアナウンサーで、クーデター事件後に新間氏に後継を任された大塚直樹営業部長が進行を務め、専務取締役・新間寿本部長、同じく営業の上井文彦元執行役員、旗揚げ時から営業責任者だったアントニオ猪木の実弟の猪木啓介氏、武藤敬司と共に全日本に移籍した青木謙治氏、旗揚げメンバーの北沢幹之こと魁勝司氏、初代タイガーマスク・佐山サトル…と、新日本プロレス黄金期を築いた、まさにレジェンドが勢揃い。
 故人となったドン荒川さん、倍賞鉄夫氏への10カウントが捧げられた。
 色々しがらみはあろうが、YouTubeの新日本プロレスチャンネルを覗けば先ず、旗揚げ時の映像が流れるのだから、本来であれば、これは新日本プロレスが行ってもいいセレモニーとの印象は遺った。


 
 その後、必勝祈願、タイガーマスクワインが当たるサインボール投げとセレモニーが続き、観客が焦れだしたところで休憩が告げられるという、プロレスの興行としてはシュールな展開。

 そして休憩明け、『ストロングスタイルの真髄 デモンストレーション』に満を持して佐山サトルが登場、スーパー・ライダー、間下隼人、タカ・クノウ、倉島信行を招き入れる。

 ロックアップから、プロレスではこう、ガチンコならこう…と実際にやってみせ、改めて
「受けの凄み」
を、
(変なことしたらぶん殴られた)かつての道場長・山本小鉄氏からも
「そんな事は教わったことがない」
と否定。
 現状のプロレス論として、
「控え室でお互い話しをして、試合の中で、次はこうやろう、見栄えのある技をやってやろうと、最初から決まってあることをどんどんやっていくと面白くない」
「ナチュラルでガチンコでいかなければ」
と切り捨てた。
 その上で、自身の初代タイガーマスク時代を振りかえり、
「空中技なんてほとんど練習した事は無い。タイガーマスクは空中戦ではない」
と強調、あくまでも、闘い、攻撃が主体であり、受けはその前提であるとの定義を説明した。

そして、
「格闘技とプロレスは違う」
が、
「真剣勝負とはいわないが、ホントに蹴らないと、やらないとダメ」
と語り、
「(見せる為の)理屈に合わない動きは、ウケているのがむしろ苦しいし、観る気もしない」
と、リアルジャパンプロレスのリングを振りかえった。

「プロレスは芸術。ガチンコでやって、培ってきたものを魅せる」
べきだが、
「ただガチンコでやっていてはウケない。スペクタクルなものにしていかなければいけない。動きを加味して素晴らしいものにしていく。それが昭和のプロレス」
と、今のプロレスとの違いを説明、
「総合格闘技を創ってきた、強さを造ってきた、総ての技術を把握してきた。その私がプロレスに対しては愛がある。ガチンコに対しても愛がある。2つは違う文化だが、プロレスの方の文化は難しい。観客には解ってもらうのが難しい状態だが、それを果たしていきたい」
「今後、リアルジャパンのリングではスペクタクルな試合を提供していく」
と改めて宣言し、喝采を浴びた。

 トップレスラーが、観客の見つめるリング上で、プロレスそのものを否定する意図を保たずに勝負論はないとカミングアウト、同時にその芸術性、魅力を語った。
 これは佐山サトルなればこそ可能な、日本のプロレス史の新たな1ページを開く大胆な試みで、中々試合が始まらず焦れはじめた観客を魅了した。
 このあと、3試合が行われたが、佐山の言葉を受けて本来ならやりづらいところだが、それに影響を受けず、闘いを魅せられる選手ということでこの6人が選ばれたということであろう。

 注目された納谷のリベンジマッチを引き受けた雷神矢口はわずか1分26秒で沈んだが、本誌が再三指摘するように、プロレスは負ける側こそが重要な役割を担っている。

 前回、凶器を持って軍団を乱入させた上に敗れた矢口が、セコンドの介入と凶器を奪われて戦力を失ったら秒殺されるというのは佐山風にいえば「理屈に合う」話。
 あるいは、新間氏を激怒させた事へのけじめという意味でも、しっかりつとめを果たしたといえる。
 納谷の重いキックで思うさま蹴られ、練習したことがないという、ぶっつけ本番のバックドロップをしっかり受けて沈んでみせ、花道に引き上げざま、「何度でもやってやるからな! 」と棄て台詞を残す所まで、相手を光らせる、悪役レスラーの鏡のような負けっぷりだった。

 勿論、強さを魅せた納谷も賞賛されるべきだが、敗者の美学を貫いた雷神矢口にはそれ以上の拍手を贈りたい。
 この、問題の1戦を含めての3試合、プロレスをよく観ているファンであれば、結果を予想できない人はいないだろう。
 船木が「プロレス」で松本に負ける、鳴り物入りでデビューした納谷が矢口に負ける、どっちもまあ「ない」ことで、4冠王のスーパー・タイガーが、謎のマスクマンに負けることも「ない」(プロレス業界的にいうならば、普段素顔で試合をしている中の人がそもそも負ける為にマスクマンになったのであるし)。

 だが、ではこれらの試合が、「どっちが勝つか解りませんよ」と謳っている他団体の試合と比べてどっちが面白かったかといえば、跳んだり跳ねたりするのを良しとするファンが多いからこそ、今の新日本プロレスの独走状態がある訳だし、答えは難しい。
 だが、実際、観客の多くにとっては、頑張れとの声援を送らずにはいられない熱戦でもあった。
 馬場プロレスと違う猪木の、新日本のプロレス。
 I・Y編集長は
「偽りの痛みなら拒絶するのが猪木流のストロングスタイル」
と論じ、さらに派生したUWFを
「(新日本プロレスを)必死さの度合いにおいて上回る」
と論じた。
「真剣勝負ではないがガチンコの闘い」
とは、つまりそういうことであろう。

  新日本プロレスの一強で各団体動員に苦しむ中、カミングアウトをした『原点回帰プロレス』がこれだけ集客し、その上で声援をも集めた事実は、プロレス界としても無視できないところ。
 いざカミングアウトしてしまった方が、色眼鏡で見られないという利点もある。
 実際、この日の試合にしても、「ケツ決めはしてある」と思って観ても、リング上の技の一発一発の迫力は色褪せるものでもない。
 勿論、追従したとして、佐山サトルが提唱する「闘い」を取り入れるのはさらに難易度が高いが、そういった試行錯誤も含めて考えてこその大人のプロレスファンといえるし、その流れは本誌としては歓迎する。
 カジノのルーレットが「どこに球が入るか」では無く、「投げる人間がどこに入れてくるか」を当てるゲームであるように、団体やブッカーがどっちを勝たせてくるかを予想して楽しむ事が本当の楽しみ方なのだ。
 次戦・新間氏が放出を予定する「タイガーマスクのマスク」を、勝ち負けを予想して当たった場合の景品にしてみることを提案したい。各マスコミで、スーパータイガー◎とか予想を発表するのも面白そうだ(デモンストレーションをスルーしているのでやってこないだろうが)。
 
『原点回帰プロレス』プロレスファンならば、次戦も是非見届けたいところだ。

■ 新間寿プロデュース 初代タイガーマスク佐山サトル認定 原点回帰プロレス
日時:12月7日(木) 開場:17:30 開始18:00
会場:東京・後楽園ホール
観衆:1465人(満員)

<第3試合 メーンイベント レジェンド選手権試合シングルマッチ60分1本勝負>
[王者](リアルジャパンプロレス)
〇スーパー・タイガー
 7分24秒 ジャーマンスープレックスホールド
●HGZ
[挑戦者](正体不明)
※第13代王者防衛に成功


<第2試合 シングルマッチ 60分1本勝負>
(リアルジャパンプロレス)
〇納谷幸男
 1分26秒 バックドロップ⇒体固め
●雷神矢口
(フリー)

<第1試合 シングルマッチ60分1本勝負>
(フリー)
〇船木誠勝
 ハイブリッドブラスター
●松本崇寿
(リバーサルジム立川ALPHA)

加齢は感じるが、「老い」はどこにも見当たらない船木の素晴らしい肉体。

一方松本もこの鍛えられた身体


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’17年12月07日号鷹の爪新日G馬場新間寿PURE-JダイスケRISE巌流島JEWELS川村虹花