井上義啓 猪木は死ぬか!Digital Remaster


I編集長こと井上義啓氏が亡くなり、また弊サイトの前身「週刊ファイ」トが廃刊してから2016年で早や10年になりました。故人の傑作をDigital Remasterにてお届けします。

【天の章】
茫洋たる人の海であった。
ある感動が、耐えられない怒涛となって押し寄せる。
<短かったのであろうか>
リングの下を、カラカラと風が吹き過ぎてゆく。
その上に―猪木はいた。

【活字プロレスの最高峰が遂に復刊】天空より舞い降りたストロングスタイルの権化が挑む激闘録の裏側と、敗戦の日の天皇陛下のラジオ放送に遡るI編集長の個人史を重ねた感動のストーリー。発刊から24年の歳月を経て、不朽の井上文学「昭和プロレス」金字塔が永い眠りから覚醒。

【抜粋】猪木のプロレスが、もし、「素晴らしき日曜日」であったとしたら、「カサブランカ」「凱旋門」であったとしたら、今日の猪木が存在したかどうかが疑問である。
猪木のプロレスが「七人の侍」であり「蜘蛛巣城」であり「酔いどれ天使」であり「野良犬」だったところに、猪木の今日に至る軌跡があったと言えるのだ。

【地の章】
プロレスに真実はないが、
少なくとも、こうであった筈だとの思い込みは存在する。
その思い込みが真実でなかろうと、
そう感じ取った人の心には、それはまぎれもない真実となる。

【人の章】
猪木は疲れている。
 その疲れは、ここから来ている。気の抜けない生への闘争。それが一生つきまとう事は覚悟するとして、鼓膜をつん裂く金属音からは逃れたい。振幅を少し下げてはくれないか。
 猪木はだから事業に走る。ブラジルでのアントンハイセルが軌道に乗った時、猪木の耳に、この金属音は聞えなくなったに違いないのだ。
 いや、聞えなくしたことをはっきり確認した、と言った方が当たっている。この瞬間に猪木の心はプロレスから離れた。引退は、こうして固まったのである。シンに去られハンセンに去られ、やむなく過激なプロレスを謳い文句にせざるを得なかったが、それは最後の舞台装置であった。そうせざるを得なかったからではなく、猪木という男が、終焉の地へ辿り着く途中で出会った見も知らぬ駅に過ぎない。

激烈を極めた猪木の世界は華麗でさえある。
だからこそ、潮が引いて行く時の哀感は強い。
呼び止めても、足許から遠のいていく潮の流れを、
ファンはいま、寂し気に見やっている。
貝の涙が真珠であるのなら、そう信じたい。
一代の英傑の最後の日を、
私はどんな詩に託するのであろうか。

井上義啓氏が亡くなられました。
古都・嵐山〜「活字プロレス」魂の聖地来訪記
美城丈二・井上義啓氏について

DMM.comでも購入出来ます

井上義啓 猪木は死ぬか!Digital Remaster

商品コード inoueyoshi001

価格 945 円

ウィッシュリストに追加する »