古都・嵐山~「活字プロレス」魂の聖地来訪記

 昨年のマット界を総括するなら、6月にPRIDEがフジテレビから放送契約を解除され、9月末に『週刊ファイト』が廃刊、12月には多くのファンや業界関係者にとって唯一無比の存在であったI編集長こと井上義啓先生が亡くなられた。それはどん底にあるマット界の暗黒を象徴していたかのようだった。

 『猪木は死ぬか?』を生前に復刊できたことが、せめてもの供養であったかも知れない。井上義啓先生の功績を讃え、新しい世代に語り継ぐことこそが、マット界復興の道標なのではなかろうか。夏休みに先生の愛したゆかりの地を訪ねるべく、京都にある嵐山に向かった。井上文学においては、嵐山小説として知られる「活字プロレス」魂の聖地である。
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   写真: 喫茶店ranzan 桂川川岸 嵐山小説の舞台・小倉山

 阪急電鉄京都線桂駅まで行き、乗り換えて嵐山線の嵐山駅へ。進行方向手前から一両目に乗るのが駅改札に近くていいだろう。改札を出てすぐ左手に”Ⅰ編集長喫茶店トーク”の名所の1つ、喫茶RANZAN(ランザン)がみえる。洋風の建物で店内はかなり広く、しゃれたボサノバミュージックがかかっている。心地よい和みの空間だ。

 入り口付近窓際の席がⅠ編集長の特等席であったようだ。何時間もここで”活字プロレス者”と必殺のトークを交わしていたという。
 活字プロレスの聖地・嵐山を散策してみよう。

 改札を出て右手に林が見える。そちら側を進み、中の島橋という小さな橋を渡ると嵐山・中の島地区公園に入り桂川が目に入る。Ⅰ編集長が生涯で何度も訪れたこの川岸で氏独特の名言、名発想が編み出されていたのを思うと感慨深いものがある。「活字プロレス」約束の地・嵐山というフレーズがふと私の頭に浮かんだ。

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   写真: 渡月橋 櫻もち琴きき茶屋 人力車

 桂川ー保津川間の渡月橋も、その向こうに観える小倉山も”嵐山小説”に慣れ親しんだ者は忘れてはならない。人力車が闊歩しておりこれもまた風流である。渡月橋を渡ってすぐのところに甘党であリ桜が好きであったⅠ編集長好みの桜餅で有名な「琴きき茶屋」がある。お食事席100席と茶店20席があるが、桜餅のみ召し上がるのであれば茶席がお勧めである。また桜餅の土産販売もされている。もう少し先には天竜寺があるのでこちらのほうも散策してみればいい。
 
 Ⅰ編集長の活字プロレスに影響を何かしら受けたものは、一度は嵐山へ気軽にいってみてはどうだろう。気骨のあったⅠ編集長ならば、「俺のことなんぞ1日も早く忘れろ」とおっしゃられるであろうが・・・
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   画: いしかわじゅん(特別提供)

by レトロ狂時代