Mr. Kennedy WWEの未来を託された新鋭エース

レッスルマニア団長ターザン山本!がWWEのエンタテインメント論を語りつくす
CR WWEこそがNO.1プロレスパチンコ機の楽しみ方①
CR WWEこそがNO.1プロレスパチンコ機の楽しみ方②~予告演出とリーチ
CR WWEこそがNO.1プロレスパチンコ機の楽しみ方③~リーチ演出②
CR WWEこそがNO.1プロレスパチンコ機④~その他演出と大たりラウンド
 WWE日本ツアーの興奮が冷めやらない。
 皆さんの印象に残ったスーパースターは誰だろう。ジェフ・ハーディーの会場人気にビックリした? やはり見おさめとなったリック・フレアーのたたずまい? それともリング復帰した”Y2J”クリス・ジェリコの「日本なら任せておけ」の大物ぶり? あるいは、初日の主役だったショーン・マイケルズの名人芸だろうか。
 日本ツアーがいかに選手らにとっても重要なことか。座長のHHHなど、実は直前に姉の亭主がなくなってしまい、国内のテレビ収録にも不参加。韓国公演に姿を見せなかったから関係者を心配させたものだ。
 しかしマクマホン家の番頭に迎えられ、ステファニー夫人が二人目を身ごもったというトリプルHは、日本ツアーがいかに重要かを熟知している。彼だけ特別に日本との直行便をアレンジして参戦。しかし東京のあとのアラスカはキャンセルのままだったことを鑑みれば、彼は悲しみを乗り越えてジャパンのみを優先したのであった。
 ただし、WWEを見続けているのなら、今回のツアーでもっとも楽しみにしていたのがMr. Kennedyであることで一致するかも知れない。有明コロシアムでの初日は今回のツアーの主役であったフレアー先生を相手に、なんと13分52秒の攻防を見せてマニアをうならせた。
 フレアーがもっとも得意とする「尺」が14分という、レスラーズ・ハイのマジックナンバーまで理解している通ならば、ハウスショーでさえ「10分以上はダメだ」とエージェントからきつく制約を課せられていた御大が、あえて「最後の日本だから」とゴリ押ししたことも想像がつくだろう。
 その相手は、若手でピカ一のMr. Kennedyでなければならなかったのだ。
 
 そしてこの試合が完璧だったのは、すでにツアー直前に国内で2月11日放送用のRAW収録が行われており、Mr. Kennedyがフレアーの悪い膝をマネてびっこを引いてリングに登場。PPV大会『No Way Out』での試合を棄権したらどうだと、老人選手を馬鹿にするセグメントがあったから。
 フレアー先生は、「俺様は16回も世界王者になった、お前のような小僧など、せいぜいキャリアのなかで一度でも王座につければいいほうだろう」というプロモで切り返すだけでなく、「俺様の時代は一年に300も試合してたんだ。土曜や日曜だと2回づつもな。てめらは、一年に100試合かい。それでいい暮らしができるだから、てえしたモンだぜ」と、先生の神のようなマイク・パフォーマンスが炸裂したのである。
 Mr. Kennedyはすかさず先生の悪い膝にドロップキック。天下を取っているのは自分なんだとアピールする。フレアーにちゃんとマイクの時間を与えれば、たとえそれが放送作家によって練られた内容であったとしても、お客さんを手玉にとってヒートを作りだすことができるという、見本のようなセグメントであった。
 
08.2.12kennedy.jpg
 リングサイドで観戦していたレスラー体験者らを唖然とさせたのが、日本ツアー2日目の武道館である。この日Mr. Kennedyの対戦相手はY2Jだ。前夜の有明コロシアムでは、若き王者ランディー・オートン相手に30分も続く見事なメインイベントを披露したばかり。
 ところがY2Jは、「昨晩は俺が試合を作ったから、今宵はお前がやってみろ」とばかりに、Mr. Kennedyにスポットをコールさせたのである。つまり試合をリードさせたのだ。
 そしてMr. Kennedyは、見事に”フレアー・プロレス”の継承者であることを証明してみせた。Y2Jの前夜との違いに気がついたレスラー体験者は、その絶妙かつ的確な指示の出し方に舌を巻いたのである。何十年も試合しているベテラン選手のように試合を組み立ててみせ、ジェリコは気持ちよさそうに踊っていた。
 航空便で入手した現地時間2月11日放送RAWのVHSテープにあった、「一年に100試合」のマイクの意味が、「お前は若いのに、なんでそんなに上手いんだ」という裏返しであったことに気がついて、武道館の衝撃を再び思い出した。
 
 アメプロの象徴といえば、もう一人”ストーンコールド”スティーヴ・オースティンがいる。現在はリングから遠ざかっているが、テレビでMr. Kennedyを見て、たちどころに魅せられ自宅に電話したという。今ではこの二人は情報を交換し合っている仲なんだそうだ。禿親父にしてみれば、若い頃の自分を見たに違いない。
 上場企業のWWEは先日決算を発表、年商500億円と、日本との巨大な差を公開している。Mr. Kennedyの試合巧者ぶりを見るにつけ、WWEの未来が明るいことを納得できるであろう。新しいスターを次々に起用しているからだ。