ラストにリアルな感動のドラマ~まもなく設立10周年を迎える大阪プロレス

 かつて大阪・難波の大阪府立体育会館は東京・水道橋の後楽園ホールと並ぶプロレス興行のメッカであり、海外の日本プロレスマニアの訪れてみたい憧れの地であったという。
08.2.13osaka3.jpg
大阪府立体育会館(上) 「大阪ハリケーン」大会売店は大盛況だった

 1995年1月、阪神大震災後に強行開催された同地での全日本プロレスのメインエベント、川田利明対小橋建太の1時間フルタイムの激闘は、震災後の曇った暗い空気を吹き飛ばし震災地の方々に対し勇気づけ、そして励ますかのごとく両雄が1時間を動き続けた。
 軽々しく真似することはできない至上の激しい戦いの攻防は当時台頭してきたアルティメット・ファイティング・チャンピオンシップに対する痛烈な回答でもあり、世間にプロレスの存在意義を問うて”魅せた”歴史的一戦であったことが思い起こされる。

 大阪府立第一競技場ではメジャー規模といえる団体は、U系も含め頻繁に興行が開催されていた時代があった。また館内の喫茶コーナーも、開始前には記者やカメラマンを中心におおいににぎわっていたものである。しかし興行がめっきり減り最早、そのにぎわいはない。
 あらためてプロレス人気のバロメーター的風景に巡り会いたいものだ。界隈のプロレスショップ(ビデオレンタルショップ含む)もほとんどが消えていってしまった。大阪府立体育会館およびその近辺にプロレス的風景がすたれていってしまった今・・・

 大阪府立体育会館第一競技場で開催された大阪プロレス「大阪ハリケーン2008」は毎年2月恒例のビッグマッチで、紆余曲折のあった同団体は史上2番目の6816人の入場者数を達成。10周年をまぢかに迎えることもあわせて喜ばしい限りである。
 15時から開始され18時45分頃に全7試合が終了。長時間であったがけっしてだれ気味にはならず売店も大いに、にぎわって大変満足度の高い大会となった。

 第1試合目は大阪プロレスの明日をになう若手レスラーのタッグマッチからスタート。2試合目の8人タッグマッチは、インターナショナルスタイルの体現者ウルティモドラゴンが出ずっぱりではなかったが、見せ場を作るのにおいてはおおいにたけており別格の感がした。

 3試合目はゼウスが新崎人生に衝撃的な勝利。4試合目の6人タッグはデルフィンと曙の揃い踏み、大阪プロレス名物の「明るく楽しいプロレス」が満喫できたのではなかろうか。試合終了後にゼウスが曙に一騎打ちをアピールした。その心意気や良しである。

08.2.13osaka1.jpg

 5試合目はプロレス界の至宝、ノアの丸藤正道対、復帰緒戦のビリーケンキッドは大会屈指の好勝負であった。6試合目は王者組のゼロ、GAINAがツバサ、アジアンクーガを相手に貫禄の防衛を果たしている。

 メインイベントは王者タイガースマスク対ブラックバファロー。意地と意地がぶつかる大熱戦となった。勝者はタイガースマスクとなり、敗者ブラックバファローは自ら潔くマスクをとって素顔をさらした。やはり正体はうわさされていたあの男だった。
 「俺は山田圭介である」と、経歴をそして私生活上に起こったつらかった現実、なぜタイガースマスクが反対コーナーにいる対戦相手でなければならなかったのかを衝撃のマイクアピール。感動のフィナーレとなり、若手レスラーの小峠の裏切り劇、ブラックバファローの追放劇もあいまって今後に深い余韻を残した。

08.2.13osaka2.jpg

 今大会は義理や連れられてきたという一見さんも大いにいたと思うが「プロレスって面白い、ハマってしまったよ」という方も多かったのではないだろうか?正規軍対バッドフォースという良い者対悪い者というわかりやすい構図は単純明快でわかりやすい。また意図的な流血はご法度というのも世間一般のプロレスに対する偏見をかき消すであろう。プロレス愛好家にとって金言が満載とも言えるウルティモ・ドラゴン自伝の言葉の1つをかりると「プロレスはルールを知らなくても楽しめる」である。

 プロレスドラマの醍醐味を感情移入もまじえて充分堪能させていただいた大阪プロレス「大阪ハリケーン2008」は、株式公開ならびにアジア進出の命題を掲げ推し進める上での弾みとなったであろうか? そして往年の大阪でのプロレス熱、浪速独特の気質を知るがゆえにプロレスブーム再燃はまず大阪からというのが筆者の願いでもある。

草間政一&スペル・デルフィン「プロレス界改革宣言」
デルフィンアリーナ道頓堀への道順
デルフィンアリーナ道頓堀はイメージ一新された戎橋共々大阪ミナミの新たなシンボル