[週刊ファイト8月20日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼問題提起プロレスとマナー白か黒か 誹謗中傷時代に言いたかったこと
by スープレックス豪 編集部編
・Stardom「観戦マナーおよびファンコンテンツガイドライン遵守のお願い」
・2009年RO誌ダイブ禁止 山崎洋一郎は安全を選び横山健は反発した
・猪木ダーッ 小島バカヤロー 蝶野正洋は自分たちを「野党だ」と言った
・後楽園バルコニーダイブ禁止は当然 黒く塗り過ぎれば何も残らない
・別冊ミルホンネット電子書籍ベストセラー作品『伊東竜二vs.葛西純』
・炎上に書き込むのは0.5% 政治投稿の半数は0.23%が書いていた
・商店街が消え叱る人も褒める人もいなくなった そこに愛はあるんか?
・白か黒かを決める前に一度立ち止まる その判断を取り上げたくない
※記事別永久保存凝縮PDF各500円販売中
白か黒かを決めることは簡単だ。誰が悪い。誰が正しい。危険だから禁止する。迷惑だからやめさせる。人を傷つけたなら許さない。
ただ、全部が黒になってしまえば、そこに残された大切なものまで塗りつぶしてしまう。
8月3日、スターダムの後楽園ホール大会で、観客のブーイングや煽りをめぐって、観客と選手の間に緊張が走る場面があった、と聞く。翌4日、スターダムは「観戦マナーおよびファンコンテンツガイドライン遵守のお願い」を公式サイトで発表した。SNSでは、すぐに白か黒かの話になった。
▼Stardom 5★GP勝ち点だけで語れない-後楽園に交差する其々の思い
この件を裁くつもりはない。ただ、この出来事をきっかけに、考えてみたいことはある。ブーイングとは何なのか。大声とは何なのか。私たちはいつから、物事を二つの色だけで決めるようになったのか。
心理学には「二分法的思考」という言葉がある。物事を白か黒かで決めてしまう考え方のことだ。白か黒かを急ぐのは、グレーに耐えられないからでもある。
客席の楽しみ方が白か黒かで裁かれるのを、音楽のライブは一足先に経験している。私はライブにも足を運んできた。プロレスも見てきた。そこで感じてきた大事なものを、ネットの言葉だけで黒く塗りつぶされるのは、どうにも違うと思っている。
2009年RO誌ダイブ禁止 山崎洋一郎は安全を選び横山健は反発した

まず、ライブの話から始めたい。ダイブとは、ステージの上から観客のいる場所へ、体ごと飛び込むことだ。飛び込んできた人を、客たちがみんなの手で受け止めて、頭の上で運ぶ。これをクラウドサーフという。受け止めた客たちは、その人が怪我をしないように転がしながら運び、急に落ちないように気をつける。モッシュは、音楽に合わせて客同士が体をぶつけ合うこと。どちらも、ロックのライブで生まれた楽しみ方だ。
なぜ飛ぶのか。音楽で高ぶった気持ちを、体ごと爆発させたいからだ。そして、飛び込んでも受け止めてもらえる、という客同士の信頼がそこにあるからだ。
その信頼は、たぶん箱の大きさで変わる。小さなライブハウスなら、来ている客はだいたい作法を知っている。箱が大きくなるほど、それを知らない人が混ざる。同じ行為でも、成立する場所と、しない場所があるのだと思う。
ELLEGARDENは2007年、幕張メッセに3万人を集めている。それでも2023年、16年ぶりのアルバムを携えて回ったのは、全国のライブハウス37本だった。初日は地元千葉のLOOK、最終日は沖縄。チケット代は2,600円。
大きな箱で一度にやれば済む。それをやらない。
細美武士は、活動を再開したときのブログをこう結んでいる。
「さあ、野郎ども、ライブハウスへ帰ろうぜ。」
そういうものは、伝わる。伝わったら、こっちも返したくなる。そこに想いが生まれる。
2006年3月3日、Zepp Tokyo。ツアーの最終日だった。モッシュとダイブで怪我人が出て、細美は2曲目の直後に演奏を止めている。「ちょっとどういうことか聞いてくるわ」とステージ裏に消え、戻ってきてこう言った。
「いいよな、さっき言った通りそっから柵の向こう側は全部お前らのもんだから。ルールが必要ならお前ら作ってくれよ。それは俺たちでも主催者でも押し付けるもんじゃないと思ってて。そうゆうのがイヤで、お前らライブハウスに逃げ込んでくるんだろ?」
「ここは大切な俺たちの遊び場じゃん? で、たとえば一人深刻に怪我をしてしまいました、俺たちは二度とライブやれなくなるよね。お前らの遊び場なくなっちまうよな」
ダイブは危険と隣り合わせだ。受け止め損なえば、人は頭から床に落ちる。飛んだ本人だけでなく、下にいた客が巻き込まれて怪我をすることもある。「嫌なら前に行くな」って話で片付けられる場合と、そうでない場合がある。

日本最大級のロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の公式サイトには、こういう注意書きがある。
「Jフェスでは、ダイブ、サークル・モッシュ等の危険行為を固く禁止しています。過去にダイブによる事故で深刻な後遺症の残る方が出てしまいました。(略)ダイブを行った参加者は、その時点で退場となります」
取り締まりが始まったのは2009年。主催するロッキング・オンの編集長・山崎洋一郎は、その年にこう書いている。
「僕らは、お客さんが安全であることを選んだ。ダイブ・モッシュ禁止というルールの中で音楽が楽しめるフェスを目指そうと決断した。」
安全を選んだ。
Hi-STANDARDのギタリスト、横山健はこの禁止に反発した。しかし2016年には「その条件を飲む」と書いて、このフェスに出た。安全を守りたい人間がいて、ライブから失いたくないものを持っている人間がいた。
その両方がいた。

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2023年には、サークル・モッシュ中に4人が肋骨を折るなどの負傷が出た。禁止されていても、事故は起きた。だからといって、モッシュやダイブを好きだった人たちが、危険を好む無責任な人間だったことにはならない。
マキシマム ザ ホルモンは2012年、SHIBUYA-AXの床をテープでマス目に区切り、中央にモッシュとダイブが許されるエリアを作った。全面禁止ではない。全部自由でもない。場所を分けた。
猪木ダーッ 小島バカヤロー 蝶野正洋は自分たちを「野党だ」と言った
ライブがダイブなら、プロレスは声だ。プロレスの客席の声は、ブーイングだけではない。コールアンドレスポンスもある。