[週刊ファイト11月06日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼「軍艦御殿」最後の宴:梶原一騎邸で語られた伝説と“梶原イズム”の継承
by 丸中 康
・開幕─“軍艦御殿”で開かれた特別な一日
・添野義二が語る“極真の龍虎”と昭和の無頼・梶原一騎像
・“伊達直人”河村正剛、タイガーマスクが生んだ愛と行動の連鎖
・笑いでつなぐ梶原愛:丹下段平&白木葉子モノマネショー
・原稿紛失事件の真実─編集者が語る梶原一騎の器
・AI梶原一騎構想:学者と漫画家が描く未来へのバトン
・高森町と高森高校、故郷が担う“梶原遺産”の行方
・漫画家対談:下條よしあき&にわのまことが語る“原作の力”
・終幕─ファンが見届けた“梶原イズム”の灯
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10月4日に梶原一騎先生の御子息である高森城氏、及び氏が代表を務める「有限会社梶原プロダクツ」主催の「飲み会」が、梶原一騎邸にて開催された。今回、その様子をレポートとしてまとめてほしい、という依頼をいただいたので、僭越ながら執筆させていただくこととなった。ただ、当初はこのようなレポートを書く予定はなく、一参加者として楽しんでいたため、酔いも手伝ってところどころ記憶が怪しい場所もある。また、トークショーも途中で席を外したりもしているので、すべては聞けておらず、不十分な箇所もあるかとは思うので、その点は読者の皆様にもご寛恕いただきたい。
開幕─“軍艦御殿”で開かれた特別な一日

10月4日、駅からバスに乗る途中、梶原作品のTシャツを着た参加者の姿があちこちに見え、すでに祭りの気配が漂っていた。
梶原邸には開場予定の12時半より早く着いてしまったため、受付だけ先に済ませて敷地内でしばし待機、開場とともに邸内へとお邪魔した。リビングがトークショー兼飲み会会場、客間は飲み会中心の参加者の宴会場となっており、開演までの約1時間、ファン同士で酒を交えながらの交流が始まった。梶原ファン同士、初めて合うにも関わらず、梶原作品の魅力や、自分の好きな作品、ぜひ読んでほしい作品などを、酒を飲みながらお互いに語り合っていた。私もいろいろな方と話をさせていただいたが、「空手バカ一代」「巨人の星」など有名どころ以外はそこまで知らないというライトな方から、「タイガーマスク」雑誌連載時のカラーページ(コピー)のファイリングなど、貴重な資料を持参されたディープな方まで、実に様々なファンが一同に会していたように思う。

さて、トークショー開始に先立っては、高森城氏からこの飲み会の趣旨が語られた。この「軍艦御殿」と呼ばれた梶原邸を取り壊すことになったこと、それに伴って、せめてこの場をこういう形で開放して、心に留めていただきたい、という思い――参加者は皆その言葉を胸に刻み、この日を目いっぱい楽しもうと気持ちを新たにしたようだった。
添野義二が語る“極真の龍虎”と昭和の無頼・梶原一騎像

この挨拶に続いて、トークショーの先陣を切ったのは「空手バカ一代」にも登場する「極真の龍虎」の一人、士道館の添野義二総帥である。漫画家のすすき寿ひさ氏を聞き手に迎えて語られたのは、タイへの遠征や芦原英幸先生、今年6月に亡くなられた山崎照朝氏との思い出、警察に捕まった時の話など、様々な内容がユーモラスに語られた。内容の際どさゆえに、ここでは紹介できない話も少なくないが、梶原先生について語られた中から、いくつか印象的な言葉を挙げておきたい。
たとえば「世間の評価を気にせず、自分の目で見て判断する」といった信念、あるいは「こいつとこいつを戦わせるならいくら必要かと計算し、自分でその金を出してしまう」といった豪快さである。観察眼の鋭さと気前の良さが同居した人物像は、まさに“昭和の無頼”そのものだろう。添野総帥は、そんな梶原先生を「子供みたいな人だったんでしょうね」と穏やかに評していた。また、梶原先生が亡くなる前にもこの邸宅でお会いして「体に気をつけろよ、風邪なんて引くなよ」と声をかけていただいたそうだ。しかしその10日後、梶原先生のほうが亡くなられてしまった、というエピソードも語っていただいた。
この添野総帥のトークショーは、YouTubeにも全編上がっているので、興味を持たれた方はぜひご視聴いただきたい。最後には、皆で「空手道おとこ道」「空手バカ一代」を熱唱し、添野総帥のトークは終了した。
“伊達直人”河村正剛、タイガーマスクが生んだ愛と行動の連鎖

添野総帥に続いては、当初の予定にはなかった河村正剛氏が緊急参戦。養護施設に「伊達直人」の名でランドセルを寄付し、いわゆる“タイガーマスク運動”の先駆けとなった方だ。河村氏は活動に込めた思いを力強く語ってくれた。要約すると、河村氏自身も伊達直人と同じく幼い頃は「みなしご」として育ったという。大人になってから、かつての自分と同じ境遇にある子どもたちに何かしてあげたいと考えたとき、ふと頭に浮かんだのが、少年時代に夢中で読んだ漫画『タイガーマスク』の主人公だった。彼はその名を借り、匿名でランドセルを贈るという行動に出たのだという。
そして、その時ランドセルを受け取った子供が成長し、初めてアルバイトをしたお金で「自分にバッグをプレゼントしてくれた」という話。すでに知られているエピソードではあったが、本人の口から語られ、そして実際にそのバックを見せられたその瞬間、会場の誰もが胸を熱くし、思わず目頭を押さえずにはいられなかった。
現在河村氏は「梶原先生が残した伊達直人の弱き弱い立場の人を支える、これを体現したい」「人を支える人生を作ってくれたのがタイガーマスク」という思いから、政治家として活動しており、次期衆院選への立候補も予定しているという。
笑いでつなぐ梶原愛:丹下段平&白木葉子モノマネショー

感動の余韻を打ち破ったのは「あしたのジョー」の丹下段平と白木葉子のコスプレで登場したお笑い芸人二人組。丹下段平は「ガンリキ」の佐橋大輔氏、白木葉子はこいでまほ氏だ。出落ちのような登場ながら、芸の内容は本格派。佐藤氏の丹下段平のモノマネは、往年の梶原ファンの口からも思わず「似てる……」と唸るほどの再現度。そしてそれに引き続いたのは「現在ではありえない表現を使っているため、『ピー』音が入ってしまった丹下男平と白木陽子の会話」。いわゆる差別用語の部分に、自らの口で『ピー』音を被せるというものであるが、その誇張表現と『ピー』音の多さに、会場は窒息せんばかりの笑いに包まれた。