[ファイトクラブ]後楽園1,532人熱狂! 『丸藤正道25周年興行』 ウィル・オスプレイ戦

 2023・9・17に行われた丸藤正道デビュー25周年記念興行には、コロナ禍以降のプロレスリング・ノア後楽園ホール大会では最多となる1,532人が詰めかけた。そのお目当ては、丸藤とウィル・オスプレイによる初のシングルマッチ。「技の70%は丸藤に影響を受けた」と公言しているオスプレイと丸藤のドリームカードは、NOAHファン、新日ファン、プロレスファンを唸らせる世紀の一戦となったのである。本誌では、メインイベントを中心に丸藤25周年大会の全試合レビューを掲載する。


[週刊ファイト9月28日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼後楽園1,532人熱狂! 『丸藤正道25周年興行』 ウィル・オスプレイ戦
 photo & text by 鈴木太郎
・夢試合後楽園選択理由はビッグマッチとの兼ね合い?
・聖地超満員を9・24名古屋に繋げられるか
・丸藤の所作に尊敬溢れたオスプレイ23分+ ストームブレイカー夢試合
・25周年試合も夢実現はオスプレイだった?
・丸藤ファンにオスプレイファンも歓喜の内容
・10人タッグでの『ジェイク・リーvs.潮崎豪』 前哨戦も手の内明かさず
・衝撃マスク剥ぎ! イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr荒ぶる反則負け
・6人タッグ清宮海斗勝利も拭いきれなかった「ワンパターン」批判
・日向小陽と新婚・征矢学~観客声援&赤まむしパワーでREAL粉砕!
・実力差露呈した『大岩陵平-宮脇純太』宮脇不振脱出腕攻めにアリ?
・若手勢ベテランに肉薄も杉浦貴フロントネックロック葬で小澤下す
・宙に浮いたGHC Jrタッグ不安なし! 決定戦前哨戦アレハンドロ制す


■プロレスリング・ノア 『CLEANUP INTERNATIONAL presents 「真・飛翔 〜丸藤正道デビュー25周年記念大会〜」』
■日時:2023年9月17日(日) 11:30開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆: 1,532人

 2023・9・17、丸藤正道デビュー25周年記念興行が開催された。両国国技館で行われ、往年のベテランから他団体所属まで数多くのレスラーが集結した2018年の20周年記念興行とは一転して、今回の25周年記念は後楽園ホール。参戦選手もメインで丸藤と激突したウィル・オスプレイを除いた特別参戦選手は0人。あくまでも現在進行形のNOAHを見せることに徹していた。

 メインの『丸藤vsオスプレイ』が発表された時点で、ファンクラブ先行分として予定していたチケットは完売。僅かに用意された一般販売分も早々に売り切れ、急遽用意された立見席も完売と、『中嶋勝彦vs.宮原健斗』が組まれた7・15NOAH後楽園ホール大会を上回るペースだった。

▼『中嶋勝彦-宮原健斗』で見たプロレスの素晴らしさと負け惜しみの醜さ

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▼健介道場ノア中嶋勝彦-宮原健斗への関心から斬る専門媒体評論役割

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 今回の一戦をビッグマッチではなく、後楽園ホールで開催したことを惜しむ意見もファンからは出ていたが、筆者は後楽園で良かったと考える点が2つ程ある。1つ目は環境の変化だ。丸藤20周年~25周年までの5年間で、NOAHを取り巻く環境は劇的に変化した。2019年春に親会社がリデット・エンターテインメントになり、2020年以降はサイバーエージェントグループの傘下となったNOAHだが、リデット体制以前のNOAHでビッグマッチと呼べるものは、年2回の横浜文化体育館くらいしかない状況だった。丸藤20周年の時は・・・を理由にしないと両国国技館の舞台に打って出られる空気でもなかったのである。
 そして2つ目は、25周年興行の1週間後に名古屋国際会議場でのビッグマッチを控えていた点ではないか。今年9月のNOAHビッグマッチは、9・3エディオンアリーナ大阪第一競技場と9・24名古屋国際会議場の2大会もある事を踏まえると、開催地が分散しているとは言え、関東圏で組むにしても正直食傷気味である。GHC王座戦が組まれる名古屋に注力したい事を考えた時に、丸藤の25周年興行で今のNOAHの流れを広めつつ、翌週の名古屋に繋げていく展開には頷ける面も多い。

 とはいえ、大盛況だった今大会とは対照的に、名古屋の券売状況は苦戦を強いられている。ようやく地方ビッグマッチでも1,000人超えが見込めるようになった今のNOAHでも名古屋は鬼門だ。今年6月の名古屋ビッグマッチも『ジェイク・リーvs.杉浦貴』のGHCヘビー級王座戦を組み、会場は盛り上がっていたのだが、土曜夜開催でも動員は1,000人を割り込む結果となった。今回の名古屋は、近年のNOAHビッグマッチでも中々組まなくなっていた5大GHC王座戦を名古屋に一極集中するも、券売は芳しくないという。その影響もあるのか、NOAH公式や名古屋メインでGHCヘビー奪還を狙う潮崎豪が、今大会後に「名古屋大会に来てほしい」とSNS上で最後の陳情。潮崎は、新幹線や高速バスの料金プランを自ら調べた上で情報を拡散するなど、集客に向けてラストスパートをかけている。団体の公式アカウントやファン有志による発信なら未だしも、選手本人が料金プランまで調べて最後のお願いを呼び掛ける事例は非常に珍しい。長らく新日本プロレスやDRAGON GATE以外のプロレス団体で動員に苦戦すると言われてきた名古屋ビッグマッチにあって、前回の833人を超えることは出来るのだろうか?

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丸藤の所作に尊敬溢れたオスプレイ23分+ ストームブレイカー夢試合

<メインイベント スペシャルシングルマッチ>
●丸藤正道
(23分03秒 ストームブレイカー⇒片エビ固め)
○ウィル・オスプレイ

 丸藤正道の25周年記念試合は、「自分の技の70%は丸藤に影響を受けた」と豪語するウィル・オスプレイとの一騎打ちになった。現IWGP USヘビー級王者であり、32選手エントリーとなった今年の『G1 CLIMAX』でも準決勝まで勝ち進みベスト4入りを果たすなど、今や新日本プロレスの押しも押されぬ主力との対戦だったが、フタを開けてみれば『継承試合』の面も色濃い、互いにリスペクト溢れる内容になったのである。

 序盤、丸藤の強烈な逆水平チョップを受けたオスプレイは、痛がる素振りを見せながらも表情からは感慨深さが窺えた。普通であれば、【皮膚を引き裂く】と表現されたことのある丸藤の逆水平チョップを嫌がり、受けることを避ける選手もいるのだが、オスプレイのようにチョップを被弾して嬉しそうな様子を見せた選手はこれまで皆無であった。まるでそれは、アントニオ猪木信者が猪木本人から闘魂ビンタを喰らった時の光景に近いのだろう、と・・・。

 試合に関しても、随所に丸藤を感じさせる所作が飛び出していた。正面から相手を飛び越える跳躍力、反対のコーナーにいる相手にドロップキックを浴びせる【コーナーtoコーナー】、虎王のようにして視界にいきなり飛び込んでくるトラースキック。オスプレイがタイガードライバーを繰り出せば、丸藤も今では機会が減ってしまった、全盛期を思わせるエプロン際での断崖式の技で対抗する。日本国内にも丸藤のフォロワーはいそうなものだが、国籍も異なる一人の青年が、こうして憧れの選手と対戦する光景は、プロレスファンが待望していた7・15の『中嶋勝彦vs.宮原健斗』とは毛色が異なっていた。丸藤の25周年でありながら、夢を実現させたのは他ならぬオスプレイなのである。

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