[ファイトクラブ]潮崎豪-征矢学N-1悲喜交々 ジェイク・リー敗戦 稲村愛輝全敗⇒海外

 プロレスリング・ノアが贈る真夏のリーグ戦『N-1 VICTORY 2023』。優勝の行方は、拳王と潮崎豪の2選手に絞られる事となった。現GHCヘビー級王者であるジェイク・リーの勢いを止めると目されていた有力候補同士による一戦は、近年も因縁を築いてきた関係もあり、今のノアが自信をもって贈れる看板カードだろう。今回の最終公式戦が行われたカルッツかわさき大会では、選手の悲喜交々も交錯する人間模様が随所で垣間見られたのである。


[週刊ファイト9月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼潮崎豪-征矢学N-1悲喜交々 ジェイク・リー敗戦 稲村愛輝全敗⇒海外
 photo & text by 鈴木太郎
・ストーカー被害告白も雑音振り払った潮崎
・天敵・拳王打倒へ潮崎秘策は緩急にあり?
・急遽実現”優勝決定戦進出決定”潮崎豪ラリアット一閃で征矢学撃破!
・若手の戦法”丸め込み連発”活かした潮崎
・武田取締役も「NOAHの新たな柱」と絶賛した征矢学
・最終戦”王者のまま全勝優勝”潰えたジェイク・リー苦杯Block拳王1位
・【絶望を覚える制圧力】が無かったジェイク
・怖さ皆無なジェイクの原因は”星取り調整”にあり?
・『AXIZ』同門対決潮崎豪制す! フランケン⇒ラリアットで中嶋勝彦撃破
・因縁よりもスポーツライクが強調されたAXIZ対決
・稲村愛輝まさかのN-1公式戦全敗で『無期限海外修行』決断!
・稲村は若手不足&進まない新陳代謝の犠牲者である
・海外で箔を付けないと上に行けないノアの課題点
・【凱旋帰国後に即GHC王座挑戦⇒王座戴冠】が出来ないと・・・


■プロレスリング・ノア 『ABEMA presents N-1 VICTORY 2023』
■日時:2023年8月27日(日) 16:00開始
■会場:神奈川・カルッツかわさき
■観衆:1,694人

 8・6横浜武道館大会より開幕したプロレスリング・ノアのシングルリーグ戦『N-1 VICTORY 2023』。
 8・27カルッツかわさき大会での最終公式戦を終えて、9・3エディオンアリーナ大阪第1競技場大会で行われる優勝決定戦は『拳王vs.潮崎豪』に決まった。A・B両ブロック共に紙一重で決したブロック1位だったが、フタを開けてみれば、現GHCヘビー級王者のジェイク・リーに待ったを掛けるであろう優勝候補者同士による定番の顔合わせとなった。

 Aブロックは、勝ち点10のジェイク・リー(4勝2分)と、それを追いかける勝ち点8の拳王(4勝2敗)による直接対決の勝者がブロック1位通過というシチュエーションではあったが、拳王がジェイクの決定打を最後まで許さず、最後は炎輪(ムーンサルトフットスタンプ)を投下して3カウントを奪取した。今年1月のNOAHマット参戦以降、シングルやタッグで無敗を続けてきたジェイクだったが、初黒星を喫しただけでなく、リーグ戦にも敗退するという波乱。”王者のまま全勝優勝”という夢は川崎の地で潰えることとなった。

 一方のBブロックは、最終公式戦を前に、潮崎豪、中嶋勝彦、イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr、征矢学の4選手にブロック1位の可能性が残る混戦模様となった。最終公式戦では、征矢がワグナーJr、潮崎が中嶋にそれぞれ勝利した事で勝ち点9になるも、8・26仙台大会の直接対決がドローだった事を受け、メインイベント終了後に両者の”優勝決定戦進出者決定戦”が急遽実現。潮崎と征矢による20分超えの激闘を制し、1位通過を果たしたのは潮崎豪だった。
 今年のリーグ戦期間中には、一部ファンによる家族を巻き込んだストーカー被害に遭っている事を自らSNSで告白するなど、リング外の雑音が聞こえてくる中でも、久方振りとなるリーグ戦の優勝決定戦進出を果たしたのである。潮崎がシングルリーグの優勝決定戦に進出したのは、N-1の前身である『GLOBAL LEAGUE』に出場した2017年以来6年振りの事。奇しくも、この時の対戦相手も拳王だったのだから、つくづく因果は巡るものだと実感させられる(当時は拳王が勝利し、初出場初優勝)。

 拳王と潮崎の直接対決は、直近だと2023・6・22後楽園ホール大会で実現している(この時は拳王が勝利)。
 試合後に拳王が「もしな、テメーが悔しかったら、N-1決勝まで上がって、俺の首を取りに来いよ。」と潮崎に言い放った事は記憶に新しいところだが、この言葉にもあるように、両者の直接対決では潮崎が拳王を追いかける状況が続いている。先述した2017年の『GLOBAL LEAGUE』優勝決定戦では、ヘビー級転向から僅か1年足らずの拳王に敗北を喫し、2020年8月の横浜文化体育館大会で行われたGHCヘビー&GHCナショナルのダブルタイトルマッチは60分フルタイムドロー。その後、2022年の2月と8月、2023年の6月に計3回組まれたシングルマッチでも、拳王がいずれも勝利しているのだ。

 潮崎にとって拳王は、正に天敵中の天敵と言っても過言ではない相手だが、今年のN-1期間中には、潮崎の戦い方に変化も見られた。以前なら、フィニッシュの豪腕ラリアットへ持っていく中で、ゴーフラッシャーやリミットブレイクなどの強い投げ技でダメージを与えていくパターンが定石となっていた中、今大会の中嶋勝彦戦で【フランケンシュタイナー⇒豪腕ラリアット】、征矢学戦では【丸め込み連発⇒豪腕ラリアット】と、相手の意表を突く形からフィニッシュに繋げ、見事に成功しているのだ。
 試合の序盤でも、安齊勇馬戦で見せた変型ストレッチプラムのような絞め技や、征矢戦での執拗な腕攻めを用いるなど、良く言えば王道・悪く言えば単調になりがちだった潮崎の試合パターンは、今回のリーグ戦で拡がった印象を受ける。この変化が優勝決定戦ではどのように戦況を左右するのか、天敵・拳王を倒すことに繋がっていくのか、当日は注目していきたい。


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急遽実現”優勝決定戦進出決定”潮崎豪ラリアット一閃で征矢学撃破!

<第11試合 N-1 VICTORY 2023 Bブロック優勝戦進出者決定戦>
○潮崎豪 9点(4勝2敗1分)
(22分33秒 豪腕ラリアット⇒体固め)
●征矢学 9点(4勝2敗1分)
※潮崎豪がN-1 VICTORY 2023 優勝決定戦に進出決定

 「誰が勝つのかわからない。でも、誰が勝ってもおもしろい。」

 今年のN-1期間中、各大会で流れたオープニングVTRのフレーズだ。このフレーズを象徴するかのように、今年のBブロックは混戦に次ぐ混戦となった。

 最終公式戦を前に、ブロック1位の可能性が4選手に残されたものの、最終公式戦を消化した段階で勝ち点トップは潮崎豪と征矢学の9点。トップ同士の勝ち点が最終戦で並ぶ事自体は、さほど珍しいことでもない。勝ち点が並んでも、直接対決で勝っている選手が1位通過になるからである。しかし、今回ばかりは様子が違った。カルッツかわさき大会前日の、仙台PIT大会で実現した潮崎と征矢の直接対決は、時間切れドロー。勝敗つかずに1位が決まらない状況を受けて、下された結末は【潮崎と征矢による、優勝決定戦進出者決定戦】だった。

 当初の大会メインだった『拳王vs.ジェイク・リー』の試合後に急遽組まれた再戦は、双方2試合目と思えぬ程の激しい展開へと突入していく。征矢はゴング直後に丸め込みで短期決着を狙い、潮崎が征矢の右腕を執拗に攻めて主導権を握るも、両者も中々均衡が破れない。
 熱戦に見えて、振り返った時にヤマがない内容だった気もするが、終盤に入ってから潮崎がスクールボーイに逆さ押さえ込みを見せたことで意外性が生まれた。そこから最後は豪腕ラリアットで征矢を沈め、潮崎がBブロック1位の座を掴んだのである。若手が格上の相手に用いる丸め込み連発を、形振り構わず取り入れた潮崎の執念が勝敗を分けた。

 惜しくも決定戦に敗れた征矢だったが、2021年が3戦全敗、2022年はエントリー無しという状況から、今年は見事に勝ち点を9まで積み上げて優勝戦線へと躍り出た。大会後、ノアの武田有弘代表取締役からは「ここにまたNOAHの新たな柱が誕生した瞬間でした」と名指しで評価されるなど、今年のN-1で飛躍を遂げた選手だと言えよう。


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