[ファイトクラブ]”外敵三冠戦”全日後楽園を斬る!三冠王者の役割・永田裕志T-Hawk撃破

 『チャンピオンカーニバル2023』覇者・芦野祥太郎欠場により、三冠ヘビー級王座戦が『永田裕志vs.T-Hawk』の外敵同士による一戦となった2023・5・29全日本プロレス後楽園ホール大会。所属選手のいないメインイベントに戦前は不安があったものの、所属外の両者が生み出した激闘は、三冠戦に相応しい内容を担保していた。王座防衛を果たした永田の前に現れたのは、全日の新星・安齊勇馬。デビュー約9ヶ月での三冠王座挑戦を時期尚早と見る向きもあるものの、筆者は安齊の三冠挑戦を全力で肯定したい。その理由とは・・・。


[週刊ファイト6月8日合併号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼”外敵三冠戦”全日後楽園を斬る!三冠王者の役割・永田裕志T-Hawk撃破
 photo & text by 鈴木太郎
・「今の永田裕志も、やれば出来るじゃないか」
・外敵同士の三冠戦で輝く”裸の三冠王者”
・安齊勇馬デビュー9ヶ月で三冠王座挑戦!王道エース序章刻めるか?
・安齊の三冠挑戦表明は時期尚早なのか?
・着実に付けた安齊の地力に期待
・いつか訪れる”エース・安齊”という王道の第一歩
・T-Hawk献身性+永田裕志 高耐久性で盛り上がった外敵同士の三冠戦
・若いキャリアの選手に打ちのめされながらも耐えて勝つ姿見たい
・世界タッグ諏訪魔敗戦&追放【至宝奪還≦Voodoo Murders内紛】終始
・VOODOO MURDERSの御家事情が目立った世界タッグ
・今回の追放劇がユニット再編の呼び水になる可能性大
・土井成樹徹底的観客煽りも青柳亮生リベンジで世界Jrヘビー級王座陥落
・DRAGON GATEのヒール時代思わせる土井の嫌われっぷり
・土井大ブーイングと自然発生的な亮生コール光る


■全日本プロレス 『#ajpwスーパーパワーシリーズ2023』
■日時:2023年5月29日(月) 18:30開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:834人

 「今の永田裕志も、やれば出来るじゃないか」

 『永田裕志vs.T-Hawk』の三冠ヘビー級王座戦を見終えた直後の、筆者の率直な感想である。上から目線になってしまうが、そう言いたくなるくらい、この日の永田は素晴らしかった。

 永田が2023年2月に三冠王座を奪取した直後、「全日本プロレスを盛り上げていきます」と述べたものの、当の本人は試合でも存在が消えていたし、Twitterで発信する内容も参戦先の全日本プロレスの内容ではなく、自身が参戦していない新日本プロレスの話ばかり。それでいて、今全日本プロレスでやっていることと、インタビュー等で語る自負が明らかに不釣り合いに映るほど、自己評価が高い。いつしか永田は”裸の三冠王者”とも言うべき状況で、全日ファンを中心に相手にされなくなっていった。

▼居場所作りに契約話する愚かさ“宮原健斗x永田裕志”三冠戦前に物申す

[ファイトクラブ]居場所作りに契約話する愚かさ“宮原健斗x永田裕志”三冠戦前に物申す

▼歓迎されない三冠王者・永田裕志 原因は“会社員的振る舞い”にアリ

[ファイトクラブ]歓迎されない三冠王者・永田裕志 原因は“会社員的振る舞い”にアリ

 そんな中、今大会で行われた三冠王座戦では、永田当初は『チャンピオンカーニバル2023』覇者・芦野祥太郎の挑戦を受ける予定だったものの、優勝決定戦で負った怪我により欠場を発表。紆余曲折を経て挑戦者として登場したのは、GLEAT所属のT-Hawkであった。

▼批判溢れるSNSも会場行けば多幸感!全日チャンカン大団円・芦野祥太郎

[ファイトクラブ]批判溢れるSNSも会場行けば多幸感!全日チャンカン大団円・芦野祥太郎

▼チャンカン覇者・芦野祥太郎欠場!児玉裕輔&花畑正男参戦!

チャンカン覇者・芦野祥太郎欠場!児玉裕輔&花畑正男参戦!全日本プロレス一部対戦カード変更

 『チャンピオンカーニバル2023』準優勝という実績こそあるものの、全日本プロレス所属外の選手による、異例の外敵同士の三冠王座戦。正直なところ、戦前は盛り上がりに欠けるのではないかという不安もあった。しかし、そうした懸念は激闘によって杞憂に終わった。
 所属のいないシチュエーションによってノレない試合になるかと思いきや、T-Hawkが文字通り所属選手の想いを背負ったことで、全日ファンの声援を受け止める役割を全うし、王者・永田は全日マット参戦以降突き抜け切れていなかった強さを見せつけることに成功した。
 この試合に対して全日ファンからの不満は少なからずあろうが、筆者は今回の試合内容には満足している。この試合内容が継続できたなら、永田の下がりきっていた株も上昇傾向に向かうことだろう。

安齊勇馬デビュー9ヶ月で三冠王座挑戦!王道エース序章刻めるか?

 そんな激闘の三冠王座戦後に、永田の持つ三冠王座に挑戦表明したのは、キャリア僅か8ヶ月の安齊勇馬だった。

 大会後、安齊の挑戦表明に対して「内容を積み重ねてほしい」、「ノレない」などの不満を述べる全日ファンも現れたが、安齊の挑戦表明は時期尚早なのだろうか? 筆者はそう思わない。
 『チャンピオンカーニバル2023』覇者の芦野祥太郎に公式戦で勝利しているし、今大会の前に組まれた三冠王座挑戦者決定戦でT-Hawkと対戦した本田竜輝にも、今大会のシングルマッチで直接勝利を収めるなど、実績は十分。何より、安齊のデビュー戦の相手は永田なのである。当時、所属選手が新人デビューの相手を務めない事に否定的な意見も見られたが、こうして産み落とされた点が、巡りめぐって三冠王座戦に結び付く軌跡に、プロレスの面白味を感じずにはいられないのだ。

 全日本プロレスに限らず、プロレスで浅いキャリアから早めに出世させていく場合、得てして付きまといがちなのは「挫折が足りない」、「苦労が感じられない」という周囲からの指摘だろう。出世のタイミングは読めないものだが、この時流を見誤れば最後、「早々に出世していてノレない」なんて難癖にも近い指摘が主力になった後も付きまとうのである。
 しかし、安齊の場合は団体が段階を大事に踏ませてきた事が窺える。デビュー数ヶ月で永田裕志、鈴木みのる、鷹木信悟といった外部からの有力選手とシングルが組まれたり、『世界最強タッグ決定リーグ戦』や『チャンピオンカーニバル』参戦で先輩選手から勝利したりした事は破格待遇に見えるが、安齊もその中で一歩ずつ内容を高めていった。その集積が、5月の大田区大会で内藤哲也らに対峙しても堂々たる戦いを見せ、今大会で本田から文句なしで勝利する結果に繋がったのではないだろうか? 
 簡単に剝がれてしまうメッキならば、そうした大一番で簡単にボロは暴かれる。しかし、着実に付けた地力は裏切らない。その地力に期待感があるからこそ、筆者は安齊の三冠王座挑戦を心から肯定したいのだ。

 そもそも、今の全日本プロレスの若手選手たちは、他団体に比べても全体的に出世が早い部類に位置している印象を受ける。2018年11月にデビューした大森北斗、2019年1月デビューの青柳亮生や田村男児などの筆頭格はデビュー3年以内にタイトルないしリーグ優勝を経験しているし、斉藤レイと斉藤ジュン、井上凌もタイトル獲得経験は無いものの、若手と思えぬ存在感や武器を手にしつつあるのだ。安齊も例外なくその中に入る選手だろう。
 6・17大田区総合体育館ビッグマッチで組まれた三冠挑戦の舞台は、いつか訪れるであろうエース・安齊という王道を歩む第一歩として刻まれるのではないだろうか?

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン