[ファイトクラブ]歓迎されない三冠王者・永田裕志 原因は“会社員的振る舞い”にアリ

 【プロレスの日】にグランドスラム&『シングル完全制覇』の大偉業を成し遂げた永田裕志。
会場は大いに盛り上がった一方で、大偉業を成し遂げた永田に対する周囲の評価は、どこか冷ややかにも映る。
 この盛り上がりを欠いた偉業のワケは、外野にベルトの欲や全日を盛り上げようとする思いが伝わってこない、永田の会社員的な振る舞いに原因があるのではないだろうか?
 『宮原健斗vs.永田裕志』を観戦した筆者が、忌憚なき感想を綴る。


[週刊ファイト3月9日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼歓迎されない三冠王者・永田裕志 原因は“会社員的振る舞い”にアリ
 photo & text by 鈴木太郎
・大偉業にも、冷ややかなファンの目線
・『忖度』なんかではない大声援の差
・ファンの願いが導いた永田の勝利
・与えられた場を、ただこなすだけの姿
・欲や野望が見えてこない挑戦者
・良くも悪くも”会社員”的なスタンス
・評価逆転のカギは、声援と因縁?
・永田は全日ファンを認めさせる存在になれるのか?


 2023・2・19全日本プロレス後楽園ホール大会

 【プロレスの日】に行われた三冠ヘビー級王座戦・『宮原健斗vs永田裕志』は、永田がバックドロップホールドで勝利を収め、三冠王座初戴冠を果たした。


 史上4人目となるシングル王座グランドスラム(IWGPヘビー、GHCヘビー、三冠ヘビー)を果たしただけでなく、既に制覇していた3大シングルリーグ(G1クライマックス、チャンピオンカーニバル、GLOBAL LEAGUE)も加えると、史上初の『シングル完全制覇』を達成した。
 この記録は、グランドスラム達成者の佐々木健介、武藤敬司、小島聡も達成していない大偉業である。

 大偉業は、プロレス専門誌の表紙を飾るトピックとして認識された。
 その一方で、この快挙に対する反応は、意外なくらいプロレスファンに波及しきれていない点も感じる。中でも、全日ファンからは、流出という事象以上の強い反応が散見された。

「もう、全日本プロレスを観るのを止めようかな」

「これが大手団体に忖度した結果なのか・・・」

 このような反応を見て、私自身、納得する点もあれば、そうでない点もある。
 個人的に今回の三冠戦が盛り上がりに欠けた最大の要因は、宮原の問いに対する永田のピントがズレた回答と、永田が実力を以て全日ファンを納得させる内容を提示できぬまま三冠戦当日を迎えてしまったことではないか、と推察している。

 その一方で、今回の三冠戦を通じて、王座戦の勝敗以上に全日ファンが受け入れなければいけない現実があった。正直なところ、宮原の前に爪痕や内容を残せないまま終わると思っていただけに、ただの凡戦で終わらなかった点は評価できるから。
 ただ、引っ掛かりがあるのも確かだ。

圧倒的な声援の差は、忖度では決してない

 今回の三冠王座戦において、【声援解禁】というトピックは欠かすことのできない要素だった。

 声援があったことで試合の盛り上がりに大きな違いが生まれただけでなく、「声援で勝たせる事が出来る」という力を、この試合でまざまざと見せつけられたのだから。

 前説のコール練習では宮原に軍配が上がったものの、試合開始直後の声援が五分だったことを思うと、戦前の永田に対する風当たりの強さを感じさせない雰囲気が現地には間違いなく存在していた。
 それどころか、終盤戦に入ると、永田コールが全日の会場を支配していたのである。体感にして、1:9の割合だっただろうか? 会場に訪れた多くの永田ファンだけではなく、私の近くにいた観客も永田を応援していた。


 試合自体も、試合を支配する宮原に対して、腕攻めで反撃する仕掛け方だったり、最後の畳み掛けだったり、前述したようなファンの批判意見とはイコールにはならない内容を見せていた。


 この日の試合内容に対して「忖度だ」と声高に言うくらいなら、少なくとも現地組は、永田に声援が送られていたタイミングで健斗コールを巻き起こしていれば良かったのではないだろうか、と私は思う。
 永田が声援を背に受けて勝つ構図は、決して忖度なんかで作る事が出来る光景ではない。ファンの勝って欲しいという願いが、永田を勝利に導いた。
 団体の力関係に言及するよりも、幾分か変えられたかもしれない光景や雰囲気を直視した方が良い。五分五分の声援が終盤に引っくり返されたのは、紛れもない事実だったのだから。

良くも悪くも”会社員”的な永田のスタンス

 その一方で、納得のいかないファンの気持ちも理解できる。

 永田が今の全日本プロレスに上がりはじめてからというもの、特段目立つような話題性はリング内外で提示できていなかったように感じている。
 与えられた場で淡々と役割をこなすだけで、今回の三冠王座にしても、本人の強い欲だとか目標がイマイチ見えてこなかったのだ。

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