[Fightドキュメンタリー劇場 41]I編集長 記者を控室からシャットアウトするのは間違いですよ、ドンッ!

[週刊ファイト9月29日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼[Fightドキュメンタリー劇場 41] 井上義啓の喫茶店トーク
 I編集長 記者を控室からシャットアウトするのは間違いですよ、ドンッ!
 by Favorite Cafe 管理人


 I編集長は、記者やカメラマンが自由に控え室に出入りできなくなっている現状(1997年当時)に、「これでいいのか?」と問題提起。「ファンの知り得ない控え室の出来事や、選手の様子をマスコミがしっかり伝えなければ、プロレスは廃れてしまう」と少々お怒り気味の喫茶店トーク。

■ 闘いのワンダーランド #054(1997.02.18放送)「I編集長の喫茶店トーク」
 1978.10.30 岡山武道館
  NWA認定北米タッグ選手権試合
  坂口征二&ストロング小林 vs. キラー・カール・クラップ&ブルート・バーナード

1978年10月30日 岡山武道館 坂口&小林組(TV放送画面より)

(I編集長) 私はこの番組の「喫茶店トーク」で好き勝手なことを喋っていますから、団体関係者なんかは顔をしかめているんじゃないでしょうか。今日は、そんなお話もさせていただきます。今日放送された北米タッグ選手権の試合は、謎かけの多い試合だったんですね。その謎かけとは、

・なぜ、クラップのクロ-攻撃が中途半端だったのか
・なぜ、バーナードは徹底的な反則攻撃をださなかったのか
・なぜ、坂口&小林組の攻撃が速かったのか
・なぜ、バーナードに元気がなかったのか
・なぜ、小林は無謀なベアハッグをクラップに仕掛けたのか

(I編集長) 当時のプロレス記者は今とは違って、外人レスラーがバスに乗って会場入りして来ますとね、もうそこで待っておるんですよ。バスを降りたところからついて回って、一緒に控え室に入る。全部ついて回るわけです。そして控え室に入ったら、レスラーの様子を見ながら話を聞いたりするんですね。この日はクラップが控えの部屋に入るなりね、いきなり水道の蛇口を開けて、手を冷やし始めたんです。よく見たら、クラップが冷やしているのは右手の親指なんですね。そして顔をしかめている。さらにバッグから塗り薬を出して塗って、若手レスラーに「おい、タオルを水に冷やして持って来てくれ」と注文するんですね。それで持ってきてもらったタオルで、しかめっ面をしながら右手を冷やし続けていたんです。ウチの記者がそれを見ていたから、「クラップは自分の武器である右手を痛めている。特に親指を痛めている」と分かったんですね。ウチの記者がクラップの世話をしている若手に「クラップはどうしたんだ?」と聞いたら、「右手が酷い状態です」と返ってきたんです。記者はそれを聞いたら、「今日の試合はどうなるんだろう」と考えますよね。

(I編集長) 実はその2日前に、クラップは猪木と坂口に“青銅の爪”の右手を「ガンガンがんがん」やられているんですよ。踏みつけられたり、蹴飛ばされたり、鉄柱に叩きつけられたり。本当はそれをしちゃいけないんですよね。クラップの利き手の右手を攻撃しすぎたらダメなんですよ。プロレスの掟破りですよ。でもそれを新日はやってしまうんです。猪木なんかは、「ドンドンどんどん」踏みつける、「バーン」と鉄柱に叩きつける。それをやるわけでしょ。そんなことをやられたから、クラップの右手は腫れ上がっているんです。クラップなんかは“青銅の爪”のクロー攻撃が売りもので、それしかないんだから、右手が使えないとどうしようもなくなるんですよ。控え室の様子を見ておったウチの記者の話を聞いていたら、この日クラップのブレーンクローが中途半端だったのは当たり前だな、となるんですよ、これ。人の頭は固いですからね、こんな右手を負傷した状態でクロー攻撃の力を込めると、逆に技を仕掛けている自分の手の方が痛いですよ。クラップはこの日、坂口の太ももに何度も何度もクロー攻撃を仕掛けているんです。右手を負傷していて、固い頭にはブレーンクローが出来ないからですよ。ブレーンクローも出してはいるんですけどね、迫力が無かったのは、そういう原因があったんです。これは控え室の風景を見ておったから分かったことなんですね。

太ももにクロー攻撃を仕掛けるクラップ(TV放送画面より)

(I編集長) そしてこの日、一方のバーナードはいつもの凶器攻撃をしなかった。これは未だに謎なんです。しかし、坂口がこんなことを言っていましたよ。「去年、バーナードが来日した時には、俺は徹底的に痛めつけられてしまって、もう泣き寝入り状態だった。ファンからも情けないと言われてしまった。それで今シリーズは遠慮せずにバーナードをやっつけてやろうと小林さんと話をした」と。それでその通り、シリーズ中、その前の福井大会か何かでも小林と一緒になってバーナードを徹底的に痛めつけたんですよ。バーナードは頭は割るし、何針も縫うしね、大騒動だったんですね。坂口は「バーナードは俺たちに恐れをなしている。やられたらやり返す、凶器なんかを使ったら、3倍にも4倍にもしてやり返してやる。今シリーズのバーナードはそれを恐れてコレまでのように思いっきり反則や凶器攻撃を仕掛けてこないんだ」と言いましたね。まあ、これは坂口がファン向けに用意したコメントかも知れませんけどね。

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(I編集長) 実は坂口・小林に気合いが入っていたのは、他にも理由があるんです。猪木が、坂口と小林の最近の試合は「たるんどる」と怒っていたことなんですよ。猪木は本人達には直接は言わなかったですよ。その代わりにこの日の猪木は会場に30分も早く入ってね、いきなり先頭に立ってリング上で「ガンガンがんがん」練習を始めたんですよ。それも、もの凄い剣幕ですよ。それで周りの選手は震え上がったんですね。いつもですと、坂口や小林は「チョロ、チョロッ」と練習をやってコーナーに引き下がって、マスコミ対応なんかをするんです。「坂口さん、調子はどうですか?」とかなんとか聞くと、さっき言ったようなコメントを答えてくれるんですよ。それも坂口や小林の仕事ですからね。だから猪木も見ていて、「もっとトレーニングをしろ」とは言えないんですよ、ちゃんとマスコミ対応の仕事をしているんだから。そういうことでいつも大目に見ていたんですよ。

(I編集長) でもその日はそうじゃなかったですよ。猪木がもう、もの凄い剣幕でトレーニングをやっているわけですからね。坂口、小林も必死になって練習するしかなかったんです、コレ。
それも、普通は5時半頃になったら練習が終わりますよね、観客を入れますから。それが、この日は6時を過ぎてもまだやっていたわけですよ。会場はもうお客さんが入ってますよ。坂口も小林も「ヒーヒー」言いながらやっていたんです。あとで坂口は小林と「小林さん、今日の練習はキツかったね」と話をしたに違いないですよ。この二人は仲がいいですからね。そういうことがあったんですよ。だから坂口も小林も体があたたまっているし、猪木が間接的にハッパをかけているんだから、気合いを入れてやらなくちゃならないとなって、試合でも「ガーッ」とやったんですね。それが結果的にいつもよりもハッスルしたプレーになったんですよ。記者の目で見ておっても「今日の坂口・小林は凄いな」となったんです。

開場前のリング上での練習風景(1986年頃)

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(I編集長) それともう一つ、控え室でウチの記者がバーナードを「ジーッ」と見ていて、別の事にも気付いていましたね。何かというと、いつもはクラップとバーナードは控え室でも仲が良いんです。ヒソヒソと話し合ったり、大声で笑ったりする。ところがこの日に限って、それが全く無かったんです。何故かバーナードとクラップが近づきもしない。もちろん話もしない。そしてそのまま、試合に出て行ったらしいんです。記者は「これは仲違いしている証拠だ」と言うんですね。だからバーナードには、そのことで気落ちする部分があったに違いないんですよ。そんなもんね、ハッスルプレーなんて出来ませんよ。ウチの記者はそう言っていましたね。

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