[Fightドキュメンタリー劇場 30]ザ・モンスターマン “恐怖の男” アリの用心棒

[週刊ファイト7月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼[Fightドキュメンタリー劇場 30] 井上義啓の喫茶店トーク
 ザ・モンスターマン “恐怖の男” アリの用心棒
 by Favorite Cafe 管理人

 新日本プロレスは、モハメド・アリに再戦を要求していた。アリ側から出された再戦受諾の条件は、猪木がアリの指名する格闘家と闘って完璧な形で勝利ってみせることだった。まず最初に対戦することが決まったザ・モンスターマンは、猪木にとっては未知の強豪、“恐怖の男”だった。

■ 闘いのワンダーランド #041(1997.01.30放送)「I編集長の喫茶店トーク」
 1978.02.03 札幌中島体育センター
  アントニオ猪木 vs. タイガー・ジェット・シン

流血したままセコンドにつく上田の絵面(えづら)がシュール(放送画面より)

(I編集長) 昭和50年代前半のアントニオ猪木を語る上で、一連の異種格闘技戦は、どうしても避けては通れません。アリ戦以降では、昭和52年8月2日、日本武道館で行われたザ・モンスターマン戦が異種格闘技戦として特筆すべき試合です。格闘技史上に残る名勝負であり、私の中の名勝負の一つとしても上げている凄まじい試合です。

(I編集長) そもそもモンスターマンとは何者なのか、ご存じない方もいらっしゃると思いますので、イロハのイからお話します。モンスターマンはアメリカのプロ空手世界ヘビー級のチャンピオンだったんです。当時はプロ空手のことを“マーシャルアーツ”と言っておったんですけどね。だから正確にはマーシャルアーツ世界ヘビー級チャンピオンなんです。

MSGで行われたプロ空手選手権を報じた週刊ファイトの記事

(I編集長) この男が猪木と闘うまでの戦績はもう凄まじいものでした。95戦無敗、それも圧倒的な勝ち方で、危ない勝ちなど一つも無いんですよ。これは、新間さんとかがアメリカまで行って持ち帰ったビデオや記録を検討した結果、分かった事なんです。当時モンスターマンというのは、我々、日本のマスコミにとってもファンの方にとっても、全く無名な存在だったんですね。

▼ファンを熱狂させた異種格闘技戦の真実:『ワー・プロを創った男』栗山満男の回顧録・第4章は、名勝負ザ・モンスターマン戦から殺気に包まれたウィリー・ウィリアムス戦までを徹底検証。
 

プロレスファンを熱狂させた異種格闘技戦の真実:『ワー・プロを創った男』

(I編集長) 前年、昭和51年6月26日に世紀の一戦「猪木vs.アリ」が行われました。これは御存じのような結果になったんですけども、それで猪木サイドがアリに再戦を要求したんです。アリ陣営に再戦を突きつけたんですよね。6・26はアリ側が出してきた理不尽な条件のせいで、ああいった試合をさせられた。これによって新日本プロレスは金銭的に多大な損害を被ったという理由ですね。だからそれを補償しろと、損害賠償請求と再戦要求を出したんです。

猪木vs.アリ(1976年6月26日 日本武道館)

週刊ファイトは、猪木vs.アリ再戦を煽り続けた

(I編集長) ただ、もうアリは再戦をする気は無かったですからね。アリはあのあと王座から転落するし、猪木と闘うなんて懲り懲りだと思っていた矢先ですよ。そこに猪木から「再戦しろ」と来たもんですからね。それでアリ陣営は困ってしまって、苦し紛れに「だったら俺が差し向ける二人の男と闘え。そして完璧な形で勝って、その試合をビデオに撮って持って来い。再戦する価値があるかどうかは、そのビデオを見て判断する」という無茶な条件を出してきたんですよね。

アリに再戦の意思は無かった

(I編集長) 二人の男とは誰か。当時いろいろリストアップされていたんですね。ジョージ・フォアマンの名前も浮上していたんですが、最終的にザ・モンスターマンとチャック・ウェップナーになったんですね。モンスターマンはアリが突きつけてきた刺客なんです。だからこの二人は、新日本プロレスがアメリカに行って探してきた格闘技戦の相手では無いんですよ。

ジョージ・フォアマンも対戦相手に浮上

(I編集長) ザ・モンスターマン、日本では無名の男だったんですが、この男は強かったんですよ。名前が出てきてから我々もいろいろと調べてみたらだんだん分かってきたんです。モンスターマンは街の喧嘩屋なんですよ。日本に来た時には、黒ずくめで殺し屋みたいな雰囲気がありました。モノを言わずに「ジローッ」と睨んでね、タダ者じゃ無い雰囲気がプンプン漂っていましたよ。
 新間さんに「コイツはいったい何者ですか?」と聞いても「俺もよく知らないんだ」と言うんですね。それで調べてみますと、実はこの男はアリの用心棒だったんですよ。今だからこういう話が出来ますけども、アリが「喧嘩をさせたらおそらく俺(アリ)よりも強いだろう」と言っていたほどの「殺し屋」なんですね。ですから非常に恐ろしい。

モンスターマンはプロ空手の強豪(8月2日の大会パンフレットより)

(I編集長) 95戦無敗という話をしましたよね、95戦無敗の中にはですね、寸止めとか、そういった“お嬢さんがするような試合”ばっかりじゃ無いんですよ。もう凄まじい死闘をやってるんですね。ホントの意味でのノールールマッチをこなしてきてるんですよ。アメリカですから街の喧嘩屋というのは沢山おりますでしょ。プロ空手だけじゃ無いですよ、アルティメット的な大会、あの当時はアルティメットなんて言う言葉もなかったですけどね、ハッキリ言えば真剣勝負の地下大会の修羅場を何回も何十回も経験し、くぐり抜けて、全部の相手をことごとく叩きつぶしてきた、そういった凄い男なんですよ。

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