7・8(金)公開!挑戦とは何か?登山家追う奇跡のドキュメンタリー映画『アルピニスト』

 7月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開される奇跡のドキュメンタリー映画『アルピニスト』は、武道プロレス格闘技のやる側や関係者、ファンにとっても衝撃作であるのみならず、色々考えさせられる必見作である。なにが奇跡なのか? 山岳アクション題材の映画は多々あれど、これは一人の究極のクライマーを追ったドキュメンタリー作品であるからだ。

 例えば1975年の映画『アイガー・サンクション』は、トレヴェニアンの原作をクリント・イーストウッドが監督、主演したどちらかと言えばスパイ映画である。雪山は絵になるし、登山シーンも売りではあった。1993年のシルベスター・スタローン主演の山岳アクション映画『クリフハンガー』も、サントラ音楽と敵役ジョン・リスゴーが記憶に残るがエンタメ作品には違いない。
 2000年の映画『バーティカル・リミット』は映画館で見たのではなく、DVDの裏ジャケットを見て監督コメンタリー他、特典映像が多そうなので購入。世界最難関と言われるK2を舞台にしており、『バットマン&ロビン』のクリス・オドネル演じる兄が、刑事ドラマ『メンタリスト』のロビン・タニー演じる遭難した妹を救出に行く物語だ。悪くはない作品だったが、舞台裏に興味がある筆者は正直、DVD特典映像のほうが遥かに堪能できたものだ。
 2010年の映画『127時間』は、ユタ州の渓谷で事故に遭い、岩に挟まれた右腕を自らナイフで切断することにより脱出した登山家の実話をジェームズ・フランコが演じた作品だ。なにしろリアルな事件を映画化したものだから記憶に残っている。

 ところが本作『アルピニスト』は、カナダ生まれの23歳の登山家マーク・アンドレ・ルクレールを2年間追い続けたドキュメンタリー映画であり、当たり前の話リアル度がまるで違う。「なぜ登山家は山に登るのか、そこに山があるからだ」だと禅問答になってしまうが、子供の頃にADHD(注意欠陥障害)と診断され、社会にうまく適合出来なかったマークが、命綱なし、たった独り(ソロ)で断崖絶壁を登っていく姿だけでも、まずビックリ仰天なのである。

 なにしろ東京五輪でスポーツ・クライミング競技が広く紹介され、結構、日本の女子選手が活躍したのは記憶に新しい。この作品でもスポーツ・クライミングのことはちょこっと挿入されているんだが、マークが挑むのは氷に覆われた自然の脅威に満ちた断崖絶壁であり、ピックで次の一手を岩や氷壁に打ち込んでも、それが弱い箇所で欠けて落ちて行く場合もある。これはもう次元の違う世界なのだ。
 まして魅せられてしまうマーク自身が「さもありなん」キャラなのだ。なにしろ名前が余り広く知られてないのは、金満家が大勢のギャラリー引き連れて冒険家をアピールするのとは正反対。SNSで登頂成功を発信したりせず、このドキュメンタリー作品撮影が決まって、ようやくスマホを支給されるのだが、本人はそれまでスマホもパソコンも所有してなかった人物なのだ。
 実際、撮影隊に黙って登山の歴史を変える登頂成功をやり遂げた際も、「ソロでないと意味がない」と、あとから偉業を伝えるエピソードが出てくるのだが、これぞリアルの真骨頂であろう。

 週刊ファイトは、例えばSmackDown-RAW-NXTの試合結果を先に知っても、日本で視聴可能になるまでネタバレしない方針があり、本作品のクライマックスは紹介しないでおく。また事前に検索せずに真っ新な気持ちで、どうかこの奇跡のドキュメンタリーを堪能して欲しい。繰り返しになるが「挑戦とは何か?」を問う、武道プロレス格闘技のやる側や関係者、ファンには必見作だと推薦していく。

■ 映画『アルピニスト』
7月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開
監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン
制作:レッドブルメディアハウス
配給会社:パルコ ユニバーサル映画
2021年/英語/アメリカ映画/G/93分/ビスタ