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今回は先に現地土曜夜『サマースラム』、日曜夜が『NXTテイクオーバー』の変則編成であったが、毎回NXTの方が全部をフォローしているプロレスファンには高品質印をデリーバーしてくれていることは近年の不文律なのだが・・・。
それにしても本戦全5試合、すべてが真打ちメインイベントの超凝縮2時間半だった『NXTテイクオーバー 36』の充実ぶりはどうだろう。圧巻の最高質内容を届けてみせ、AEWのCMパンク登場から続く2021年マット界の天王山決戦期間とも称された週末を、プロフェッショナル・レスリングの逆襲で締めくくって魅せた。必見大会である。
他媒体とは圧倒的に異なる全試合の深淵分析と詳細評の完全拡大版は本誌収録とするが、いみじくも解説のウェイド・バレットが「この試合に関してはすべての選手と業界関係者が見ている」と述べた通り、本戦第3試合に全文公開レポートは絞らせていただく。昨年の10月15日に『NXT UK』で放送解禁され、一部で年最高試合賞と称せられた最長不倒王者ウィルターvs.ロシア最凶兵器イリヤ・ドラゴノフの伝説の至宝戦が評判を呼んだので「再戦」、「Ⅱ」との表記になっているが、実際は3度目の対戦となるハードヒット戦のことだ。そして、神話劇は期待にたがわぬ叙事詩へと昇華していく。
ウォルターの凄まじい破壊力のチョップを何発も喰らい、ミミズ腫れの胸のドラゴがウォルターの後頭部にエルボーを叩きこむも、オーストリアの巨人は容赦なくサッカーボール・キックを背中ではなく後頭部に見舞う。側頭部にも打つ。ハードヒットとは何か？ 恐るべき怪獣の死闘に、デルタ株の感染拡大で再びマスク着用となったCapital Wrestling Centerは興奮MAXに。お客によるThis is AWSOMEの合唱が、やがてはNXT、NXTに替わっていく。前夜の大味のスポーツ・エンタテインメントとはまるで異質の闘いが続くのだ。
紆余曲折を経て様々なスタイルの要素を吸収しながらも、欧州プロレスの伝統は2021年も生きていた。やる側・作る側から芸術を楽しんでいる大人のファンは、観点が違うから時に実況が邪魔に感じてしまい、音声だけロック音楽に替えてじっくり画面を堪能するという方が世界中に少なくない。インぺリアムのテーマ曲はドヴォルザークの♪新世界だが、お仕事評をきっちり活字の残す記者だと、配信のWWEネットワークとかは再度見直すには便利であり、2度目に見る際の音声はイタリアの至宝Rhapsodyのシンフォニック・メタル版♪The Wizard’s Last Rhymesが合ってるだろう。欧州レスリング継承者による新世界への魂の航海は、激しい荒波に揉まれながらゴール地点へと向かうのだ。ファビオ・リオーネがオペラ唱法で朗々と詠う「血のように赤い海で炎が激しく燃え上がり、魔法使いの最後の詩」へとクライマックスを迎えるのである。様式美芸術としての欧州クラシック-メタル-プロレスが一体化を遂げるのだ。
試合後バックステージのセグメントで、ドラゴはRing General has Fallen（プロレスの神が降臨した）と語った。これがAEWの攻勢だけではない、実は同じWWE上層部からの圧力と闘っているNXTからの解答だった。
大会トリ、お客さんが最初から「ジョー、ジョー」と合唱になっている。すでにRAWに召集されてるキャリオン・クロス、大人のファンには底が丸見えのカードなのだが、こうなったらやる側・作る側から見ているなら、武士道をCarry Onする柔道家にしてUWF戦士のクロスの側から、いみじくも「NXT未来」が懸かっていることを口にした責任重大のお仕事を堪能することになろう。一部でカリオンのカタカナ表記だが、それはインパクト時代があるから綴りCからKに変えただけで、Carry Onだからキャリオンなのだ。GM役職から選手ロースターに電撃復帰したサモア・ジョー、人気はあるがもう現役選手としてのピークは過ぎている。健康不安も抱える息切れが画面から見えてしまうジョーをCarryして、名勝負を作らねばならないのだ。WWE上層部へのアピールとしても問われたのは内容である。
与えられた尺はやはり12分強、サモア・ジョーが「NXTテイクオーバー36」のNXT王座戦で対戦したキャリオン・クロスを筋肉バスターで撃破して新王者となった。
■ NXT テイクオーバー 36
日時：8月22日（現地時間）
会場：米フロリダ州オーランド Capital Wrestling Center
＜KICKOFFマッチ＞
〇リッジ･ホランド w/ピート･ダン
1分45秒 ノーザン・グリット
●トレイ･バクスター
＜第1試合 ミリオンダラー王座戦＞
[王者]●LAナイト
16分31秒 ケイブン
[挑戦者]キャメロン･グライムス w/テッド・デビアス
＜第2試合 NXT女子王座戦＞
〇ラケル･ゴンザレス
12分24秒 雪崩式チョークスラム
●ダコタ･カイ
※試合後NXT UK女子王座最長期間保持のケイ･リー･レイがフロリダに入国、CWCに登場した
＜第3試合 NXT UK王座戦＞
●ウォルター
22分03秒 後頭部エルボー⇒スリーパー
〇イリヤ･ドラゴノフ
※ドラゴが新王者
＜第4試合 コールvs.オライリーⅢ The Undisputed Finale 3本勝負＞
●アダム･コール
1-2 全25分20秒 3本目カイルが手錠かけられたままヒールフックでタップ奪う
〇カイル･オライリー
※アダム・コールのNXT最後
◆カイル・オライリーが3本勝負に勝利してアダム・コールとの最終決戦を制す
元アンディスピューテッド・エラのアダム・コールとカイル・オライリーが「NXTテイクオーバー36」の３本勝負で対戦。オライリーが2-1でコールとの最終決着戦を制した。1本目のレスリング試合ではオライリーがフライング・ニーやアンクルロックで攻め込むとコールがスーパーキックからパナマサンライズで反撃を狙ったが、これをオライリーがそのまま丸め込んで３カウントを奪取した。
２本目は反則裁定なし、凶器使用可のストリートファイトで行われるとオライリーがコールのスーパーキックでコーナーから落ちて脇腹を負傷してしまうセールの（アングル）展開に。さらにコールが容赦なくパイプ椅子で脇腹を追撃するとオライリーもドラゴン・スクリューやギロチンで応戦したが、最後はコールがラストショットを放って３カウントを奪取した。
３本目のスチールケージ戦では準備ができる前からコールがオライリーを襲撃。さらに試合ではコールが満身創痍のオライリーにローブローからパナマ・サンライズを決めると、オライリーを手錠でロープに固定してスーパーキック連打を叩き込んだが、最後はオライリーがコールのスーパーキックをキャッチするとそのままヒールフックを決めてタップ勝ち。オライリーが2-1で３本勝負に勝利してコールとの最終決戦を制した。
ありがとう、アダム・コール。新世界が君を待っている。
＜第5試合 NXT王座戦＞
●キャリオン･クロス
12分24秒 筋肉バスター
〇サモア･ジョー
※王座交代、ジョーは3度目のNXT王座戴冠
◆サモア・ジョーがキャリオン・クロスを撃破して新NXT王者に
序盤、ジョーが延髄切りやエルボー・ドロップからのコキーナ・クラッチで攻め込めば、クロスもドゥームズデイ・サイトーを放って反撃。さらにクロスがドゥームズデイ・サイトー２発を繰り出すとジョーもトペ・スイシーダやパワーボムからのSTFで締め上げて白熱の攻防を展開する。
終盤にはジョーがセントーン２連打からコキーナ・クラッチを決めるとクロスもクロスジャケットで応戦したが、最後はジョーがコーナーに上がったクロスに延髄切りを放つとそのまま筋肉バスターを叩き込んで３カウント。ジョーがクロスを撃破して史上初の３度目となるNXT王座を戴冠した。
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