[ファイトクラブ]秘蔵写真で綴る浪速のアントニオ猪木#9(1970年10・29ニック&クイン組)

[週刊ファイト6月03日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼秘蔵写真で綴る浪速のアントニオ猪木#9(1970年10・29ニック&クイン組)
 by 藤井敏之
・力道山時代ワールド大リーグ戦に匹敵するタッグの祭典NWAタッグリーグ
・新規加入NETは馬場と坂口の試合中継は放映不可、エース猪木として放映
・“黒い毒グモ”アーニー・ラッドと“黒い核弾頭”ロッキー・ジョンソン組
・素晴らしいニック&クイン組と技対技の勝負:猪木&星野勘太郎組
・インターバルに水を飲もうとしている星野を見て猪木「飲むなっ!馬鹿」
・貴重写真大量放出


 日本プロレスは春のワールド大リーグ戦に匹敵するようなタッグの祭典をもくろみNWAタッグリーグ戦の開催を発表。ただ当時はテレビ局の問題もあり、老舗の日本テレビプロレス中継は日本プロレス所属レスラー全員を放映できたが、新規加入したNETは馬場と坂口の試合中継は放映できなく猪木がエースとして放映されていた為、BI砲が一時的に解体され日本人選手のタッグ組み合わせに難がありシリーズ全体の人気には繋がらなかったのである。


トップ画像:決勝戦の記念ポスター、大阪大会スタンプ入りパンフレット

 ジャイアント馬場はミツ・ヒライと組み、アントニオ猪木は星野勘太郎とのタッグ結成を余儀なくされたが・・・。外人チームは当時来日が待たれた“黒い毒グモ”アーニー・ラッドと“黒い核弾頭”ロッキー・ジョンソン組、AWA実力者コンビのニック・ボックウィンクルとジョニー・クイン組、ラーズ・アンダーソンとボブ・ループ組、フランキー・レインとバッド・ラーテルと素晴らしいチームが揃う。

▼時効!昭和プロレスの裏側 知られざる有名外国人レスラーの”犯罪”

時効!昭和プロレスの裏側 知られざる有名外国人レスラーの”犯罪”

ニック・ボックウィンクル       
ジョニー・クイン        アーニー・ラッド                                      

ロッキー・ジョンソン アントニオ猪木
猪木&星野組     ニック&クイン組

 大阪府立体育会館は8千人の観衆で埋まるが、前回のドリー対馬場戦に比べると二階席に空席もあった。当然、幼きファンでも馬場と猪木のタッグが解消され、意味のない日本チームに魅力もなく、優勝戦線に興味すら沸かない故に当然の結果だと思われた。
 セミファイナルで行われた注目の巨人対決、ジャイアント馬場対アーニー・ラッドの一戦はなんと348秒で馬場が32文ロケット砲でラッドをKOし、そのあっけない結末に落胆したものだった。本来ならインター・シングル王者にも挑戦できる実力者であるラッドの不甲斐ないファイトは、ラッド組がシリーズ決勝戦に出れない事を大阪のファンに確信させたものだ。
 アメリカのBI砲と呼び声が高かったにもかかわらず、ラッド&ジョンソンのコンビネーションは水と油のようで、シリーズの興味を引き落としたもう一つの要因でもあった。

 メインのタッグリーグ2回戦45分3本勝負、猪木&星野組対ニック&クイン戦のゴングが鳴る。1本目は外人チームのコンビネーションも素晴らしくニックが19分7秒で猪木をフォール、2本目は猪木がクインをアバラ折でギブアップ勝ち、3本目は互いに技の応酬で時間切れ引き分けに終わる。
 この試合、ニックは後にAWA世界ヘビー級王者に君臨する若手の有望株であり、当時は時期NWA王者とも期待されていた。一方のクインもカナダはバンクーバーでNWA王者ジン・キニスキーを苦しめた実績があり、怪力が売りだがテクニックも光るものがある実力者ゆえ、猪木組とは技対技の素晴らしい応酬となった。互いにドロップキック、コブラツイスト、グランドでの足殺しの攻防と目まぐるしいリング上。さらにニック組はアルゼンチン・バックブリーカーなども繰り出し日本組を攻める。猪木はナックルパンチのラッシュで外人組を追い込んだ記憶がよみがえる。猪木がクインをコブラツイストで締め上げた光景は、その鬼気迫る迫力に圧倒された。そして星野のすばやい援軍も目を引いたものである。                          

猪木とニックの攻防はもう一度、新日本プロレスで見たかったこれぞまさしく夢の対決である。

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