[ファイトクラブ]『ワールドプロレスリング』2020年度下半期はどうなる!?

[週刊ファイト10月1日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼『ワールドプロレスリング』2020年度下半期はどうなる!?
 by 安威川敏樹
・テレビ朝日『ワールドプロレスリング』の1時間繰り上げ、その効果は?
・土曜日の深夜1時は有利な時間帯
・深夜番組にもかかわらず、ゴルフ中継により飛ばされたプロレス
・『リターンズ』の生放送、尻切れトンボに意味はあったのか?
・一般視聴者向けに、番組進行を考える必要がある
・番組冒頭の『ツカミ』が非常に重要
・新日関係以外の企業がスポンサーに付かない『リターンズ』
・カミングアウトしないと、一般企業は番組スポンサーになってくれない


 プロレス界に朗報があった。本誌では既報済みだが、テレビ朝日の『ワールドプロレスリング』の放送時間が、10月から1時間も早くなって、土曜日の25時(日曜日の午前1時)開始となったのである。つまり、見やすい時間帯に移行したわけだ。

 ただし、この1時間にどの程度の効果があるのかについては、意見の分かれるところである。本誌内でも、たとえ深夜でも2時と1時では視聴者数が全く違うという計算と、深夜の30分番組に変わりなければ焼け石に水という考え方に二分された。
 実際のところ、1時間の放送時間繰り上げによってプロレス人気はどう変わるのだろうか。

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深夜番組にもかかわらず、ゴルフ中継により飛ばされたプロレス

 放送時間が1時間早まって、有利となるのは土曜日の深夜という点だろう。翌日は休みで、夜更かししても構わないという週末。いくら土曜日でも深夜2時だとさすがに眠くなるが、1時なら寝る前に一杯やりながらプロレス観戦を楽しむという人も多くなるに違いない。あるいは、まだ眠くならないのでリモコンのボタンを押しているとプロレスがテレビ画面に表れて、そのまま見入ってしまう人もいるだろう。
 何しろ、月曜日の23時59分から日本テレビ系で放送されている『月曜から夜ふかし』や、木曜日の23時15分からテレビ朝日系で放送の『アメトーーク!』などが人気番組になっているご時世である。しかも、これらの番組はゴールデン・タイムでの特番が組まれることもあるのだ。それならば『ワールドプロレスリング』だって、地上波ゴールデンでの放送も夢ではない。

 しかし、問題も残る。『ワールドプロレスリング』の場合、たった30分番組という点だ。上記の2番組は、いずれも1時間番組である。しかも、10月から深夜1時放送開始となる『ワールドプロレスリング』よりも1時間~1時間45分も早い時間帯だ。特に『アメトーーク!』なんて深夜番組のうちにも入らないだろう(ただし、関西のABCでは深夜0時30分からの放送)。
 30分で、プロレスの魅力がどこまで伝わるだろうか。今の若い人の感覚だと、夜中に1時間もダラダラ見せられるよりはいいかも知れないが、プロレスは連続ドラマという側面もある。1時間早い放送になっても、30分番組のままだと大して変わらないという意見も頷ける。

 そして、1時間繰り上げという朗報に、水を差すようなことが起きた。9月19日(土)では、ゴルフの全米オープン中継のために『ワールドプロレスリング』は放送されなかったのである。
 全米オープンという権威のあるツアーで、しかもタイガー・ウッズや松山英樹、石川遼らスター選手が出場するのだから仕方ないかも知れないが(ただし、ウッズは2日目で予選落ち)、深夜の30分番組でもプロレスは簡単に飛ばされるのが現実だ。
 さらに、プロレスが放送されるはずのこの日は全米オープン3日目で、テレ朝では『ワールドプロレスリング』放送開始時間の深夜2時から朝8時までの中継。ちなみに初日は深夜3時6分~朝4時55分、2日目は深夜2時50分~朝8時の放送だったから、プロレス放送日は不運にも時間が被ってしまったわけだ。
 しかし、ゴルフを6時間も中継するのなら、たった30分ぐらい短縮してプロレスを放送してくれてもいいように思う。だが、その30分すらどうにもできないのがプロレス中継の現状なのだ。

 ちなみに、『ワールドプロレスリング』を遅れナシの土曜日深夜(日曜日午前)に放送しているのは、全国的にテレ朝の他では福島放送だけ。たとえば北海道テレビはテレ朝と同じ土曜日深夜(日曜日午前)の放送だが、なんとテレ朝よりも42日遅れ、約1ヵ月半の遅れネットなのだ。
 準キー局である関西のABCですら2日遅れ、月曜日の26時35分(火曜日の午前2時35分)から27時5分(午前3時5分)までの放送で、みんな明日の仕事や学校に備えて爆睡している時間帯。こんな時間に起きているのは、泥棒かプロレス記者ぐらいだろう。しかも今回、キー局のテレ朝がゴルフでプロレス中継を飛ばしてしまったので、2日遅れのためゴルフ中継を既に終えているABCもその煽りを食って『ワールドプロレスリング』を放送しなかった。
 その他の地域でも、1週間遅れはマシな方で、1ヵ月ぐらいの遅れなんてザラ。『ワールドプロレスリング』が地方を軽視しているのか、それとも地方局のプロレス軽視なのか……。

 また、10月からの1時間繰り上げ放送には、新型コロナウイルスの影響もあるだろう。月額999円(税込)で視聴できる『新日本プロレスワールド』は、コロナ禍により国内では解約が多かったという。試合が少ないのだから、視聴料を払うのはもったいないということか。
 つまり新日は、人気回復策には地上波放送の強化しかないと考えたわけだ。しかし、その効果が首都圏にしか及ばないことも有り得る。

『リターンズ』の生放送、尻切れトンボに意味はあったのか?

 無料でプロレス中継を視聴できるのは、前述のテレビ朝日『ワールドプロレスリング』と、BS朝日の『ワールドプロレスリング リターンズ』だ。『リターンズ』の方は今年の4月から、金曜日夜8時台での1時間番組となったのは周知のとおりである。もちろん、こちらは全国一斉に、同時刻で視聴可能だ。
 BSとはいえ、プロレス・タイムと呼ばれた金曜夜8時にプロレス中継が戻ってくる! この朗報に、プロレス・ファンは色めき立った。
 ゴールデン復帰から半年、ファンの評判はどうなのだろうか。

 特に注目されたのは、7月3日の生放送だろう。金曜夜8時でのプロレス生中継は34年ぶりということで(有料放送を除く)、大いに話題となった。放送終了後には、Twitterでプロレスがトレンド入りしたぐらいである。
 しかし、そのあとは『リターンズ』が話題になったという話はあまり聞かない。『リターンズ』は、どれぐらい世間に浸透しているのか?

 生中継がトレンド入りした原因として、試合途中で放送が終了したということもある。生放送感を出したかったのかも知れないが、今更そんなことをする必要があるのか?
 たしかに、黄金時代のプロレス中継では生放送終了時間に試合が終わらないことはよくあった。それでも、リング外には『タイムキーパー』役のレスラーがおり、できるだけ生放送中に試合を収める努力をしていたのである。にもかかわらず、試合途中に放送終了となることがあったのは、アクシデントの場合もあるが、大抵は「プロレスは真剣勝負でっせ」とアピールするためのものだった。真剣勝負だから生放送中に試合が終わらないこともある、と思わせる策略だ。

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 しかし今のプロレス・ファンは、プロレスが真剣勝負ではないことぐらい知っている。にもかかわらず、せっかくの生放送なのに試合途中までしか見せなかったら「なんで、そんなセコイことをするの?」と思われるだけである。しかも、この試合は翌週にノーカット放送された。視聴者は、同じ試合を2週続けて見せられたのだ。プロレス黄金時代でも同じようなことはあったが、それはよほどのビッグ・マッチの場合である。
 これだったら、生放送で試合を最後まで見せた方がどれだけ良かったか判らない。試合終了と同時に放送も終わるのが白々しいというのなら、早めに試合を終わらせても良いではないか。
 余った時間はインタビューを流すなり、過去の名勝負を紹介するなりすればいい。無料BSでゴールデン放送をするのは、プロレス・ファン以外の一般視聴者を取り込むのが目的なのだから、プロレスの魅力をアピールすればいいわけだ。
 しかも運悪く、この生中継はコロナ禍による無観客試合。プロレスに熱狂する客の姿を映すことはできなかった。それだから余計に、プロレスの魅力を伝える努力をして欲しかったのだ。

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