AEWジェリコ主催ロックン・レスリング録画中継!タッグ王座移動以下、船上青空大会斬新

(c) AEW

 WWEのRAWやSmackDown生中継が、いくら全国各地を回ろうが、そして番組内で会場都市の紹介映像挟もうが、なんかどこでやっても金太郎飴のWWE番組に見えるのに対して、やはりボート上にリングが設置され、青空を見ながらという背景は、明らかにいつもとは違う新鮮さがある。
 今回のは1年前から計画されていたクリス・ジェリコ主催の「ロックン・レスリング」クルーズ第二回に、AEWがのっかった格好になり、来年は船上からの生中継にするとまで発表されたのだから、その成功ぶりがわかるというものだ。


 番組の第1試合は、AEW世界タッグ王座戦から。カザリアン&スコーピオ・スカイのSCU組に、ゆっくりとした仲たがいが演出されているハングマン・ペイジ&ケニー・オメガの元エリート軍の対決。時計見ていたわけではないんだが、30分くらいやったかも。つまり、ボート上の特設リングでやるお祭り余興だから、試合はハウスショー用の緩い内容とはせずに、目まぐるしくガンガンやり合った上に日本流の2.99プロレスが披露された。最後はペイジがスタン・ハンセン直系のカーボーイ・ラリアット(デッドアイ)をカザリアンにブチ込み1,2,3であり、王座交代試合がボート上で実施されたんだからAEWは考えている。重ねて「お遊び回じゃない、シリアスなんだ」ということなのだろう。例によって、ペイジはオメガと一緒に戴冠を祝うでなく、一人で客とビール飲んで消えていくのであった。番組の掴みは大成功であろう。


 続く女子戦は、DDT傘下の東京女子プロレスなどに参戦、米国ではMLWに出ていたプリシラ・ケリーが、本格的なAEWデビューということに。Dr.ブリット・ベイカーのリアル・マンディブル・クローことロックジョーにやられるんだが、まぁそれは重要ではない。勝ったベイカーにトニー・シェバー二がリングに上がってインタビューするんだが、レジェンドであるトニーに、「AEWはミールチケットなんでしょ? それまではスターバックスでバリスタやってたのに。私は賢いし、歯医者もやっていて美人なの!」と毒づいたからブーイングである。
 試合結果を軸に書くなら今の時代素人でもSNS発信できるが、ちゃんと意見も分析も加えて、AEWからの写真の入稿も待った上でマスコミとして公開する本誌は、現地英語媒体よりいつも先の発表になり、リアルタイム配信時代、どこに住んでいるかは関係なくなった証の恩恵ではあるのだが・・・。正月の大会評から、「ベイカーはヒールターンなんだ」と先回りして活字に残したら、「そんなことはない」と言ってくる論客がいたんだが、さて、どっちの読みが鋭かったのか。


 さてさて、続くはクルーズ企画の主催者でありインナーサークルの親分である、腹の出具合が目立つようになったクリス・ジェリコ様の登場である。

 なにしろクルーズ企画はメタルバンドとプロレスの合体であり、ロックファン系も多く乗船していることは予想済みだったが、入場曲2017年FOZZY『JUDAS』のCD1曲目は、AEWが入場曲に採用するはるか前、いや団体生誕前から、何度も歌詞まで紹介してきた本誌は、例によって早すぎるから損していると言われてしまうのだが、今回、ロック系の客が多かったこともあり、♪You’re beautiful on the inside, You’re innocence personified, I will drag you down and sell you outが大合唱になっているではないか。皆さんがちゃんと歌詞を覚えていて、もう涙ちょちょ切れである。本誌はCD出た時からプッシュしてきた通りが現実の絵になったのだ。「ほれみろ」の感無量である。


♪内なるユダの心に蝕まれる 英語字幕、対訳字幕出ます!


 正確には、その前にジャングルボーイ・ペリーの紹介ビデオが流れており、いよいよ時は来たといか、本格的なプッシュが始まったことを意味する。そりゃ亡くなったお父さんが俳優のルーク・ペリーといっても、プロレスの夢を目指した息子が成功する保証はどこにもないのだから、これまでインディー界隈はともかく一般には全く知られてなかったターザン・キャラの新人が、ジェリコの対戦相手という抜擢を得てスター街道を歩み始める物語こそ、無名タレントを発掘したCody副社長らAEWの真骨頂でもある。
 そして試合は、ほとんど小人サイズのマルコ・スタント、大型のルチャザウルスを加えたジュラシック・エクスプレスが、NYCのプエルトリカンまんまのサンタナ&オルティーズのPRIDE&POWERFULとジェリコ親分のインナーサークル激突という6人タッグだ。ケツはそりゃ主賓がマルコにジューダス・エフェクトとなるのはお約束なんだが、それはどうでもいいこと。間違いなくジャッグルボーイは次世代指名を受けたのであった。♪Run away


 第4試合にはドレッド・ヘアーにしたジョーイ・ジャネーラvs. MJFなんだが、それにしてもMJFのタイミングとか、入場の際に最前列客を手玉に取るアドリブなど、若いのにその熟練ぶりはどうだろうか。「筋書」がどうのというが、聖なるLIVE空間で「お前これが出来るのか」であって、天才ヒールの台頭をAEWは目の当たりにしているのである。ちなみにウォードローがいない。フロリダ沖から出発するバハマへのクルーズにはパスポートが必要なんだが・・・。バハマは英連邦王国であり海外旅行になるのだが・・・。
 試合は、元ジョーイのガールフレンド=ペネロペ・フォードが、乗り換えたキップ・セイビアンと花道に出てきて熱い接吻をやらかし、気を取られているところにMJFがクロスローズで身体ごと一回転させると。それはいいんだが、ここからがプロモの時間。Codyも出てきて約束させらた条項通りに「一本の指も触れない」んだが、至近距離で演説やりあうと。WWEは数十人もの脚本班が必死で台詞を考えるんだが、この二人は自分たちで考えてやっているというから凄すぎる。そして船名「ノルウェーの真珠」の豪華客船には当然プールもあるから、お約束でMJFはヤングバックスに落とされドボンなのであった。一流のコメディ番組でも、ここまでの絵を企画通りに実行、実現できるだろうか? そこを作る側から考えてみて欲しいのだ。こりゃ新たな若者層の視聴者が食いつくハズなのである。


 トリはAEW世界王座挑戦者決定戦だ。前週からお約束のPACに、右目失明?スキッドのまま包帯を巻いた片目だけのジョン・モクスリーのシングルをじっくりと。この二人だからハイレベルなんだが、画面からも伝わるよに野外というか船上なので風が強い。実況音も強風のせいで特に前半、なにを言ってるのか聞き取れない程である。なのでPACのブラックアローが自爆に終わるspotとか、それこそ「筋書」には違いないんだが、コーナーポスト上で時間がかかるのは風を感じるから。PACには不運というか、飛ぶ選手には位置がズレる恐怖があり、やる側から見ないとお茶の間で見ている一般ファンにはわからなかったかも。よってややゆっくりペースの試合になってしまった嫌いは残った。
 ただ、例えばPACの攻撃に「トシアキ・カワダ・キック」(ステップキック)と解説が入ることがTNT局からお茶の間のプライムタイム(ゴールデン)に届けられることがどれだけ画期的なことか。その実況を聞いて「川田利明って誰だろう?」と検索する方は必ずいるからだ。「へぇ~、そんな熱心なキ●ガイなんか1%どころか0.1%だろうに」と笑うかもだが、世間から忘れられているヲタク趣味の日本と違って、仮に0.1%でも1000人になるということは知るべきか。ネット時代ならではだが、放送権革命は世界のマット界に”革命”を起こしていることは間違いない。

 ケツはハンディにもかかわらずパラダイムシフトが決まり、現地時間2・29『Revolution』PPV大会は最後のカードで実況席にも加わったジェリコとMOXという順当なカードで勝負に出る。クルーズからの中継番組は大成功であった。


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’20年01月30日号新日AEW極秘ジェリコ主催船上 FantasticaManiaスターダム札止め UFC