それはまさに異例ずくめの会見だった。
11月17日に交渉に向かっていた北米から帰国した榊原信行RIZIN実行委員長が、羽田空港の応接室で囲み会見を行い、その足で両国の『RISE 129』へ姿をみせると、試合終了後に再度会見を行ったのだ。
帰国して直ぐに羽田空港でというのももちろんだが、友好団体とはいえ、別の格闘技イベントに出向いていって会見場を間借りして…というのも異常事態で、それだけ那須川天心とフロイド・メイウェザーJr.の1戦が、従来のRIZINの枠を越えて世界的に大きな関心の的となっている証しでもある。
会見での榊原信行実行委員長の会見を要約すると、
①那須川天心vs.フロイド･メイウェザーJr.の試合は大晦日にRIZINのリングで行う。
②3分3Rのグローブを着けた拳の打撃のみが認められた非公式エキジビションマッチ。日本でイメージされる、スパーリングの様な模擬試合ではなく、お互いが相手を倒しにいく勝負論のある試合＝スタンディングでの異種格闘技戦である。
③フロイド･メイウェザーをリングに引っ張り上げるだけでも大変な困難があった。これ以上条件を出してまた揉めたくないので、ルールや体重、レフェリーなど、基本的にメイウェザー側の言う通りにする。
とのこと。
キックボクサーでウェートも10kg以上下回る那須川天心に対して、ボクシングの非公式の試合を行えというのが無敗のボクシングチャンピオン･メイウェザー側の言い分だと判断する他はない。もっとも本誌は、世界で最も正確に、なにがどうなっているか11月15日号（発売11月9日）で圧巻の情報量で記事にしていた通りということになろう。
当の神童･那須川天心は
「必ず倒す」
との宣言したが、「両手両脚を縛られた」と評されたモハメド･アリ戦でのアントニオ猪木以上に不利なルールが課せられたといっていいだろう。
端から見れば、メイウェザーから持ちかけた話で、かつ前金を払っている以上はRIZIN側が強気に出ても良さそうに思えるのだが、実現しないわけにはいかない、キャンセルには出来ないという面子がある。
メイウェザーの
「海外のメディアで公式戦と報道されたのは話が違う」
という言い分にしても、最初の記者会見で榊原実行委員長は再三
「果たし合い」「公式戦ではない」
と語っていたのだから、RIZIN側に落ち度は無く、言いがかりも甚だしいとオモテの媒体は書くのかも・・・。
しかし、かのインスタグラム文面は、米国でのメイウェザー権利を持つ弁護士たちへの弁解をやらざるを得ないという事情を無視しては、物事の本質には迫れない。重ねて「一転参戦！」の先行スクープ含む11月22日号（11月16日発売）と併せて、本誌の深淵分析を参照されたし、である。
要するに、RIZINの興行のみならず、大晦日フジテレビ地上波の目玉とあって、メイウェザー側に足元を見られている感は拭えない。
2〜3日のつもりで渡米した榊原実行委員長はとにかくメイウェザー側と交渉する順番を待たされるという持久戦に持ち込まれ、予定をオーバーして7日間滞在、向こうでパンツまで買うハメになったと憔悴しきった様子だった。
「格闘技の順位で言ったら向こうがトップでこっちは1000番くらい」
と、普段の格闘技界の第一人者との自負も見受けられなかった。
結局のところ、
「あとは那須川に任せた」
というしかない状態の様で、会見場を後にした。
今後さらに紆余曲折も予想されるが、現状、神童･那須川天心は、日本のというか、世界中の非ボクシング系全立ち技競技の代表として、社会的に圧倒的に認められたボクシングの牙城に挑む事になった。
オモテ媒体の分析なら、片や大言壮語しておいていちゃもんをつけ、ハウスルールをゴリ押ししてくるメイウェザーの姿勢はとても褒められたものではない、となる。個人的に神童には、反則負けだろうと、ヒジか蹴りでその鼻っ柱をへし折って貰いたいとさえ思う。
いずれにせよ格闘技ファンは、那須川天心の一挙手一投足に要注目のまま、平成最期の大晦日を迎える事になりそうだ。
取材：こもとめいこ♂
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