来年3・31両国国技館One Championship上陸!チャトリ・シットヨートンCEO独占インタビュー

 ミャンマー・ヤンゴンのトゥウンア・ナショナルインドアスタジアムで開催された『ONE Championship: Spirit of a Warrior』のメインイベント、地元の英雄でもある二階級王者オング・ラ・エヌサンと、DEEP王者だった長谷川賢との激闘が冷めやらない翌30日、日本に来ていたチャトリ・シットヨートンCEOとの独占インタビューに成功した。
 以下、有楽町のペニンシュラ東京ホテルで収録。

 来日目的は、その2日前に発表された日本最大手の広告代理店・電通と戦略的パートナーシップを締結したから。但し、発表では来年3月に日本大会開催というだけだったが、個別インタビューということもあるのか、2019年3月31日(日)、両国国技館という概要も教えてくれた。

 ちょうど、30日はその両国SUMO HALLでWWE日本公演の取材があり、家に戻って間に合わないかと思っていたら、ミャンマーと日本は2時間30分の時差があり、ちゃんと堪能できた。それにしても、アウンラ・ウサンと長谷川賢の5Rメインは死闘だった。AbemaTVの実況が、「エアコンがない会場で両者とも疲れている」旨を繰り返し伝えていたが、東京で見ていたチャトリさんは、「さっそく両者の激闘に対してWarrior Bonus(戦士ボーナス)として両方に$50,000の上乗せ金を指令、さきほど発表した」という。

 意地悪な質問というのか、疑問もぶつけてみた。確かに電通は一番大きいエージェンシーかも知れないけど、UFCと組んで日本開催を模索してきたが、成功しなかったじゃないかと。実際、UFCの日本大会は、毎回大きな赤字を計上したことが知られている。
 対しては、ビジョンが一致したからだという。日本語も堪能なチャトリ氏は、「UFCはケンカばかり」を見せているだけ。しかし、アジアというのはマーシャルアーツ発祥の地であり5000年の歴史がある。そういった格闘技の文化、歴史、価値を尊び、HERO STORYに繋げていくところがONEの違い」と、思想の違いを強調していたのが印象的だ。

 長谷川選手には申し訳ないが、地元出身の2階級王者アウンラ・ウサンの勝利は、MMAがこれからのミャンマーにとってこの上ない最高の結末だった。会場は「オングラ、オングラ」の声援で熱狂していた。また、エヌサン本人の英語は完璧で、国際スターの地位を不動のものにする強烈な大会だった。

 ちなみに、チャトリ氏はタイ人の父親と、静岡県出身の日本人の母親の間でタイで生まれた。教育は米国のほうがということで、18歳で渡米、マサチューセッツ州にあるタフツ大学に進学している。但し、父親が事業に失敗して家族を捨ててしまったんだという。現在、アジア最大のメディア・コングロマリットの総帥にしては、立身出世の物語になるのだろうが、1日わずか4ドルのバイトで凌いでいた時期もあるそうだ。ハーバード・ビジネス・スクールに入ってからは、本当はいけないことなのだが、小さなドミトリーの部屋に、もう住む家がなくなっていた母親を内緒でこっそり住まわせていたんだという。母親は、あえてずっと日本語で話しかけていたそうだ。
 自身が武道家でもあるチャトリ氏は、現在はシンガポールを拠点に、世界を飛び回っているということになる。

 ちょうど、欧州、日本に続いて米国上陸を目論むDAZNが、ベラトールに年間$33ミリオン。邦貨にして36億3000万円もの巨額のストリーミング放送権を拠出して、ボクシングとMMAを米国向きユーザー獲得の切り札にする特大ニュースが発表されたばかり。詳細は本誌『今週の最重要ニュース:ベラトールのDAZN配信発表と勢力地図異変』に徹底解説してあるが、この件をしつこく問いただしたものの、「ベラトールがUFCに次ぐ2番手団体などというのはナンセンスだ」、「もっとちゃんとリサーチして欲しい。ONEがMMAに絞っても圧倒的に2番手である。DAZNの契約を考慮してもなおだ」というのを、強く述べていた。マーシャルアーツ全体では、世界一のネットワークと開催規模を誇るということになる。

 また、ONEのアドバイサーであるTRIBE TOKYO M.M.Aの長南亮がSNSでRIZINを見下す発言を繰り返して、ファンの間で物議を呼んでいることを伝えると、「それは知らなかった。私は他の団体の悪口を言ったりはしない。理念の違いや数字データは話すが、見下したりもしない」と答えている。

 なお、現在ONEのジャパン法人は、また組織替えになり、話題になった元ハイアールアジアCEOだった伊藤嘉明氏は退任したとのこと。8月末に、ONEの日本大会開催に関しては、世界中からジャーナリストを招いた400人規模の記者会見を開くから、楽しみにして欲しいとのことだ。

 米国生活の長い筆者とは共通の話題が多かったが、インタビューの拡大版は金曜6日発売の『週刊ファイト7月12日号』に収録されました。

’18年07月12日号WWE両国 棚橋弘至 原点回帰 DEEP パンクラス ONE総帥 ラウェイ日本