9月9日(日本時間10日)にカナダ・アルバータ州エドモントンにあるロジャーズ・プレイスで開催されたUFC 215。メインでは、女子バンタム級王者アマンダ・ヌネス(ブラジル)が、ワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)を相手に防衛戦を行い、2-1のスプリット判定で2度目の防衛に成功した。
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アマンダは、昨年7月のUFC200でミーシャ・テイトを打撃で血まみれにし、最後はチョーク・スリーパーで一本勝ちして王座を奪い、12月30日のUFC207では、元“絶対王者”ロンダ・ラウジーをわずか48秒でKOして初防衛成功。
今回の挑戦者シェフチェンコとは、昨年3月のUFC196で戦い、3-0の判定で勝利しているが、ジャッジのうち2人は1ポイント差しかつけない接戦だった。
そして今回の再戦は当初7月に予定されていたのだが、大会前日の計量後、アマンダが体調を崩して試合が流れていた。
このドタキャンに関しては「苦手な相手であるシェフチェンコから病気を口実に逃げたのではないか」という憶測も流れていた。
今回、仕切り直しとなった試合では、最初からシェフチェンコがパンチや蹴りを出しながら前に出、アマンダはバックステップしてかわし、すぐに前に出て打ち返す、という展開。
アマンダはまた、シェフチェンコの前脚に関節蹴りやローを入れる。
こうしたスタンド状態での打撃戦が続き、4Rまでどちらもグラウンドに持ち込もうとせず、また、強烈な有効打もなかなか入らない接戦だった。
このため、会場からはブーイングが起こった。
最終の5Rに、アマンダは胴タックルに行き、シェフチェンコはこれを首投げで返そうとするが成功せず、アマンダがグラウンドでバックを奪う。
両者が立ち上がった後、アマンダが再度テイクダウンに成功し、上になるが、シェフチェンコも下からパンチやヒジを出す。ここで、試合終了。フラストレーションがたまっていたのか、シェフチェンコはレフェリーが両者を分けた際、アマンダを下から蹴り上げようとする。
判定は2-1でアマンダが防衛したが、ジャッジ全員1ポイントしか差を付けない内容だった。会場からは、またブーイングが起きた。
シェフチェンコも、
「なぜ自分の負けなのかわからない! アマンダはロクにパンチもキックも出してない! 私は思い切り殴り、蹴った! 判定がおかしい!」
と怒りをあらわにした。
たしかに僅差の内容である。
しかし、シェフチェンコの判定勝ちになっていたとしても、ブーイングは起きただろう。
両者の3度目の対戦を求める声もあるが、筆者としては、それよりも6月のシンガポール大会でベチ・コヘイアを左ハイでKOしたホーリー・ホルムとの対戦を見てみたい。ホーリーはロンダにも、この左ハイでKO勝ちしており、それまで無敗だったロンダに初めて土をつけ、王座を奪い取った女なのだ。
ホーリーはUFC女子バンタム級のランキングでも、シェフチェンコに次いで2位にランクされており、王座挑戦資格は十分だと言えるだろう。そして何よりロンダを倒した左ハイでベチをKOして復活したところが、期待感を抱かせる。
ハイキックだけではない。ホーリーはボクシングで三階級制覇の実績もある。アマンダをKOして王座を再び手にすることも考えられる。
“ロンダをKOした女”2人の対戦を、ぜひ見てみたい。
ところでロンダだが、本サイトでも既報の通り、メイウェザーvsマクレガーが行われた8月26日(現地時間。日本時間27日)に、婚約者のトラヴィス・ブラウンで挙式したばかりだ。
ホーリーとアマンダに連続KO負けを喫して、“戦う心”が完全に折れてしまっているようで、当分、復帰の様子はない。このまま引退してしまうかもしれない。
しかしロンダが女子格闘技をここまで世界から注目されるスポーツにした功績は大きい。
これからはそれをアマンダやホーリーらが背負って、名勝負を繰り広げ、定着させてほしいところだ。