先日、WWEでジェフ・ハーディーが意識不明の昏睡状態で発見され病院に運ばれたといういうニュースが流れた。
ジェフ・ハーディーは小柄な身体ながら、自殺ダイブとも言える捨て身の技を連発する激しいレスリングで日本でも人気の高いWWE所属選手だ。
そして実はこのジェフ昏睡はいわゆる“ワーク”であったのだが、実際の事件としてWWEは報じ、これが話題作りの為のアングルであった事を知ってたのはWWE内部でも、アングル発案者のマイケル・ヘイズ(日本でも御馴染みテリー・ゴディと組んで、名タッグ・チーム『ファビュラス・フリーバーズ』で暴れまわった有名な元プロレスラー、現在はWWEのシナリオなどを手がける)、ビンス・マクマホンなど数名のみだった。
WWE関係者にもジェフ重体は実際に起こった事件であると説明していた手の込んだアングルであった。
もう広く知られている事だが、アメリカのプロレス、特にWWEはプロレスにはシナリオが存在する、試合結果も事前に決めている事を公にしている。
彼らは選手を“プロレスラー”という名称は使わせず、“スーパー・スター”と名乗らせているが、最近は“スーパー・スター”から“エンターティナー”に名称を変更しようとまでしている。
日本の「ノアだけはガチ」と信じているファンからすれば、プロレスラーを“エンターティナー”と呼ぶなど卒倒ものだろう。
しかし、プロレスに筋書きがあるとカミング・アウトしてるが、こうしたどこまでがリアルでどこまでがアングルか分からないアングルで話題作りをする手法もアメリカン・プロレスの流行でそれが話題を呼んでいる。
WWEでも2007年の6月にビンス・マクマホンが自動車に爆薬が仕掛けられていて爆死するというアングルを放送したが、その結果、WWEが一般メディアで多く取り上げられ、WWEのHPも過去最高アクセスを記録した。
このビンス爆死アングルは事前にかなり情報が漏れていたので、多くのファンはシナリオの範囲内と理解していたが、一部のファンは本当に信じてしまったらしく、その放送が収録された地区の警察署には、50件以上のビンスの容態に関する問い合わせが寄せられたそうだ。
WWEのライバル団体TNAでは、逆にリアルで起こっているレスラー間の問題をそのままリングに持ち込んでリアルとアングルを混ぜる事によってストーリーを作るのが好きなビンス・ルッソがシナリオのメインライターなのでその手法が頻繁に使われている。
例えば、スコット・ホールがドタキャンをした事に対する、サモア・ジョーのマイクアピールはベテラン選手に対して激しい不満をもっているジョーの本心をアドリブで言わせただけだし、それに対してベテランスター選手集団、メイン・イベント・マフィア結成時のケビン・ナッシュの「ジョーが(親友の)ホールを馬鹿にしたのは絶対に許せなかった」という台詞も、シナリオでは無くナッシュの本心そのものだ。
こうした、リング外の実情をリングに持ち込む事によって、何が起こるか分からないと緊張感を煽るシナリオはインパクトがあるのだろう。
思えば、日本のプロレス界でも、もうアングルの存在が浸透してきた時期に行われた、小川直也vs.橋本真也、その試合後の小川のアピール
「もう終わりかよ! おいおいおいおい、冗談じゃねーよ!」
「新日本プロレスファンの皆様、目を覚ましてください!」
というマイクパフォーマンス、その後の大乱闘など、普段のプロレスにはお約束があるが、あればガチだったのでは?という錯覚を起こさせる事に成功させ物凄く話題になったのも記憶に新しい。
洋の東西に関わらず現実とのリンク(と錯覚させる)手法はプロレスへのカンフル剤になりえるという事だろうか。
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