ドッグレッグスの成り立ちとは・・・。 障害者プロレス団体「ドッグレッグス」代表、北島氏インタビュー

11月22日に行われたドッグレッグスの大会、「self」。障害者プロレス団体「ドッグレッグス」の代表、北島氏にインタビューを行う事が出来た。
編集者(以後、編):全体的に見て、今日の試合はいかがでしたか?
北島代表(以後、北):そうですね・・・いつも通りですかね。
編:そうですか。今回は会場も満杯になっていて、やはり選手たちも嬉しそうですかね。
北:プロレスなんで、観客がいないと成立しないといいますか。障害者なんで、危ないことをさせるなとか、障害者を見世物にするなとか、そんな批判がいつも付きまとっている団体なんですけど、それでも続けていられるっていうのは、批判がある一方こうやって楽しみに来てくれるお客さんがいるからであって。逆に、見に来る人がいなくなると我々は自然消滅してしまいますからね。だから、お客さんがいる限りというか、求められている限りは続くという感じですかね。
編:根本的なものを聞いてしまって申し訳ないのですが、こういう「ドッグレッグス」などの障害者プロレスを始めようとした理由というのはどういったものなのでしょうか。
北:何でも良かったんですけど、例えば、入場料をちゃんととって、その分対価といいますか、お客さんを楽しませられる、入場料分楽しませられるというイベントを障害者が出来ないかという考えがありまして。まぁ、障害者はいろいろやるじゃないですか。歌うたったり、お芝居をやったり、それはほとんどが入場料が無料だったりするんですが。入場料をとっても、来てくれるお客さんはほとんど身内みたいな。そういう状況の中で、そうじゃないものが何か出来ないかと思ったんですよ。僕の知り合いの障害者だけかもしれないんですが、意外と皆凶暴なんですよ。障害者の人たちって。やっぱり暴れたいって気持ちがすごくあって、周りからは危ないことはやっちゃだめって言われることが多いんで。あと、体が動かない分、動かしたいっていう欲求がすごく強いんですよ。で、このプロレスを始める前にね、たまたま二人の障害者が同じ女子大生を好きになって、その女の子を奪い合いになったんですね。やれあいつは俺の女だ、いや俺の女だ見たいな感じにね。で、それが殴り合いの喧嘩になってしまったんですよ。まぁ、その女の子はなんとも思ってないんですけどね(笑)なんとも思ってないんだけど、勝手に盛り上がって、勝手に喧嘩して。その喧嘩にプロレスの技が混ざっていたんですよ。集会所の畳の部屋があって、そこでもうプロレスもどきの喧嘩をやって。それを見たとき、「あぁ、これかな」と思ったんですよ。プロレスのいいところは、野次がOKというところだと思うんですね。例えば、つまんなかったらつまらないと言えるし、しょっぱい試合だったらしょっぱいって言えるじゃない。だから、障害者がすることでも批判できる余地がある。例えば、今日見た試合でも極端な話、面白かったかつまんなかったかで判断してもらっても構わないんですよね。ただ、それが単純に普通のプロレスと比べられてつまんないといわれちゃうとちょっと、こちらは寂しいんですけど。障害者プロレスとして面白かったら面白いと思ってくれればいいですし、つまんなかったらつまんないでいいんですよね。そういう感想が入る余地が大きいというのが、プロレスがいいなと思ったところで。例えば、絵を描いたりだとか芸術みたいなものだと、批判する余地がないじゃないですか。明らかに下手くそな絵だなと思っても、なんか障害者のやってることだと褒めなければならないと思ってしまうんですよね。まぁ、芸術だから見たいな感じで。そういうことで逃げられてしまう。それは評価するほうも、やっている側も不幸と言いますかね。駄目なものは駄目といって欲しいと思うんですよ。障害者の人たちというのはそういう直接的な評価をされることが少ない。「あんた駄目だよ。体動かないんだから」こういうことは中々言えない。でも、そんなこと自分が良くわかっているんですよね。だからこそ、ちゃんと言って欲しい。そういうことがプロレスだと、うまく表現できるんじゃないかと。これ結構、理由は後付で初めはその喧嘩が面白かったから、これ人前で見せても面白いんじゃないかと(笑)で、続けていくうちになんだかんだいううちに、もうすぐ17、8年ぐらいやってますけど。だから、初めの3年ぐらいは本当に105人とか110人とかから始まっていって、レベルも低かったですしね。本当にマットを転がっているだけみたいな感じだったのが、どんどん広まっていって、いろんな選手が入っていって今の形式に至ったという感じですね。
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編:すごくいいですね。本音でぶつかり合えるというのがプロレスの利点かもしれないですね。
北:そうですね。だから、さっきのお客さんという意味でもそうだし、これが別に格闘技でもいいんですよ。やってることは格闘技に近いところもあるんで。でも、格闘技にしてしまって、例えば単純に、強い弱い、勝ち負けだけで語ってしまうと、なんと言いますか、今日の第一試合のミラクルヘビー級の選手なんて、格闘技に当て嵌まらないじゃないですか。あれを格闘技というのはどうかと思うんですよね。
編:正直、ちょっとびっくりしましたね(笑)
北:だけど、プロレスだとあれがありになるんですよね。だから、プロレスの持っている何でもありみたいな、どんなおかしなものも通ってしまうような心の深さ。がちがちの真剣勝負もあれば、ミラクルヘビー級のなんか、ただ転がっているだけじゃんみたいなのもありみたいなね。そういうのが通用するからプロレスがいいんですよね。
編:最後に、北島さん自身もプロレスのリングに上がってらっしゃいますよね。選手の目から見て今日の試合はいかがでしたか?
北:そうですね。もうちょっと長くやりたかったんですけど・・・(笑)
編:引きこもりのゴローさんですよね。あまりリングに出てこなかったですね(笑)
北:まぁ、引きこもりですからね(笑)僕はもう一度くらい絡めたかったんですけど、終わっちゃったんで。
編:ミツルさんは本気で怖がってましたからね。
北:そうですね。
編:ああいうのもありって感じですかね。
北:結局、彼なんかは強い弱いで言ったら、入団テストを何度も落ちてますからね。それでも、やりたいっていうくらい熱意があるんですけど、とにかく心が弱いんですよ。練習なんかやってても、タックルされて倒されただけでタップしちゃうぐらいの弱さなんですね。だから、そういうことから考えると、今日の試合はかなり頑張ったほうなんですよ。耳が聞こえなくて、手話も出来ないから友達もほとんどいないんですよ。だからほとんどずっと家で一人でプロレスの技ばっかり考えてるんですね。出来もしない技ばっかり。だから来た時も、なんでこのプロレスの技が出来ないのか、不思議でしょうがないと思ってるみたいで(笑)だから、心を鍛えるというか、そういう場所でもあるんですよね、試合という場は。それもまた、プロレスを選んでる理由でもあるんですけど。普通に考えれば、あんなレベルの低い選手なんか出す必要がないわけじゃないですか。力の似通った選手同士を戦わせればいいんだけど、でも、彼を出してあげることが、彼にとって意味があることだし、我々にとっても意味があることなんですよね。練習だけだと一人前にはならないんですよね。ただただ怖いとか、俺は弱いんだとかいう気持ちだけになっちゃって、今日あそこまで頑張れたっていうのは、ここがスポットライトの当たる場所で、お客さんが見てるからっていう理由なんですよね。そういう意味で上げてあげたいっていうことですね。
編:これからが楽しみな選手ですね。
北:そうですね。ミノルはがたいはすごいですからね力も強いですし。おそらく2年ぐらい練習したら強くなると思いますよ。ただ、まだ何も知らないってのがあるので、今後に期待の選手、っていう感じですね。
編:なるほど。今日はありがとうございました。