[週刊ファイト10月15日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼ジョン・シナが『TODAY』で語った映画とWWEの現在地『Matchbox The Movie』公開直前
Mike Lano通信員提供 富井清一編
・『TODAY』出演で映画とWWEの2つを語ったジョン・シナ
・『Matchbox The Movie』はミニカーをそのまま映画にした作品ではない
・「WWEのすべてが恋しい」それでもリングには戻らないジョン・シナ
・SNSでは映画より「ファン投票」の仕組みが話題に シナ自身のキャラクターをどう残すのか
・Jシナを象徴する2つの仕事 映画では前へ進み、WWEでは過去を次へつなぐ
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『TODAY』出演で映画とWWEの2つを語ったジョン・シナ

2026年10月5日、ジョン・シナがNBCの全国朝番組『TODAY』に出演し、主演映画『Matchbox The Movie』の公開を前に作品をPRすると同時に、WWEで計画されている「John Cena Classic」が2026年12月に開催されることを明らかにした。今回の出演は映画俳優として活動する現在のシナを紹介する場であると同時に、2025年12月に現役生活へ区切りをつけた元WWEスターが、引退後もどのような形でプロレス界と関わっていくのかを本人の言葉で示す機会にもなったのである。『TODAY』の10月5日放送回では、シナが『Matchbox The Movie』で演じるCIA工作員ショーンについて語り、共演するアルトゥーロ・カストロやテヨナ・パリスとともに作品を紹介したことが確認されている。
今回のテレビ出演で特に印象的だったのは、シナが単純に新作映画を宣伝するだけではなく、自身の現在と過去を同時に語っていた点である。映画ではCIA工作員として世界規模の追跡劇に身を投じる一方、現実のシナはWWEのリングから離れ、映画やテレビを中心とする活動へ軸を移している。しかしWWEとの関係まで終わったわけではなく、むしろ自身の名前とキャラクターを使った新しいイベントを考案し、若い選手たちにスポットライトを当てようとしている。『Matchbox The Movie』と「John Cena Classic」は一見するとまったく別の話に見えるが、10月5日の出演では、その2つが同じジョン・シナという人物の現在を示す要素として並んだのである。
『Matchbox The Movie』は、Mattelのダイキャストカー・ブランド「Matchbox」を題材にしたアクション・アドベンチャー・コメディであり、2026年10月9日にApple TVで世界配信される作品である。物語の中心となるのは、幼少期からの友人たちと、長い間故郷を離れていた元リーダーのショーンであり、ジョン・シナがそのショーンを演じている。ショーンは現在、CIAの潜入工作員として活動しており、久々に仲間たちのもとへ戻ってきたことをきっかけに、本人だけではなく幼なじみたちまで危険な国際的事件へ巻き込まれていくことになる。Apple TVの作品紹介でも、ショーンの帰還によって幼なじみたちの生活が一変し、世界を救うための国際的な追跡劇へ発展する作品として説明されている。
共演陣にはジェシカ・ビール、サム・リチャードソン、アルトゥーロ・カストロ、テヨナ・パリス、コーリー・ストール、ビル・キャンプ、ゴルシフテ・ファラハニ、ダナイ・グリラ、ダニエル・バーンハート、ランディープ・フーダーらが名を連ねており、ジョン・シナだけで物語を引っ張る作品ではなく、幼なじみの仲間たちを含めたアンサンブル型のアクション映画として作られている。シナ演じるショーンの周囲にそれぞれ異なるキャラクターを配置することで、危険な任務とコメディーの両方を成立させる構成になっているのである。
作品のジャンルはアクションとコメディーであり、上映時間は2時間6分となっている。単純なミニカー映画ではなく、CIA、国際的な陰謀、危険な追跡、車両を使ったアクションなどを組み合わせた大規模な冒険作品に仕上げられていることが特徴であり、Matchboxという玩具ブランドを知っているかどうかだけで作品の楽しみ方が決まる映画ではない。むしろ子供時代にミニカーで遊んだ記憶を出発点にしながら、実写の世界で大人向けのアクション・アドベンチャーへ発展させた作品と見ることができる。
『Matchbox The Movie』を語るうえで、ジョン・シナの主演だけでなく監督サム・ハーグレイヴの存在も重要である。ハーグレイヴは『Extraction』や『Extraction II』を手掛けた人物であり、スタントとアクションを前面に出した作品を得意としている。そのため『Matchbox The Movie』も、単純に玩具ブランドの名前を借りたファミリー向け作品として作られているのではなく、車両を使った追跡や身体を張ったアクションを大きな見せ場としている。Mattel側も作品発表時からハーグレイヴを『Extraction』シリーズの監督として紹介しており、映画の方向性を考えてもアクション面を重視した企画であることが分かる。
10月5日の『TODAY』で取り上げられたのも、まさにシナ自身が危険なスタントに挑んだ部分である。番組では高所恐怖症と向き合ったスタントが話題となり、シナは建物からのジャンプやヘリコプターからぶら下がるような危険な撮影にも挑戦した。シナ自身、コミコンでも「毎日怖かった。恐怖は克服していない」と語っており、恐怖そのものが消えたからスタントができたのではなく、怖さを抱えたまま撮影に臨んでいたことが、この映画のアクションシーンをより興味深いものにしている。
『Matchbox The Movie』はミニカーをそのまま映画にした作品ではない

危険なスタントについては、シナ本人だけの問題ではなかった。撮影期間中、シナは妻シェイ・シャリアッツァデに危険な撮影日の前に、その日の撮影がどの程度危険なのかを伝えていたとされている。特に妻が心配していたのがビルから飛び降りる撮影であり、実際に現場へ付き添ったというエピソードも伝えられている。
プロレスラーとして長年リング上で身体を張ってきたシナにとって、危険な仕事そのものは決して未知のものではない。しかし映画撮影のスタントは、プロレスの試合とは違って、何度も同じ場面を撮影する可能性があり、カメラの位置、車両の動き、照明、爆発、落下など多くの要素を同時に管理しなければならない。だからこそ『Matchbox The Movie』では、シナが単に「強い男」を演じているのではなく、俳優として本格的なアクション撮影へ対応していることが大きなポイントになるのである。
Matchboxは1953年に誕生した歴史あるダイキャストカー・ブランドであり、Mattelが展開する代表的な玩具ブランドの1つである。ブランド誕生の背景には、娘が学校へ持っていけるような小さな玩具を作ったというジャック・オデルのエピソードがあり、マッチ箱に入るほど小さな車という発想がブランド名につながったとされている。
しかし映画版では、ミニカーそのものが主人公として動き回るわけではない。ジョン・シナ演じるショーンを中心に、幼なじみたちが世界規模の事件へ巻き込まれていく人間ドラマとして構成され、そこへ車を使ったアクションとMatchboxのノスタルジーが組み込まれている。この作り方によって、Matchboxを知らない観客でもアクション映画として楽しめる一方、子供時代にミニカーで遊んだ世代にはブランドそのものの懐かしさが加わるという二重構造が生まれているのである。
Apple TVが公開している作品情報でも、映画は「iconic Mattel toys」にインスパイアされた作品とされているが、物語の中心はあくまでショーンと幼なじみたちであり、危険な国際的陰謀へ巻き込まれた彼らが世界を救うために動くという実写アクション映画になっている。
シナの映画活動は今や単なるWWEスターの副業という段階ではない。『The Marine』や『12 Rounds』のような肉体派作品から始まり、『Trainwreck』でコメディー面を強く見せ、『The Suicide Squad』や『Peacemaker』でアクションとユーモアを組み合わせ、さらに『Barbie』でも大作映画の中で独自の存在感を発揮してきた。
本人も10月5日のテレビ出演で、若いころの映画活動について、当時はプロレスのほうに強い情熱を持っていたため映画制作のペースやプロセスに十分な理解がなかったという趣旨の話をしており、現在の映画活動が過去とは違う意識の上に成り立っていることを明かしている。映画撮影ではリングのようにその場の観客へ直接反応するのではなく、同じ場面を何度も撮影し、監督、撮影スタッフ、スタントチーム、共演者らと一つの場面を作り上げる必要があるため、プロレスで培った身体能力だけではなく、撮影現場への適応力も必要になるのである。
その意味で『Matchbox The Movie』は、シナがプロレスラーとしての身体能力を映画のアクションへ持ち込むだけでなく、コメディーとアクションを両立できる現在の俳優としてどこまで存在感を発揮できるかを見る作品でもある。