[週刊ファイト10月15日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼全日本プロレスが道場で救命講習を実施 選手・スタッフが実践し安全意識を高める
(C)全日本プロレス公式 富井清一編
・心肺蘇生法を実践 突然の出来事で「その場にいる人」が動けることの重要性
・プロレス現場で特に重要な脳震盪への対応 頭部への衝撃を軽視しないために
・横浜市消防局との連携 プロレス団体の安全対策を社会貢献へ広げる
・選手を守ることがリングを守ること 全日本プロレスが継続する安全への取り組み
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心肺蘇生法を実践 突然の出来事で「その場にいる人」が動けることの重要性

全日本プロレスは2026年10月5日、全日本プロレス道場において選手・スタッフを対象とした心肺蘇生法、AED使用方法、脳震盪発症時の対処方法に関する講習会を実施した。講師として横浜市消防局青葉消防署元石川消防出張所の署員が訪れ、プロレスの現場で発生する可能性がある外傷や突然の心停止などを想定し、事故が起きた直後にどのような判断をし、どのような行動を取るべきなのかを学ぶ機会となった。
今回の講習で大きなポイントとなったのは、単に救命に関する説明を聞くだけではなく、全日本プロレスの選手・スタッフが実際に心肺蘇生法やAEDの使用方法を実践したことである。リングや道場では身体を激しくぶつける競技特有のリスクがあり、試合中の負傷だけではなく、意識を失う、呼吸状態に異常が起きる、頭部に強い衝撃を受けるといった予期せぬ事態が発生する可能性もあるため、医療スタッフが到着するまでの初期対応を現場にいる人間が理解しておくことは非常に重要である。
全日本プロレスは今回の取り組みを、選手・スタッフに対する予期せぬ事故への対応方法の啓蒙だけではなく、横浜市消防局との共創による社会貢献活動としても位置付けている。プロレス団体が自らの競技環境における安全対策を考えるだけでなく、消防機関との連携によって実践的な救命知識を学んでいる点に、この講習会の大きな意味がある。
心肺蘇生法は、心臓が正常に血液を送り出せなくなった場合に、救急隊が到着するまでの間、生命を維持するために行う重要な応急手当である。消防庁の応急手当講習でも、反応の確認、助けを呼ぶこと、119番通報とAEDの手配、呼吸の確認、胸骨圧迫などが基本的な流れとして示されており、異常が起きたときに迅速に周囲へ助けを求め、救急要請と救命処置を並行して進めることが重要になる。
心停止が疑われる場面では、一刻を争う。傷病者に反応がなく、普段どおりの呼吸が確認できない場合には胸骨圧迫を開始することが求められ、判断に迷う場合でも胸骨圧迫を開始することが示されている。特に心停止直後には、しゃくりあげるような不規則な呼吸が見られる場合があるが、これは正常な呼吸とは異なるため、救命処置を開始する判断が必要になる。
こうした知識は、頭で理解しているだけでは実際の事故発生時に十分な行動へつながらない可能性がある。そのため今回の全日本プロレスの講習では、選手・スタッフ自身が胸骨圧迫などを実際に行い、身体を使って救命処置を確認したことが大きな意味を持つ。普段からリング上で選手の身体を支え、負傷者への対応に関わるスタッフにとって、救命処置の基本を実技として経験しておくことは、万一の状況で落ち着いて行動するための重要な準備になるのである。
プロレス現場で特に重要な脳震盪への対応 頭部への衝撃を軽視しないために

今回の講習で心肺蘇生法やAEDと並んで重要なテーマとなったのが、脳震盪発症時の対処方法である。プロレスではリング上で投げ技、打撃技、受け身、転倒などが繰り返されるため、頭部に衝撃が加わる場面が少なくない。もちろんすべての頭部への衝撃が脳震盪につながるわけではないが、頭部を強く打った選手に異変が見られた場合には、「試合を続けられるか」よりも「安全を確保できているか」を優先する判断が必要になる。
脳震盪は、単純に「意識を失ったかどうか」だけで判断できるものではない。頭部への衝撃後に頭痛、めまい、吐き気、ふらつき、視覚の異常、記憶や集中力の変化などが現れることがあり、外見上は普通に見えていても注意が必要な場合がある。さらに、現場で脳震盪だと思われていても、より重篤な頭部外傷が隠れている可能性があるため、症状を軽く考えず、必要に応じて医療機関による評価につなげることが重要である。
そのため、プロレスのように頭部への衝撃が起こり得る競技では、選手本人だけではなく、セコンド、レフェリー、トレーナー、スタッフなど、リング周辺にいる人間が異常を見つける視点を持っておくことが重要になる。選手本人は試合を続けたいという気持ちから異常を申告しない可能性もあるため、周囲が普段と違う動きや反応を確認し、必要な場合には競技から離す判断をすることが安全管理の面で非常に重要になる。
プロレスラーは身体を張ってリングに立つ職業であり、多少の痛みや負傷を抱えながら試合を続けることもある。しかし、心肺停止や重大な頭部外傷の可能性がある状況まで「プロレスだから仕方がない」という考え方で済ませることはできない。
特に脳震盪については、本人が自覚していない、あるいは症状を我慢している可能性もあるため、周囲の人間が異常を察知することが重要になる。頭部への衝撃後に反応がおかしい、動きが不自然、会話が普段と違う、ふらついているなどの変化があれば、そのまま競技を続けさせるのではなく、安全を確保して状態を確認する必要がある。
