[ファイトクラブ]BバッファーがNBC『America’s Got Talent』で見せた唯一無二の存在感

[週刊ファイト10月08日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼BバッファーがNBC『America’s Got Talent』で見せた唯一無二の存在感
 Mike Lano通信員提供  編集部編
・「優勝者を発表した」のではないBバッファーの役割は決勝の開会宣言
・「It’s time!」は単なる決め台詞ではないBバッファーが作り上げたブランド
・1996年からUFCの声を担当 30年近く積み重ねた実績
・NASCARでも大舞台を任された スポーツ界を横断してきたアナウンサー
・何十年も「声」を仕事にしてきた男が、テレビの才能発掘番組でも存在感を残す


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「優勝者を発表した」のではないBバッファーの役割は決勝の開会宣言

 UFCのオクタゴンアナウンサーとして世界的に知られるブルース・バッファーが、NBCの人気オーディション番組『America’s Got Talent』シーズン21決勝に登場し、2026年9月22日に放送された決勝第1夜のオープニングを担当した。今回の登場は優勝者を発表する役割でも、歌やパフォーマンスを披露するゲスト出演でもなく、バッファーが長年UFCで磨き上げてきた「大舞台を一瞬で始動させる声」を、そのまま『America’s Got Talent』の決勝という巨大なテレビ番組に持ち込むものだった。

 シーズン21の決勝は9月22日と23日の2夜構成で、22日は最終候補者たちが最後のパフォーマンスを行い視聴者投票が始まる決勝パフォーマンスの夜、23日は投票結果を受けて優勝者を決定する結果発表の夜という構成だった。バッファーが登場したのは22日の第1夜であり、NBCの決勝を華々しくスタートさせるためのオープニングコールを任されたのである。第1夜は通常の放送時間とは異なる21時から23時の2時間枠で組まれ、シーズン21のトップ10が最後のステージへ上がった。

 ここでバッファーが見せたのは、まさに彼の代名詞である「It’s time!」の世界だった。UFCの試合開始を告げるときと同じように、番組そのものを一つのアリーナとして扱い、これから何か特別なことが始まるという空気を一声で作り上げたのである。UFCでは選手がオクタゴンに上がり、観客が主役となる瞬間を待っているところへバッファーの声が入るが、『America’s Got Talent』ではその対象が格闘家ではなく、全米の視聴者が注目する才能ある出演者たちだったという違いがあるだけで、彼の仕事の本質は変わっていない。

 今回のバッファーについて最も重要なのは、シーズン21の優勝者を発表した人物ではないという点である。

 優勝者が決まったのは翌9月23日の結果発表回であり、シーズン21を制したのは16歳のNene Royalだった。最終的にGeno Ploegerが2位、Hundred Fingersが3位、Royal Lasersが4位、Veronika Goroshkovaが5位となり、Nene Royalには賞金100万ドルが贈られた。バッファーが担当したのはその結果発表ではなく、前日の9月22日に行われた決勝パフォーマンス回のスタートである。

 この役割分担を理解すると、今回のバッファー起用が非常に興味深いものだったことが分かる。

 『America’s Got Talent』の決勝は、単なる通常回ではない。シーズンを通じて勝ち残ってきた出演者たちが最後のパフォーマンスを行い、視聴者が投票し、その結果によって人生が大きく変わる可能性がある舞台である。そこへUFCの大舞台を何十年にもわたって見てきたバッファーを投入し、番組開始そのものを一つのイベントとして演出した。

 バッファーはゲスト審査員でもなければ、決勝出場者でもない。彼が持っている最大の武器である「声」と「存在感」を使い、番組が始まる瞬間を特別なものにしたのである。

「It’s time!」は単なる決め台詞ではないBバッファーが作り上げたブランド

 シーズン21の決勝は、出演する才能だけでなくゲスト陣も豪華だった。レギュラー審査員はSofía Vergara、Mel B、Howie Mandelで、Simon Cowellに代わってKSIがゲスト審査員として参加し、司会はTerry Crewsが務めた。さらにLinkin Park、Josh Groban、Steve Aoki、Chloe Flower、Rei Ami、Trisha Paytas、Lele Pons、Taylen Biggs、Jessica Sanchez、Mat Francoらが決勝に登場し、シーズンのフィナーレを盛り上げた。

 その中にブルース・バッファーが入っていたことには独特の面白さがある。

 Linkin Parkなら音楽、Josh Grobanなら歌、Steve AokiならDJ、Mat Francoならマジックというように、それぞれが自分の専門分野で番組に参加する。しかしバッファーの場合、彼が持ち込んだのは格闘技の試合を盛り上げるために鍛え上げられたアナウンス技術そのものだった。

 つまり、彼は「別の芸を披露するため」に呼ばれたのではない。

 「ブルース・バッファーという声を聞かせるため」に呼ばれたのである。

 この違いは大きい。彼はUFCで長年にわたり選手紹介を担当してきたことで、単なるリングアナウンサーではなく、スポーツイベントの開始を象徴する人物になっている。だからこそ格闘技のリングから離れても、「It’s time!」という言葉だけで観客の記憶を呼び起こすことができるのである。

 ブルース・バッファーを語るとき、どうしても「It’s time!」というフレーズが最初に出てくる。しかし、この言葉が長く愛されてきた理由は、単に声が大きいからでも、独特の発音をするからでもない。

 バッファー自身が過去のインタビューで説明しているように、「It’s time」は、選手たちが長い準備期間を経て、いよいよ勝負の瞬間を迎えるという意味を込めて使っている言葉である。彼はUFCのオクタゴンでこの言葉を繰り返し使用しながら、自分自身の情熱と感情をそこへ重ねていった。

 「It’s time」は日本語にすれば「時が来た」「いよいよその時だ」という意味になるが、バッファーの声で発せられると単なる英語の一文ではなくなる。

 UFCの会場にいる観客にとっては、これから選手が戦うという合図であり、選手にとっては長いトレーニングの成果を発揮する瞬間を告げる言葉であり、テレビ視聴者にとってはこれからメインイベントが始まることを知らせる音になる。
 
 そして今回、それが『America’s Got Talent』に移された。

 戦うのはMMAファイターではない。オクタゴンもない。それでも、決勝という人生を懸けた舞台が始まるという意味では、「It’s time!」という言葉が持つ力をそのまま利用できるのである。

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