[ファイトクラブ]CMLLが東京の観光博でメキシコ文化を発信 ツーリズムEXPOジャパン2026に参加

[週刊ファイト10月08日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼CMLLが東京の観光博でメキシコ文化を発信 ツーリズムEXPOジャパン2026に参加
 (C)CMLL 編集部編
・「プロレスを見せる」だけではない CMLLがメキシコシティの文化を伝える役割を担う
・サネリーがメキシコ文化の顔に リングではなく観光ブースに立った意味
・旅行業界との商談の場にCMLLがいるという意味
・2028年の姉妹都市交流へ つながり広がる日本とメキシコシティ
・プロレス団体が国際交流の一員になる時代 CMLLの参加が示したもの


ルチャリブレの専門家・寺内1/2兵衛VIVA素晴らしき

▼寺内1/2兵衛VIVA素晴らしき~エステル・モレノ息子Saigo Tigerアステカ武道館

[ファイトクラブ]寺内1/2兵衛VIVA素晴らしき~エステル・モレノ息子Saigo Tigerアステカ武道館

「プロレスを見せる」だけではない CMLLがメキシコシティの文化を伝える役割を担う

 2026年9月24日から27日まで東京ビッグサイトで開催された「ツーリズムEXPOジャパン2026」に、メキシコのプロレス団体CMLLが参加した。今回のCMLLの存在を語るうえで重要なのは、リングを持ち込んで試合をしたことでも、日本で大規模な興行を開催したことでもない。メキシコシティの観光、文化、伝統を日本へ紹介するための取り組みに、CMLLが文化コンテンツの一つとして加わったことであり、プロレス団体がスポーツ興行の枠を越えて観光や国際交流の場に姿を見せたという点に大きな意味がある。

 ツーリズムEXPOジャパンは2014年に始まった日本最大級の総合観光イベントで、2026年は「進化する旅のカタチ」をテーマに東京ビッグサイトの東1、2、3、7、8ホールで開催された。9月24日と25日は業界・プレス向け、26日と27日は一般公開となり、世界各国・地域と日本各地の観光関係者が集まり、旅行商品の紹介だけではなく、文化、食、地域の伝統、エンターテインメントなどを通じて、それぞれの土地を知ってもらうための場となった。2026年は12回目の開催で、2年ぶりに東京ビッグサイトへ戻ってきた大会でもあり、海外からも多数の国と地域が参加する国際的な観光交流の舞台となった。

 メキシコは今回、東京ビッグサイトに設けられた海外ブースの一つとして観光資源を紹介し、メキシコ料理、伝統文化、歴史、観光地、都市の魅力などを日本の旅行業界関係者や一般来場者へ発信した。メキシコ政府観光省も今回の参加について、日本を含むアジア市場に向けてメキシコの文化、食、伝統、遺跡、さまざまな体験を紹介し、旅行者や観光業界との新たなつながりを作る機会だと位置づけている。

 そのメキシコシティの観光・文化発信の中に入ったのがCMLLである。

 今回の参加で特に注目したいのは、CMLLが単独でプロレスイベントを開催したわけではなく、メキシコシティの観光プロモーションを担う代表団の一員として日本へ来たことである。

 メキシコシティ側の代表団には観光関連の企業や関係者が参加しており、東京では旅行会社、ツアーオペレーター、観光業界関係者などとの商談が行われた。初日の段階で40件を超える商談が行われ、会期全体では160件を超える商談が見込まれるなど、単なる観光地紹介にとどまらず、日本からメキシコシティへ旅行者を送り込むための具体的なビジネス交流が進められた。そこへCMLLが文化的な魅力の一つとして加わったのである。

 メキシコシティの観光発信では、死者の日をはじめとする伝統文化を紹介する「チャロ」ゴンサレスの存在と並んで、CMLLが同市を代表する大衆文化の一つとして紹介された。つまり今回のCMLLは「プロレスを見せる団体」というだけではなく、「メキシコシティへ行けば、その土地ならではの文化としてルチャ・リブレに触れられる」という観光の入口を作る役割を担ったのである。

 ここには日本とメキシコのプロレス交流が長年続いてきたという背景もある。日本のプロレスファンにとってCMLLは決して遠い存在ではなく、新日本プロレスとの「FANTASTICA MANIA」を通じてMístico、Titán、Templario、Máscara Dorada、Atlantis Jr.らが日本のリングに上がり、日本の選手たちもメキシコのリングで活動してきた。CMLLと新日本プロレスの人材交流は2009年に始まった協定を基礎として現在まで続いており、プロレスを通じて築かれた両国の関係が、今回は観光という別の分野へ広がった形である。

サネリーがメキシコ文化の顔に リングではなく観光ブースに立った意味

 今回、日本のプロレスファンから特に注目されたのがCMLL女子選手のSanely、サネリーである。

 サネリーはCMLLを代表してメキシコの観光ブースに姿を見せ、来場者との写真撮影などを通じてメキシコ文化を身近に感じてもらう役割を担った。観光メディアでは、死者の日を思わせるスカルメイクの男性やチャロ衣装の文化紹介とともに、女性覆面レスラーと写真を撮影できる企画が紹介されており、ルチャ・リブレが単なるスポーツ観戦ではなく、メキシコを象徴する文化体験として扱われていたことが分かる。

 ここが今回の出来事の面白いところである。

 サネリーは東京ビッグサイトで試合をしたわけではない。リングに上がって技を繰り出したわけでも、タイトルマッチを行ったわけでもない。それでも、彼女がCMLLの象徴的なマスク文化を身につけて観光ブースに立つことで、来場者は「メキシコにはこういう文化がある」ということを、パンフレットを読むだけではなく、実際の人物との交流を通じて感じることができたのである。

 観光において重要なのは、必ずしも有名な観光地の写真を見せることだけではない。その国や都市を象徴する人物や文化と直接触れることで、「一度メキシコへ行ってみたい」「本場のルチャ・リブレを見てみたい」「メキシコシティではどんな文化に触れられるのだろう」と思ってもらうことも、立派な観光プロモーションになる。サネリーが担ったのはまさにその役割であり、プロレスラーとしてではなく、メキシコ文化を伝える存在として日本の観光イベントに参加したことに価値がある。

 今回の参加を単発の珍しい出来事として見るだけでは、CMLLがなぜツーリズムEXPOジャパンに登場したのかという背景を十分に理解することはできない。

 CMLLは近年、メキシコシティの観光政策との関係を深めている。2025年にはCMLLとメキシコシティ政府の観光部門、さらに観光振興を担う組織との間で協力関係が結ばれ、ルチャ・リブレを同市の文化的アイデンティティや観光資源の一つとして発信していく方向性が示された。CMLLのサルバドール・ルテロット会長が観光関係者と同じテーブルにつき、ルチャを国内外へ紹介するための協力が進められている。

 この動きは、プロレス団体が観光行政から単にイベント出演を依頼されるという関係とは少し違う。CMLLそのものがメキシコシティの文化資産として扱われ、観光客に「メキシコシティで何を見るか」という選択肢を増やす存在になっているのである。

 実際、メキシコシティの観光情報の中にはCMLLの大会そのものが観光客向けのエンターテインメントとして掲載されており、Arena Méxicoで行われるCMLLの大会が都市の観光体験の一部として位置づけられている。2026年の観光カレンダーでも、Arena Méxicoで行われるCMLLの大会が観光・文化イベントの一つとして紹介されている。

 さらに2026年には、メキシコシティ政府、観光振興組織、CMLLなどが関わる「Carrera del Ring CMLL 2026」のように、ルチャ・リブレを軸にしながらランニングと観光を組み合わせる取り組みも展開されている。これは、プロレスそのものを見るだけではなく、スポーツをきっかけとして都市を訪れ、街を体験してもらうという考え方へ広がっていることを示している。

 CMLLと日本の関係を考えると、どうしても日本公演や選手派遣、タイトルマッチといったプロレスそのものの話が中心になりやすい。しかし、今回のツーリズムEXPOジャパン2026への参加は、それとは違う方向から両国の関係を見ることができる機会になった。

 日本の外務省関連機関からも、CMLLや日本人選手の活動が日本とメキシコの相互理解に貢献していることが評価されている。2023年には在メキシコ日本大使がCMLLに対して大使表彰を行い、2025年にはCMLL所属の日本人選手Okumuraに外務大臣表彰が授与された。Okumuraは2004年からメキシコで活動し、長期間にわたって日本とメキシコの友好やスポーツ交流に貢献してきた人物である。

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