[週刊ファイト08月13日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼ジョン・シナが“ヒール弁護士”でルーニー・テューンズ参戦!『Coyote vs. Acme』公開
Mike Lano通信員提供 編集部編
・ジョン・シナがアクメ社の顧問弁護士に「振り切る力」を映画宣伝でも発揮
・お蔵入りからの復活が最大の宣伝材料「見せたくない映画」という逆説的な売り方
・「ジョン・シナがいるから観る」から「Jシナのヒール役が面白い」へ
・W・E・コヨーテとJシナ、2人の「何度でも立ち上がる男」がスクリーンで激突
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ジョン・シナがアクメ社の顧問弁護士に「振り切る力」を映画宣伝でも発揮

ルーニー・テューンズの人気キャラクター、ワイリー・E・コヨーテを主人公にした実写+アニメーション映画『Coyote vs. Acme』が、2026年8月28日に米国でついに劇場公開を迎えた。本作は単にジョン・シナが出演する新作映画というだけではなく、一度は完成していた作品がスタジオ側の判断によってお蔵入りの危機に直面し、その後ファンや関係者の声を受けて別会社によって救出され、約4年越しにスクリーンへたどり着いたという異例の経緯そのものが大きな話題となっている。現在の作品紹介では、ワイリー・E・コヨーテが長年にわたって自分を痛めつけてきたアクメ社の商品をめぐり、看板弁護士ケビン・エイブリーとともに企業を訴えるという設定で、アクメ側の敏腕顧問弁護士バディ・クレインをジョン・シナが演じている。
シナといえばWWEで長年トップスターを務め、プロレスラーとしてリング上で観客を煽り、敵役に回れば徹底的なヒールとして振る舞い、ベビーフェイスとして支持を集める際には観客を味方につけるという、極めて高いエンターテインメント能力を持つ人物である。そのシナが今回演じるバディ・クレインは、肉体をぶつけ合うアクションヒーローではなく、巨大企業アクメ社を守るために法廷で戦う企業側の弁護士という役柄であり、ワイリー・E・コヨーテ側の弁護士ケビン・エイブリーを演じるウィル・フォーテと対峙する構図になっている。UPIのインタビューでシナ自身もバディについて「Buddy’s strength is his confidence but that also becomes hubris」と語っており、自信がそのまま過信へと変わっていく人物として役を捉えていることが分かる。
このキャラクター設定がプロレスファンにとって面白いのは、シナがリング上で培ってきた「相手との対立構造を分かりやすく見せる能力」を、そのまま法廷コメディーの世界へ持ち込める点である。劇中ではワイリー・E・コヨーテが被害者としてアクメ社の責任を追及する一方、シナ演じるバディは企業側に立ってそれを阻止しようとするため、立場としては明確にコヨーテ側の敵である。プロレスで言えば、シナが企業側のヒールとして主人公の前に立つような構図であり、しかも今回はプロレス技ではなく弁舌と自信、そしてコミカルな威圧感を武器に戦うことになる。実際、公開後の観客レビューでもシナを「良いヴィラン」と受け止める声が出ており、プロレスラーとしてのイメージを映画の役柄にうまく転換しているとの印象が広がっている。
今回のプロモーションで特に注目したいのは、シナ自身がこの作品を単なる映画出演として扱っているのではなく、プロレスラー時代から培ってきたパフォーマンス能力をコメディーへ積極的に持ち込んでいることである。シナは本作について、建物から飛び降りるようなアクション映画ではなく、「毎日、漫画の会社を守るために着飾っていた」という趣旨で撮影現場を振り返っており、通常の肉体派アクションとは異なる楽しさを強調している。
さらにシナは、WWEでの経験が本作の演技にも役立ったと説明している。リング上では観客の反応を見ながら、その場の空気に合わせて表情や動きを大きくし、相手とのやり取りを瞬間的に成立させる必要があるが、コメディー作品でも同じように「中途半端にやらず、役に全力で入り込む」ことが重要になる。今回のシナは、アクメ社の巨大企業を背負う弁護士という立場を必要以上に堂々と演じることで、アニメキャラクターと実写俳優が同じ画面に存在する独特の世界観へ自らを合わせているのである。
映画のレビューでも、シナの存在は単なる有名レスラーの客演として扱われていない。ロサンゼルス・タイムズはウィル・フォーテとジョン・シナが対立する弁護士を演じることを本作の重要な要素として取り上げ、アニメーションと実写を組み合わせた作品の中で、シナがアクメ側の人間として機能していることを評価している。
つまり今回の宣伝では、「WWEのジョン・シナが映画に出ています」というだけではなく、「あのジョン・シナが、今度はアクメ社のヒール弁護士になった」という分かりやすいキャラクター性そのものがセールスポイントになっているのである。
お蔵入りからの復活が最大の宣伝材料「見せたくない映画」という逆説的な売り方

『Coyote vs. Acme』の宣伝を語るうえで外せないのが、この映画が一度は観客の前に出ることすら許されなかった作品だったという事実である。作品は2022年までに完成していたものの、ワーナー・ブラザースが2023年に公開を取りやめ、税務上の処理によって作品を償却する方向へ進んだことで、映画そのものが市場から消える可能性が生じた。そこからファンや映画関係者による公開を求める動きが広がり、最終的に独立系配給会社Ketchup Entertainmentが権利を取得して劇場公開へとこぎ着けた。
この経緯を考えると、本作の宣伝コピーである「The Movie Acme Doesn’t Want You to See」は非常に巧妙である。作品の中ではワイリー・E・コヨーテがアクメ社の欠陥商品によって何度も痛い目に遭い、ついには企業を相手取って裁判を起こすわけだが、現実の映画そのものもまた「巨大企業によって公開を阻止されかけた映画」という状況を経験しているため、作品世界と現実の出来事が奇妙な形で重なっているのである。ロサンゼルス・タイムズも、映画冒頭のワーナー・ブラザースのロゴにアクメ社との関係を示すユーモラスな演出が施されていることを指摘しており、映画自身が自分の数奇な運命をネタにしている。
この「お蔵入りしかけた映画」というニュース性は、そのまま宣伝効果にもつながった。2023年の公開中止時にはファンから強い反発が起こり、完成済み作品を観たいという声が広がったことで、映画は単なる新作ではなく「一度失われかけた作品をファンがスクリーンへ戻した」という物語を持つことになった。エリック・バウザら関係者も公開を求める声を上げ、最終的にKetchup Entertainmentが作品を引き受けたことで、ワイリー・E・コヨーテ自身が何度転んでも立ち上がるように、この映画もまた何度も失敗を繰り返しながら最後に公開へたどり着いたのである。